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10年ぶりのソウル(3)

 ヒュンダイソウルと世宗大路

 ソウルの旅4日目には、これは家内の希望でしたが、汝矣島(ヨイド)に新しく誕生した現代百貨店の新店舗「ヒュンダイソウル」を見物し、最終日は、帰りの飛行機が夕方出発なので午前中に、かつて何度も訪れたことのある懐かしい清渓川から世宗大路まで歩きました。 

 汝矣島は、かつて黄金色に輝く韓国初の超高層ビル「63ビル」の展望フロアに上がったり、国会議事堂近くの川岸で満開の桜並木を見物したりした思い出の場所です。今では63ビルを越える高層ビルが林立するエリアになりました。そんな汝矣島に最近現代百貨店がオープンしましたが、その、従来のデパートのイメージを遙かに超える規模とスタイルが韓国内だけではなく、日本でも話題になりました。これはぜひとも見物しなければ。

 地下鉄5号線の汝矣島駅で下車すると、地下のショッピングストリートに沿って長い長い動く歩道が続いていました。10分以上もかかったでしょうか、何度か乗り換えてやっと玄関口にたどり着きました。「THE HYUNDAI SEOUL」と書かれています。デパートメントストアとは書かれていません。店内に入ってエスカレーターで階上にあがると、写真で見たあの光景が見えてきました。息を呑むような圧倒的な空間です。これは確かに従来のデパートではない。私は、いまや一人あたりのGDPでも所得の水準においても日本を抜いた韓国経済の実力を目の前に見せられたような気がしました。凄い。「ピョルマダン図書館」にも圧倒されたけれど、ここでも圧倒されました。これは蚕室のロッテタワーを中心とするロッテ百貨店を含む巨大なロッテタウンでも感じたことですが、これだけ巨大な投資をして果たして採算は合うのかと心配になるのは、私が既にながらく続く日本デフレマインドの影響を受けているせいでしょうか。建築や街作りに昔から興味のある私は確かにワクワクしたんですが、これはちょっと疲れるなと感じたことも事実です。なにしろ、私はもう70歳を越えた年寄りですから。

 池袋の西武そごうの従業員たちがデモをしたというニュースを私はソウルのホテルで知りましたが、日本においては衰退産業だと考えられている百貨店が韓国ではまだ成長産業なのでしょうかね。今までの韓国旅行では、私たちはロッテやシンセゲ(新世界)デパートに何度もお世話になりましたが、現代百貨店は今回が初めてでした。確かに、ここはこれまでのデパートとは全く異質でした。他のデパートも刺激を受けたでしょう。韓国では百貨店業界はまだまだ元気なようです。

 館内を歩いているだけで疲れたので、地下の「スターバックス」でしばらく休憩してから早々に館をでることにしました。全ての店を見回っていたら半日かかったでしょうから。館内は大盛況で、「スターバックス」で商品が出てくるまで30分も待ちました。

 最終日にようやく行った清渓川(チョンゲチョン)は、都市計画に興味がある私がその造成工事中から注目していた場所です。今ではすっかりソウルの街の名所になりました。私は、悪臭ただよう川を暗渠にして、その上に架けてあった高速道路を大胆にも撤去して、人工の流れだとはいっても、歴史ある清渓川を復元した元ソウル市長であり元大統領だった李明博の功績は不滅だと思っています。今、東京では日本橋の上を通る高速道路を撤去する計画がありますが、さて、いつ実現するんでしょうね。

 清渓川は10年前と変わらない姿を見せてくれましたが、驚いたのがソウルの街のシンボルである世宗大路でした。変わっている!私たちの住む大阪では今、歩道を拡張する御堂筋の大改造計画が進んでいるんですが、ここはそれどころではない変化でした。かつては、李舜臣像や世宗大王像が並ぶ光化門広場の両側に車道があって、それぞれが一方通行の広い道路だったんですが、西側の道路がなくなって、車道は東側だけの両面通行になっていました。だから、たとえば世宗会館には植栽された石畳の広場から直接歩いていけるのです。これは、大胆な変更でした。以前からソウルの都市計画担当者は良い仕事をすると思っていましたが、これは素晴らしい仕事でした。確かに、北岳山と景福宮を背景にした写真を撮ろうとすれば、以前のようにシンメトリーの構図の方が美しい都市景観写真になると思います。かつてはそれがソウルを代表する都市美でした。でも、そんな都市美よりも住民の居心地や使いやすさを優先したのでしょう。それは正しい判断だと思いました。この拡張された広場では、さまざまなイベントが開催されているようです。その日もテントがいくつかたっていました。帰国後にSNSでそれらの写真をいくつか見ましたが、特に夜などはとても美しく賑わっているようで、まさに一国の首都に相応しい光景でした。

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