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何かを始めるのに遅いなんてことはない

ピアノを弾き始めた。昨夜。

人生の前半では、自分にとってかなり重要な存在だったピアノ。4歳から始めて、割と順調に弾けるようになっていったと思う。
中学2年で、通っていた教室の周囲に音高受験をする人が4人に1人位いる環境にいた。耳は良かったけど練習があまり好きでなかった私には、そこでピアノを弾き続けるのはきつく、高校受験を言い訳にレッスンに通うのをやめた。
それ以降もピアノには触れていたけど、自宅にピアノがない生活になってかれこれ30年近くか。音楽を聴くのは大好きだが、演奏することからはすっかり遠ざかっていた。

ピアノをまた弾きたい。その気持ちはずっとあった。
でも、家で練習できないのに弾けるようにになんてならないじゃない?と言う気持ちがあって。弾きたい曲が弾けるようになるのが自分にとってピアノを弾く理由だったから、それが叶わないなら意味がないとおもってしまっていたんだ。
でも、もうすぐ年齢が大台に乗るこの時期、何かを少し変えたくて。変化の少ない日々をずらしたい、そう思ったとき、手を伸ばしやすかったのは、やはり長年付き合いのあったピアノだった。

どこで弾くかがまず大きな問題。
比較的自宅から近い場所に貸しスタジオがあるのを知っていた。なんとピアノも貸してくれるという。しかもグランド。人気があって争奪戦は厳しいけど、ひとりなら割と安価で借りることができる。
思い切って、初めて予約したのが昨夜だった。

23:00過ぎに1時間半で予約を入れてみた。使い方を説明してもらって、ん10年ぶりのグランドピアノに触れた。
本当は、ハノンからやるべきなのだろう。本当に弾いてない時期が長すぎて、ほぼゼロ状態なのだから。でも、弾きたい曲を弾けるようになりたくて、ドビュッシーの月の光の楽譜をネットで購入した。昔、我流で何となく弾いたことのある曲。今弾くなら、ちゃんと弾けるようになりたい。
覚悟はしていたけど、絶望的に指は動かない。譜面も読めなくなっている。弾けるイメージで鍵盤を探るけれど、求める音を鳴らせない。バカみたいなミスタッチ。思わず笑う。何だこれ。
でも、楽しい。ヘボヘボだけど、とりあえず弾き続ける。深夜で眠くなるかと思ったけど、割と集中していたと思う。音量の調整ができるような技術の状態ではない。まずは譜面にある音を全部鳴らせるようになるところから。音が怪しい部分は、譜面を見つめて音を確認する。右手だけ、左手だけで何回も弾く。両手に戻すとまた音を間違える。でも、楽しい。また片手で。左手が特に弾けなくなっているな。左を何回も。

そうして、あっという間に1時間少しが経った。1曲を通して弾ける状態ではないので、初回はまずここまで、と思っていた部分までを、改めて頭から弾いてみる。まだヘボヘボだけど、楽譜と自分の弾いている音の認識がリンクしてきた感触があった。うん、この音、この指だな。間違える場所もあるけど、まずは譜面の音を認識できてきたから満足。1時間半の前の自分と変化を感じられたことが、とてもうれしかった。

いわゆる、この曲が弾けるようになった、と言えるようになるまでに、時間はとてもかかるだろう。
①楽譜に載っている音が出せる
②指がある程度きちんと動いて弾ける
 ↑これはかなり時間かかるはず
③楽譜で指示されたどおりのテンポや音の大きさ、表現に近づける
 ↑これも絶望的に時間かかりそう・笑
このステップが少なくとも必要。はー、先は長い。
でも、単純にピアノを弾く時間が楽しかったんだ。それを実感できて幸せな時間だった。少なくとも週1、できれば週2くらい弾きに行きたい。能動的な趣味が欲しいと思っていたけど、しばらくこれを続けて数曲弾けるようになりたい。

何かを始めるのに遅いと言うことはない。
言葉としては聞くけれど、一歩を踏み出してみればそれを実感できたことがうれしい。自分の中に、ピアノを弾くことに対する熱意みたいなものがまだあった。上手くなりたいし、自分が弾きたい曲を弾けるようになりたい。シンプルにそう思えた。
この年でもそう思えることがあった。それを確認できた深夜の帰り道。雲の隙間から、少しだけ月が顔を出していた。
1年度の自分はどの曲を弾いているだろう。少しずつでも進みたい。

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