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ゆとりのゲーム感想「紫禁城 SHI KIN JYO(GB版)」


【はじめに】

【ハード】ゲームボーイ
【メーカー】東映動画(サン電子?)
【発売日】1991/07/16
【購入日】2022/10/24
【初クリア日】2025/01/07
【定価】3500円(税込)
【購入価格】100円
【初クリアまでの時間】7時間

私はパズルゲームが苦手だった。

・・・だった、と過去形だと、今はさも得意かのように見受けられるかもしれないが、そんなことは無い。今でも全然下手くそである。しかし、見ただけで拒絶するほどのアレルギーは無くなった。その辺はADVの方がエグいな。さらに言うと、RPGはここ2,3年で酷いアレルギーだ。フルボイス、ムービー、美麗なグラフィック・・・もうやめてくれ吐き気を催す。

私はもう10年以上レトロゲーを嗜んでいるが(きめぇw)、私はとあるゲームをきっかけに一度レトロゲーからすっかり離れてしまったことがある。それがこのブログでも紹介した「モグラーニャ」である。

任天堂から発売されたGB用ソフト
「モグラーニャ」

3DSのバーチャルコンソールが初めての出会いだった。ファミコンは500円、ゲームボーイは300円、月に一度渡される1000円のお小遣いをどのソフトに使うかを延々と悩んでいた。ファミコンを2本買うか、ゲームボーイを3本買うか、悩んでたら600円のゲームボーイが出てきた!実際に遊ぶ時間と同じぐらい選ぶのにも無駄に時間を使っていたな。懐かしい。

モグラーニャを初めてプレイした時は、忘れもしない中学二年の夏。その時すでに初代ロックマンをノーダメクリア、FC版魔界村をノーミスクリアするという偉業を達成していた私は、並のFC,GBソフト程度なら余裕でクリアできる、と豪語する程、虚心坦懐であった。モグラーニャ?任天堂?ヨユーヨユー。そんなゆとりゲーム、ちょちょいとクリアしてやんよ!

数時間後、私の自信は砕かれることとなった。難しい。どうやっても一手足らない。ブロックを押しては詰み、引いても詰み、穴に潜って進路も変えても詰み、3回殴れば倒せるボス以外は容赦の無いゲームだった。

このモグラーニャを最後に私のレトロゲー街道は唐突に終焉を迎えることとなった。酔狂とまで言えるファミコンブームがたった一匹の白黒モグラに沈められてしまったのである。単に飽きてしまった、というのもあったかもしれないが、レトロゲーから離れた数年間の思い出が無いから私の中でレトロゲーがどれほど比重を置いているんだ、という怖い話。はぁ。

話を戻して、モグラーニャによってレトロゲーが終わってしまった訳だが、私にパズルゲームの恐怖心を取り除いたのは、なんとモグラーニャである。大学生でレトロフリークというエミュレータを買って、本格的にゲームボーイを遊ぶ環境が整った時、真っ先に思い浮かんだゲームはモグラーニャであった。かつての敵は今の友ではないが、今となってはレトロジャンキーな私を完封したゲームはどんなものかと微かなエモを楽しみながらプレイしたのである。そしたら、クリアできるクリアできる。寧ろ、ある程度色々なジャンルのゲームに触れたからか、少し躓いても視点を変えてもう一度考える、というやり方を覚えて"思考する"という楽しみ方を知った。

それからは、「I.Q」、「倉庫番」、「バベルの塔」、「ソロモンの鍵」といったかつては尻込みしていたゲームにも少しずつではあるが、パズルゲームにも挑戦するようになっていた。今でも苦手ではあるが、小手先のテクニックが一切通じない洗練技巧なゲームデザインを存分に浴びることができるジャンルであると考えている。継続してやることは考えていないが、たまに休憩程度にやってリフレッシュするには最適である。

今回、手に取った「紫禁城 SHI KIN JYO」もアクション要素が一切無い思考型パズルゲームである。しかも初期のGBソフトだから白黒だぜ。一切の無駄を削ぎ落したソリッドなゲームだぜ・・・良く言い過ぎか?所詮はタダの暇つぶしだよな。はぁ。

