神の手なんかじゃない第5話解説
本編の第5話の解説をしていきたいと思います。
https://www.pixiv.net/artworks/99685442
https://www.pixiv.net/artworks/99904216
なぜいきなり5話?と思われるかもしれませんが
この回にそれだけ重要な意味を込めているからです。
そもそも第1話から毎回解説をしていくつもりだったのですが、本編の執筆に全集中してしまい出遅れてしまいました。
今後は少しずつ最新話に追いついていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
さて、そんな第5話は蔭先生が自身の治療の『全て』を伝えるという内容です。
陽奈ちゃんが冒頭で施術着になることも物語の一つのスタートラインであることを示しています。
そして蔭先生の治療院は、私自身の治療院そのものがモデルです。
何ならこの作品の執筆作業もこの部屋で行っています。
厳密には部屋を整理した上でデジカメで撮影し、更に作画で物を減らして殺風景さを演出しています。
まさに私自身のリアルを切り取った作品です。
さて、そこで蔭先生の哲学が語られます。
「ここは宇宙です」
「そして我々もまたこの宇宙の一部です」
実はこの考え方は東洋医学の根幹となる『天人合一思想』とも読み取れます。
同業者ならそれに気付いた方もいれば、すっかり忘れている方もいると思います。
『天人合一思想』とは『人間を小宇宙』『環境を大宇宙』と捉え、繋がり、関連性を見出していきます。
ただし、私は敢えて『天人合一思想』とは書きませんでした。
なぜなら東洋医学の解釈は人によって異なることもあり、私の解釈で『天人合一思想』とはこういう意味だと伝えることは誤解や批判を招きかねません。
その為、多方面に配慮して避けました。
これは私の個人的な『天人合一思想』の解釈くらいに理解して頂ければ幸いです。
そして、その後語られる内容はバリバリの科学です。
このギャップが我ながらツボなのですが、東洋医学にも科学にも疎い人にも少なからず伝わってくれるかと願って描きました。。
半ば宗教的とも思える突飛で怪しい表現をしておきながら、次には論理的に語られる。
これはある意味で東洋医学と西洋医学、思想と科学の調和と融合を示しています。
蔭先生は更に、臨床経験の積み重ねにより研鑽した技術であると語ります。
これもまた、東洋医学が別名「経験医療」と言われていることに掛けています。
そう、つまり東洋医学の用語は一切使わずに東洋医学の本質を現代の価値観の解釈で示しています。
一般的に「東洋医学」と聞くと、陰陽五行論や経絡経穴(いわゆるツボ)を思い浮かべる人が多いかと思いますが本来の東洋医学とはこれらが先立ってあるものなのです。
さて、今回はそんな蔭先生の治療の全てが語られて終わりではありません。
陽奈ちゃんはそんな蔭先生の治療を肯定し、その可能性に言及します。
これは近年において医療業界全体で広がっているエビデンス至上主義医へのアンチテーゼです。
エビデンスそのものは重要ですが、エビデンスがないからといって否定出来るものではなく、未だ証明されていない、今後証明される可能性も大いにあり、それこそが科学の進歩なのです。
そんなメッセージ性盛り沢山の第5話は言ってしまえば、この作品の軸となる治療の総論的な内容でした。
そして、次回から具体的な治療の技術や知識や理論などを掘り下げていくことになります。