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6月の君は冷たいくらいの綺麗さだった。 緑豊かな山の上にある、煉瓦作りの大きなホテルの変に賑やか過ぎたロビー。 人だかりの中、本当の名前だって知らない君のことをただずっと、ずっと待っていたんだ。 オーダーのスーツはグレーの細かい千鳥格子。 シャツはアイロンのない白のラルフローレン。 決めすぎない格好が君は好きだって言ったから。 数の限られた僕のクローゼットから選んだ精一杯の君へのメッセージ。 虫に食われたままの袖先の生地がやるせなかったけれど、 それさえも、彼女は