【ゲーム概要】

GB用ソフト
「紫禁城 SHI KIN JYO」

「紫禁城 SHI KIN JYO」は東映動画から発売されたゲームボーイ用ソフト。全50面。

このパッケージとアニメ映画では死ぬほど聞くけどゲームでは初めて聞いた東映動画。この組み合わせからするに、何かの映画を基にしたのだろうと踏んでいた私。しかし、これ調べてみたんだけど、何かの映画の無理矢理なゲーム化でも、タイアップでも無いんだってな。ただただ、舞台に紫禁城を選んだだけ。仮にも"Boy"の名を冠したハードには地味すぎやしないかい?これを手に取って絶望しなかったちびっ子は何人いるのだろうか。・・・さらに調べてみた所、本作は昔のパソ用のゲームだったらしいという情報があった。他にもファミコンやゲームギアにも移植されたこともあったこともあり、何気に人気を博したゲームなのかもしれない。知らんけど。

発売は東映動画となっているが、開発の会社はクレジットに明記されていない。が、他の移植作を見るにサンソフトが開発かと。同社が出した「上海」のヒットを見て、二発目としてコイツを出したんだろうな。にしても、舞台まで合わせる必要あるか?サンソフトだけでなく、アイレムまでが「四川省」という似たようなパズルゲーム出してるし、ちゅーごくってそんな人気あるんですか?

本作のルールは簡単で、フィールドに並べられている麻雀牌で構成された迷路を上手くかいくぐりながらキャラクターをゴールまで導いたらステージクリア。しかし、ゴールの殆どが麻雀牌で封鎖されており、麻雀牌をどかす必要がある。そこで本作の唯一のゲーム性が光る。プレイヤーが操作するキャラは麻雀牌を押すことができる。そして、同じ麻雀牌同士が重なると、消滅する。この性質を上手く利用しながら麻雀牌を消していくことで迷路を突破していくのだ。要は、「上海」と「倉庫番」をミックスしたようなゲームである。

ただ、もう一つルールが。字牌は消せないし動かせない。どころか、字牌の隣に牌を置くと、自動で字牌に切り替わる。字牌は消すこともどかすこともできないゴミなので、字牌を増やすことは詰みに直結する。プレイヤーは字牌と隣同士にならないルートも考える必要がある、という訳だ。

中々にハードな内容だと思われるが、本作はステージセレクト制を導入している。よくあるクリアしたステージを選択できる、といったものではなくどのステージからでも選択でき、いきなり最終面に挑戦も可能。親切設定である。あともう一つ、良く分からないのが、設定画面からゲームの舞台を中国から西洋に変えることも可能となっている。キャラもキョンシーからナイトに変わり、麻雀牌も英数字の紋章に変わるという謎仕様。「見栄えが変わらないゲームばっかやらせんじゃねーよ!」という意見を真っすぐ受け止めた結果だろうか。配慮してくれたのは嬉しいが、そういうことじゃねンだよ。

概要は以上。

【感想】


さて、色々言ってしまったが、プレイ。感想としては至って普通のパズル。以前クリアした「パズルボーイ」と違って、途中でキャラが増えたり、ギミックを使ったり、というのも無い。最初から最後まで同じゲーム性である。

しかし、それだけゲームはガチ。決められたルール内から出ることは不可能。製作者からの挑戦状に真正面から立ち向かうこととなる。グラフィックの問題はあるが、この手のゲームは時代に左右されない普遍的な面白さがある。何より美しい。パズルゲーム制作の人には、ゲームが面白いのはどーのこーのなんか情けなさすぎて言えない。

そんで、肝心の内容なのだが、かなり厳しい。1面から詰みとなる手順があるので、何気なく始めた人は出鼻をくじかれることになるだろう。ただ、難易度の上がり方はこの手のゲームにしては珍しく緩やかである。フラッピーには見習ってほしいものだ。やっていくうちに気になったのが、フィールドの広さである。倉庫番やフラッピーはフィールドの全体が1画面に収まっているが、本作は無駄に広くスクロールするのだ。これだけでテンポがすこぶる悪く、キャラもチンタラ歩くので、動くたびにピョンピョンとなる効果音に徐々にムカついてくる。

何より字牌の存在が私を苦しめる。例えば、一の配を動かして一の配と字牌の間に入れる。この条件だと確かに同じ牌が揃っているが、字牌が隣にある場合、字牌のルールが優先される。この仕様がこのゲームをさらに難解で複雑なものにしている。ただの手間でしかならない場合もあるが、いい具合に頭を悩ましてくれた。あーめっちゃ余裕じゃんと思ったら字牌が隣にあんのかい、の連発。これは意図してここに置いてるんだろうなというのが透けて見えたが面白かった。

