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ペーパーバックを読む⑩

寅さん映画:エド・マクベインとディック・フランシス(追記)

 前回、エド・マクベインに比べて、ディック・フランシスの記述が簡単すぎた気がするので、少し付け加えておきたい。まず、下のリストは、wikipediaに私がちょっと手を加えたものである。原題と菊池光さんの翻訳タイトルを比較して、その名付けの妙味を味わっていただきたい。(菊池さんの翻訳した本文は読んだことがないのだけれど、噂では、原文以上に格調が高かったそうだ。)私がリストに付け足したのは、それぞれの作品の主人公の職業である。「元騎手の探偵」と書いてあるのが、ディック・フランシスの登場人物で最も有名な、シッド・ハレーのことですね。空白なのは、今回、確かめられなかった作品。何しろ、私は数年前にペーパーバックをほとんど処分してしまったので、手元にディック・フランシスが一冊もないので。今回、この文章を書くために、amazon のコメント欄などを読んでいたら、私と同じような「競馬シリーズ」のファンがたくさんいて、その中の何人もの方が、好きな作品を繰り返して読んでいると書かれているのを読んで、申し訳ないような気がした。

 そういう訳なので、以下のリストの中で、私が読んだのはどれで、どれが未読なのかはわからないのだが、ディック・フランシスが亡くなった時点で33冊読んでいて、それ以後にも数冊読んだから、44冊のうち、40冊近くは読んだと思う。どの作品が良かったかは、もう定かではなくなっているが、やはり、初期の数作と、シッド・ハレーが登場した作品かな。

• 1962年 本命 Dead Cert (1968年)騎手の友人
• 1964年 度胸 Nerve (1968年)
• 1965年 興奮 For Kicks (1976年)牧場経営者
• 1965年 大穴 Odds Against (1967年)元騎手の探偵
• 1966年 飛越 Flying Finish (1976年)貴族の馬主
• 1967年 血統 Blood Sport (1969年)英国諜報部員
• 1968年 罰金 Forfeit (1977年)競馬記者
• 1969年 査問 Enquiry (1970年)競馬騎手
• 1970年 混戦 Rat Race (1971年)パイロット
• 1971年 骨折 Bonecrack (1978年)調教師
• 1972年 煙幕 Smokescreen (1973年)俳優
• 1973年 暴走 Slayride (1974年)調査員
• 1974年 転倒 Knockdown (1975年)馬主
• 1975年 重賞 High Stakes (1976年)調教師
• 1976年 追込 In the Frame (1982年)画家
• 1977年 障害 Risk (1982年)
• 1978年 試走 Trial Run (1984年)元騎手
• 1979年 利腕 Whip Hand (1985年)元騎手の探偵
• 1980年 反射 Reflex (1986年)競馬写真家
• 1981年 配当 Twice Shy (1983年)物理教師
• 1982年 名門 Banker (1988年) 銀行家
• 1983年 奪回 The Danger (1989年)誘拐対策企業スタッフ
• 1984年 証拠 Proof (1985年)酒屋経営者
• 1985年 侵入 Break In (1991年)厩舎経営者
• 1986年 連闘 Bolt (1992年)厩舎経営者
• 1987年 黄金 Hot Money (1993年)アマチュア騎手
• 1988年 横断 The Edge (1989年)ジョッキー・クラブ保安部員
• 1989年 直線 Straight (1990年)元騎手の宝石商
• 1990年 標的 Longshot (1996年)伝記作家
• 1991年 帰還 Comeback (1992年)外交官
• 1992年 密輸 Driving Force (1998年)競走馬輸送会社経営者
• 1993年 決着 Decider (1994年)建築家
• 1994年 告解 Wild Horses (1995年)映画監督
• 1995年 敵手 Come to Grief (1996年)元騎手の探偵
• 1996年 不屈 To the Hilt (1997年)青年画家
• 1997年 騎乗 10 LB. Penalty (2003年)障害騎手
• 1998年 出走 Field of Thirteen (1999年)
• 1999年 烈風 Second Wind (2000年)気象予報士
• 2000年 勝利 Shattered (2001年)ガラス職人
• 2006年 再起 Under Orders (2006年12月)元騎手の調査員
(以下、フェリックス・フランシスとの共著)
• 2007年 祝宴 Dead Heat (2007年12月) 人気シェフ
• 2008年 審判 Silks (2008年12月) アマチュア騎手の弁護士
• 2009年 拮抗 Even Money (2010年1月) ブックメーカー
• 2010年 矜持 Crossfire (2011年1月) 厩舎経営者の息子
(  )内は、日本語版の出版年次

 今回、息子のフェリックスのその後についても、少し知ることができた。息子といっても、私より数歳下くらいなので、もうかなりの年齢なんですね。父親と共作するまでは、長らく物理の教師をしていた。父親の死後、単独で10作ほどの作品を発表しているそうだから、ちゃんと作家として認められた訳だ。私は、ちっとも知らなかった。お父さんにあれだけ(読者として)世話になったのに、我ながら、冷たいことだと思う。冷たいのは、私だけではなかったようで、これは今回知ったことだが、ディック・フランシスも訳者の菊池光さんも亡くなった後、ハヤカワ書房は、フェリックスとは契約しなかった。フェリックスの「新・競馬シリーズ」の日本語版は、他の出版社から出ているそうだ。

 フェリックスの新しいシリーズの中には、探偵業を引退したシッド・ハレーが登場する作品もあるそうだが、さて、ファンたちは、フェリックス作品をどう評価しているんだろう。主に英語のコメントをいくつか読んでみた。初期の作品には好意的な評価が多い。よくぞ、お父さんの後を継いでくれた、父親の作品に勝るとも劣らない、とか。でも、最近作の評価には、少々辛口のものが出てきている。もう最近の作品は、競馬の世界の香りが薄くなっているのだから、そろそろ親の世界と絶縁して、独り立ちしたらどうかと。指摘されて確かめてみると、フェリックスの本の表紙には、著者名や題名に比べればずいぶん小さい活字ではあるのだが、"A DICK FRANCIS NOVEL"と確かに印刷されていた。出版社の宣伝方針の都合もあるから、これを外すかどうかは、フェリックスが決められる問題かどうか微妙ですね。でも、偉大な父親を持った作家は大変です。

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