あなたは『ステラのまほう』のどこが好き?
先日、まんがタイムきららMAXでフィナーレを迎えたステラのまほう。
10巻分続いたこの作品が終わってしまうということで、いろいろな思いを胸にフィナーレを見送ったのではないでしょうか。
自分でも、「ステラのまほう」はきららの漫画の中でもトップクラスにお気に入りの漫画なので、この作品が終わるのが随分寂しい気がします。
なので、フィナーレを迎えた今だから思う、大好きな「ステラのまほう」のどこが好きだったを思い出にしまっておくために、筆を執りました。
前回の記事と同様に、「ステラのまほう」の好きなところ、良かったところを備忘録ついでにつらつらと述べていきます。主観120%です。解釈違い大歓迎の方向け。よかったら見てね。
※ステラのまほう最終話までのネタバレを含みます!ご注意を!
日常系としての「ステラのまほう」
「ステラのまほう」では、主人公である本田珠輝が、SNS部の部員たちを巻き込んで、奮闘しながら同人ゲームを作りながら日々を過ごしていきます。
またこの作品では、各キャラクターに重くのしかかる過去のできごとや現在の複雑な家庭環境が、その人の心に強く差し込んでいて、その人の性格と行動理由が形成されているという描写が非常に印象的です。
各々が色んな悩みを抱えながら、日々を過ごしていきます。
主人公である圧倒的光属性(いわゆる攻め)のたまちゃんを中心に、その人の心の奥底のもやもやを完全にはらうことが出来なかったとしても、なんとかしてあげようと奮闘していく。
分かり合えることが簡単じゃない人間だからこそ、ぶつかり合いながらも成長し、奮闘しながら同人ゲームを制作していきます。
そんな「ステラのまほう」なりの日常は他のきらら作品とはまた違うすばらしさがあると感じます。
ここで余談ですが、こちらの記事は「どうして私が美術科に!?」で知られる相崎うたう先生と、「ステラのまほう」のくろば・U先生による対談。ステラのまほうと「どうびじゅ」について詳しく触れられています。ご参考までに。
日常系の定義で好きなのはいづも先生の記事からのこの言葉。
https://media.comicspace.jp/archives/12126
「日常系」ってよく使われる言葉ですけど、それは何も事件が起こらない話という意味ではなく、どれだけ日常からかけ離れた世界であっても人である以上避けて通ることができない普遍的な日々の営み、それを通して変化していく心の機微や関係性に焦点を当てた作品を「日常系」と呼ぶのではないでしょうか。
人生の中では悲しいことも楽しいこともいろんな事が起きます。作者が日々の暮らし、ひいては人生経験の中で感じたことの、どこに主眼を置いて伝えたいかの違いで、きららの日常系の作品の中でも、いろんな幅を持つ作品が生まれているように思います。
ちょっと違いますが、「瑠東さんには敵いません!」の作者の相崎うたう先生が、実際に隣の席の人に自撮りを誘われたことを心に残っていたから、あの作者が生まれたというエピソードに似ている気がします。ちょっと違うけど。
「ステラのまほう」でくろば・U先生が何を伝えたかったのを推し量ることは、完全には不可能ですし、読み手の人生経験によって感じるものが違う作品だと思います。
しかしながらあなたはきっと「ステラのまほう」にしかない魅力をあなたは感じたのではないでしょうか。
少なくとも私は「ステラのまほう」が、この作品を最後まで読んだその瞬間の感じたこと、考えていたことを心の底にしまっていつでも見返せるようにしておきたい、と感じさせるほどの素晴らしい作品であると思っています。
漫画でもゲームでも、鑑賞すると自分の心に不可逆の変化をもたらすような素晴らしい作品はそう多くないですが、自分の中で「ステラのまほう」はそういう作品のひとつです。
ゲームの素晴らしさ
やっぱりゲームは素晴らしいものです。作るにしても遊ぶにしても。
人にどうしたら喜んでもらえるか、どうしたら面白いゲームになるかを日々考えながら、SNS部の皆は奮闘し制作に没頭します。
当然、同人ゲーム制作に求められるスキルは単純なものではなく、自分の満足のいくものを作ることは非常に大変な作業です。
しかしながら自分の作った物が手に取って遊んで楽しんでもらう瞬間の為に、奮闘する姿が「ステラのまほう」では非常に印象的です。
たまちゃんのそのルーツのひとつになっているのが、裕美音ちゃんと仲良くなるきっかけになった手作りのすごろく。
「ステラのまほう」最終話の扉絵がこのエピソードで良かったとしみじみと思います。(ステラのまほう3巻参照)
また、インディーゲームをパロディした扉絵の小ネタも魅力的です。きららMAXの連載の旅に、今月の扉絵はなんのゲームなんだろうと毎月楽しみにしてました。
扉絵元ネタの一覧についてはこちらの記事が詳しいです。
また宣伝になりますが、扉絵の元ネタのゲームのうち、お気に入りのものの紹介をこちらの記事でしています。ご参考までに。
一番好きなキャラについて
あなたは「ステラのまほう」のどのキャラが好き?