さらに、フィールドを広くさせてしまったことが悪く働いているのが、フィールドに大量の麻雀牌が置かれている。終盤になっていくとほぼ全ての麻雀牌を動かすステージもあるにはあるのだが、殆どのステージはダミーとして置かれているだけだ。本筋の解答とは関係の無い牌は、ただ邪魔でしかないし、何より綺麗ではない。気取ったようにシンメトリーに置きたいが為のクソダサい配置。パズルゲーム制作者に敬意を払っていると言ったが、さすがに雑過ぎるステージには唖然とした。もう一つの弊害が、新たなステージに入った時に、フィールドの全容が見えないので、最初にフィールド全体を見渡す必要があるのだ。ボタン一つでパパっと切り替えられたらいいのだが、これもまた面倒で、Bボタンを押して十字キーを押すと、フィールドをスクロールすることができる。これがもっさり動く。ボタンを押す手がゆっくり重くなっていく。

いやープレイヤーへの配慮が全く感じられないな。かなり古いゲームとは言っても90年代のゲームではあるので、許容し難い。寧ろ、パズルゲームは、パズル以外の部分は優しくあるべきだ。解けないフラストレーションからの解放が気持ちいいのであって、それ以外のストレスはノイズでしかない。ただでさえストレスを与えるゲームなんだから自重しろ!はぁ・・・

ここまでぶーこら言ってきたが、パズルど下手の私でも自力でクリアできる難易度であったので、投げ出さずに食らいつくことができた。人工甘味料ドバドバのジュースと同じで、いくら不純物と言っていても、単純な快感には抗えない。試行錯誤して、解けた時はやはり嬉しいのだ。何だかんだ35面までは自力でクリアすることができた。

しかし、36面から一気に難しくなる。もう全く歯が立たないレベルだった。え、これ本当に解けんの?何度もループされるBGMが鳴り続け、全く進歩が無い画面を見続けた。終いには1時間かけても分からないステージも出てきたので、もう仕方なくyoutubeでお手本の動画で答え合わせした。またかよぉぉ!!いくら文句を言っても、自力でクリアできない者はカスだ。製作者もこのザマを見て嘲笑っていることだろう。前回のパズルボーイでもそうだったが、youtubeに投稿してくれた先駆者がいなかったら、クリアの画面すら見れないのか。しかも、こんなマイナーゲームと思われるものですら一つはクリア動画がある。マニアがいるもんだなぁ。それに比べて情けない・・・

10面クリアするごとに、中国の歴史的建物をバックに謎のチャイナ娘が見れる。プレイヤーはキョンシーだし、何の関係性も無いが、素朴すぎる本作には美しすぎる華だ。少ないパターンであるが、可愛いアニメーションを見せてくれるので、ストレスが少し軽減される。ええね。しかし、それとは対照的に地味なのが、50面クリア後のエンディング。今まで登場したチャイナ娘が一堂に集まり、Congratulations。文字のみのスタッフロールが流れる。はぁ?せめて謝謝だろ。せっかく、苦労したのにこの感じだとプレイヤーには達成感が残らない。もう少し褒めてくれてもいいんだぜ?答え見ちゃったけど・・・

BGM。パズルゲームのBGMなんか誰も気にしてないし、耳に残るものも少ないと思うが、私はこのゲームのBGMはレベルが高く感じた。特に通常の中華ステージはアップテンポでありながらもチャイナを連想させるBGMで一押しのBGMだった。パズルだからといってメロウな曲ばっかじゃつまらないもんな。静かなのが好きな人からしたら批判があったかもしれないが、挑戦的な姿勢で良い。

グラフィックは・・・言うこと無い。全く持って地味で「見た目で楽しませよう」という気概が一切感じられなかった。まぁ、ハードの性能上しょうがないし、パズルにそんな小細工不要、という声もあるが、美麗でなくても美しさを感じ取れるような見た目を用意してほしかったな。

感想は以上。

【まとめ】


2025年は何とも地味な作品がスタートを切った。しかし、息抜きにはちょうど良いゲームであった。高品質とは言えないかもしれないが、十分にパズルを楽しむことができた。手だけじゃなく頭も使わないとネ・・・
これでも少しずつ成長しているのだろうか。昔の私が驚愕する程、すらすらと解きたいものである。昔の私よ、今も正月から現を抜かしてゲームしてるぞ。幸せだ。・・・泣くかもしれないな。嬉し泣きかも?やれやれ。






(本作を遊ぶには実機を購入するしか無いようだ。気になった人は是非やって欲しい。)


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