京散歩-太秦広隆寺
洛内を往くは久しぶり。京福電鉄は嵐山本線。天神川を越えて少し走ると立派な楼門が見えてくる。京都最古の寺院、太秦広隆寺である。
この界隈は渡来人一族である秦氏が栄華を築いた地とされており、ここ広隆寺の他に梅宮大社、松尾大社、蚕ノ社なども秦氏関連の神社とされる。
そう、広隆寺を訪れた目的は〈弥勒菩薩半跏思惟像〉である。薄暗い霊宝殿の中で凛と並び立つ十二神将像や四天王像。室内中央に座しておられた弥勒はどこか神々しさがない。
このうえなく高貴な出で立ちとは裏腹に、安心感を覚えるような優しい輪郭。完璧と称されたる所以ほど筆舌し難いものはない。しようとするからこそ、あのような尋常たらざる安っぽい賛美が横行するのであろう。
桜の花弁はひとつ、ふたつと風に揺れ。栄枯盛衰の舞台にて、変わらぬものを見定めんとする。