神須屋通信 #02
2020年の5つの出来事
本来ならば、東京五輪&パラリンピックの年として記憶されたはずの、でも今では間違いなく、「新型コロナ」(世界的にはcovid-19)が流行した年として後世に記憶されるだろう、2020年が間もなく終わろうとしている。しかし、コロナ禍は終わらない。私たちは、コロナとともに年を越すことになった。違う疫病ではないかと疑われるくらい、日本とは桁違いの大きな被害を受けている欧米では、奇跡的なスピードで開発されたワクチンの投与が始まったが、日本では、ワクチン摂取は来春以降だろうと言われている。12月に入ってからも、東京を中心として、感染者は過去最高を記録し続け、堪りかねた医療従事者たちは医療の緊急事態を宣言した。これ以上、感染者を増やさないで。年末年始はSTAY HOMEを!政府はもっと強い対策をとってと訴える。欧米に比べて段違いに感染者が少ない日本で、どうして医療が崩壊するのかと疑問に思うが、たぶん、普段の医療体制がギリギリだったのだろう。少子高齢化で医療費は年々増大して国家予算を圧迫しているが、今回のようなパンデミックに対応できる体制ではなかったのだ。同学年ながら、私が日頃敬愛する内田樹さんは、医療と教育には、効率や費用対効果を過度に重視する、資本主義経済の考え方を導入してはいけないと、かねて主張されているが、改めて考えてみると、資本主義の権化であるアメリカで医療崩壊が言われないのはどうしてだろう。いや、あれだけの死者が出ているという事は、すでに医療は崩壊しているという事なのだろうか。
さて、こんな風に書き始めてみたけれど、この「神須屋通信」は、そんな天下国家の大情況について素人の意見を述べる場ではありません。退職老人のささやかな日常生活を報告する場です。というわけで、年の瀬に当たって、今年の極私的世界における5つの出来事を発表します。
1)コロナ禍による巣篭もり生活
2)スマホ生活のスタート
3)note を始める
4)マイナンバーカードの取得
5)イオンの閉店
1)については、もう言うまでもない。今年の漢字は「密」ということだが、その反対は「疎」。疎外、過疎の「疎」。私は、定年退職してから、かなり人間関係が疎遠になったので、コロナ下においても大して生活は変化しなかったのだが、それでも、大学時代の友人たちや、かつての職場の同僚たちと一度も会えなかったのは、とても淋しいことだった。海外旅行も出来なかった。実は、ここ数年、家内の希望で、クルーズ客船の旅行を夫婦で楽しんでいた。あの「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船して。今年も乗船する予定だった。思えば、日本におけるコロナ騒動は、その「ダイヤモンド・プリンセス」から始まったんでしたね。念のために書いておくと、私たちは富裕層ではない。クルーズ船での旅行といっても、ピンからキリまである。私たちはキリの方。安く済ませることも、十分可能です。
2)そう、今年やっと、携帯をスマホに変えました。機器に弱いわけではない。職場でも家でも、長年Macを愛用していて、家にWiFiの設備もあるし、iPadも所持しているのだが、どういうわけか、携帯電話だけはガラケーのままだった。理由は、スマホに変えると費用がかかりすぎるからである。どうせならiPhoneにしたいが、iPhoneは高価だ。回線料だって高くなる。年金生活者には痛い出費だ。それでも、そろそろスマホに変えないとと思って、auで見積もりをとったら、最低でも、夫婦二人で月1万円するという。現行料金の約3倍。しかも機種代は別。これは無理だ。この際、格安スマホにしようと思っていたところに耳寄りな情報が入った。古い型の機種ではあるが、iPhoneを使用して、機種代を含めて、二人で月7千円。うーん、これでもかなり現状より高くなるが、憧れのiPhoneを使えるというんで決断した。ネットはわずか3GBの回線容量だが、どうせ、スマホで動画を見る事はないから、これで充分だった。使ってみると、やはり、スマホはいろいろと便利ですね。パソコンを持って歩いているのと同じだから。
3)note を始めたきっかけについては既に他の文章に書いたとおり。二十数年も続けていたホームページ「神須屋通信」を、プロバイダーのサービス終了によって、否応なく、中止せざるを得なくなった。替わりに始めたのがnote。こんな素晴らしいサービスを無料で使わせてもらっていいのだろうかと、疑問にさえ思う毎日です。少しは内容のある文章を投稿するように心がけないと。
4)今年は、日本の政府や自治体などの、呆れるほどの、デジタル化の遅れが歴然となった年だった。今後、電子政府など、行政のデジタル化を進める中で、その中核になるのがマイナンバーカードの普及だ。そう考えたのだが、私自身、マイナンバーカードを持っていなかった。個人情報の漏洩を心配したからではない。ただ、作る必要がなかったからだ。今回は、カードを作ったら5000ポイントくれるというので、いい機会だからと作ってみた。まあ、実に意識の低い市民ですね、私は。どうやら、日本では、意識が高いと言われる人たちほどマイナンバーカードに反対のようだ。これが、今回のコロナ禍でも明らかなように、何かにつけて、私権の制限や強制に及び腰の政府の姿勢とがあいまって、今まで、マイナンバーカードが普及しなかった原因なのだろうと思う。個人情報を守る方策はいくらでもある。例えば、マイナンバーカードに、運転免許や保険証の機能の他に、銀行口座を含めて、様々な情報が紐づけられたとしても、それぞれの情報が必要部署ごとに分けて保存されていて、関係のない情報は見られないようにしたり、自分自身の情報を、いつ、誰が見たのか、本人が確認できるようにする事はシステム的に可能だ。そんなシステムを整えてから、マイナンバーカードがないと毎日の生活ができないようにする。それが普及を図る王道だと思う。(知らんけど。)
5)のイオンの閉店。これこそ、極私的な話題ですね。定年退職してほぼ10年が経つ。この10年間、ほとんど毎日のように、近所のショッピングセンター「トークタウン」に徒歩か自転車で出かけて、本屋で立ち読みしたり、喫茶店で珈琲を飲んだりしていた。まあ、それなりに優雅な定年生活と言えないこともなかった。その「トークタウン」の中核であったイオンが、今年の8月で閉店した。正確には、老朽化した建物の建て替えのための一時閉店である。同じショッピングセンターにテナントとして入店していた専門店も、いくつかが同時に閉店し、幾つかは、今年いっぱい営業を続けた。それらの店は、近くに建設された、新しい「トークタウン」の建物に移転して、来年から営業を始める。それらの中には、語学教室や歯科医院なども含まれる。
問題は、本屋と喫茶店がなくなる事である。本屋は、すでに9月からなくなっていた。イオンの内部に一店と、トークタウンの専門店街に一店。二つの書店があったものが、9月で共になくなった。そして、私の行きつけだった喫茶店「ドトール」は、今年の年末まで営業するが、新しい建物には移転せず、営業をやめることになった。さて、どうしたものか。本屋と喫茶店が近くにない生活。そんな生活に私は来年から耐えられるのだろうか。(まあ、喫茶店は他にもないわけではないけれど、昔からの馴染み客がいるような地元の小さな店には、今更、入りにくい。)以前、近所のツタヤが閉店した時、仕方なく、動画配信サービスである、amazon の prime video を利用することにしたのだが、以前は年間100本ほどの映画を見ていたのが、半分くらいになってしまった経験があるので、環境が変わると、生活習慣も変わってしまうのだと実感した。まあ、なるようにしかならないとは思うが、やっぱり、不安です。