私の一番好きなキャラは百武照さん。公式からもダークだのラスボスだの言われています。ここから更に解釈違い大歓迎な方向け。
以下wikipediaよりキャラ紹介。
SNS部のOGで初代部長。ペンネームは「teru☆」。大学1年生->浪人生。コスプレが趣味。「みたらし」という名の黒猫を飼っている。
才色兼備であり[110]、高校時代は色々な部に行って数々の功績を残していた。
珠輝が入学する半年前の夏に、椎奈やあやめ、歌夜を集めて一からSNS部を創立した。制作においては、絵や企画、マネジメントを一人でこなせるほどの実力がある。ジェネラリスト指向で、幅広いスキルを効率よく学ぶことに関心を持っているが、それは他人を信じることが苦手なことの裏返しでもあることを歌夜から指摘されている。また「人間に生まれてくる意味なんてありません」「強いて言えば死ぬ為です!」「明日死んだとしても(中略)後悔がないようにしたいなって」と、ニヒリスティックな考えを持つ。
マイペースで、他人の話を聞かずに自分の言いたいことを一方的に話す。後輩たちを独自のニックネームで呼ぶ。創作に悩む珠輝の前に神出鬼没に現れて、珠輝を試したり、アドバイスを送ったり、より高みをめざすよう促したりしている。
星の辻を卒業後大学に入学したものの自主退学し、大学浪人中。
また先日「ステラのまほう」最終回後に、原作者であるくろば・U先生による百武照さんについてのインタビュー記事が公開されました。
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2112/25/news001.html
単行本前半(~SNS部の新作落ちましたあたり)まではひょっこり表れては、意味深な言葉を残していき、周りにまほうをかけていく照さんでしたが、あの時の行動には照先輩なりの意図がありました。
徐々に単行本が進むにつれて照さんの本性が暴かれていき、その時の意図とその性格が形成された理由である複雑な家庭環境と過去が明かされていきます。
日常系の段でも述べましたが、「ステラのまほう」では照さんだけでなく、いろんな人が悩みを抱えていて、あるきっかけでその悩みが心の器からあふれるような出来事があって、その心の底の悩みが明らかになります。(乃々ちゃんとかそんな感じですね)
その後、たまちゃんを中心に頑張っていろいろした結果心の悩みが払われる、という過程がよくされています。(なんとなくまちカドまぞくにも似た流れを感じます。発言と過去と行動理由の件も含めて。)
照さんが「ラスボス」と称されるのは最後にそうして救われるはずのキャラが照さんだったからですね。
「ステラのまほう」では後半に進むにつれて照さんの存在感がずいぶん増したような感じがします。たまちゃん同棲然り。
最終巻の顛末は、百武照にいちばん効く"まほう"だったのではないでしょうか。ふよんちゃんとたまちゃんがいなければ発動できなかったタイプの、照さんへのお返しのまほうだと思います。この結末で「ステラのまほう」を迎えることができて本当に良かったと思います。
じゃあなんで照さんが好きなの?
はい。
いままで述べたことは、どちらかというと照さんが好きな理由というよりは「ステラのまほう」が好きな理由ですね。
では照さんが好きな理由は、ずばり共感です。照さんに限らず、このキャラのこういうところが好きって理由、憧れとか共感が多いのではないでしょうか。
「ステラのまほう」を初めて読んだとき、自分の考えている信条と全く同じことを喋っているキャラがいて、嬉しい戦慄に身を震わせながら読み進めた覚えがあります。
百武照さん、ラスボスだのニヒリズムだの闇だのいろいろ言われていましたが、先程引用させて頂いたくろば・U先生の記事の中でその内面を端的に表す言葉が触れられていました。この言葉に触れられていてちょっと嬉しかったです。
そうです、刹那主義です。刹那主義。
https://news.yahoo.co.jp/articles/fb24a07521d1a82c0f38a956dcaa765a80378e2e
上記引用記事のなかの「陽気なニヒリズム」という言葉がかなり照さんの信条に近いのではないでしょうか。
この言葉を胸に、「ステラのまほう」を読み返すとなんとなく照さんの発言がこの思想、主義に一部根差した発言であると感じるのではないでしょうか。そしてそういう照さんがそういう信条に至るコンテクストも察しがつくのではないでしょうか。
哲学や思想には詳しいわけではないのですが、私自身がなんとなく刹那主義に染まっているため、照さんに共感できるところが非常に多く、このキャラが大好きです。
この考え方に私が染まった理由の一つを簡単に紹介します。
それは、日常系の段で述べたような、自分の心に大きく変容させてしまう作品が一つあり、その作品を鑑賞したせいです。
その作品がこれです。年末実家で暇ならこれを見ましょう。
日本語訳の「いまを生きる」は、作中のテーマであり、繰り返し用いられるラテン語の語句である「Carpe diem」から。
この作品について多くは語りませんが、私はこの作品のおかげでこういう考えで生きていこうと思ったわけです。(これも解釈の余地がありますが…)
明日がどうなるかなんてわからないから、その日その瞬間を精一杯楽しもうという考え方が自身に元々あるから、百武照さんに共感し、照さんがはちゃめちゃに刺さったという次第です。
当然このキャラはこういうキャラって解釈するのはその人の価値観によると思うし、私の考えとくろば・U先生の考えは違うと思います。
でもこの押しのここが好きっていうのは自分だけのものだと思います。あなたの推しキャラのどこが好き?
さいごに
繰り返しになりますが、「ステラのまほう」は自分の心に不可逆の変化をもたらすような、素晴らしい作品です。またこうやってブログに残すことで、「ステラのまほう」に対するいまこの瞬間の気持ちを墓場まで持っていけるような気がします。
この作品が終わってしまうことが寂しい気持ちがありますが、最終回は私のなかで文句の付け所のない100点のフィナーレだったように感じます。
この作品を作って頂いたくろば・U先生とその関係者に多大なる感謝を込めて、この記事を締めさせて頂きます。
とっちらかった記事になってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。またの機会に。