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今年観た映画 黒澤明30本! 前編



観ました観ました!
黒澤映画30本、どうにか2021年で全て制覇しましたよ!
そんな私が、独断と偏見で勝手にランキングを作ってみました。ランクがつけられないものは◯選としました。
これから観てみたいけど、何から手をつけていいかわからない方、よろしければ参考にしてみてください\(^o^)/
オマケもあるので、最後までザッと見てやってくれたらと思います。

前半では、
⚫︎アクション・派手なシーンが好きな人にオススメしたい作品
⚫︎明日も元気に生きねばと思える作品
⚫︎サスペンス好きに贈る作品
⚫︎女性にこそオススメしたい作品


後半では
⚫︎リメイクが難しいと思う作品
⚫︎俳優さんの演技を見てほしい作品
⚫︎むしろ人にはすすめない作品
⚫︎全てを総合して人にすすめたい作品
⚫︎思わず笑っちゃった作品
をご紹介します!





アクション・派手なシーン好きにオススメしたい作品
1位 7人の侍
2位 乱
3位 椿三十郎
4位 蜘蛛の巣城
5位 隠し砦の三悪人


解説:人間ドラマも描きつつ、戦いを描く枠もしっかり確保されてる『7人の侍』は、やっぱり1位じゃないですかね。
騎馬戦なら騎馬戦だけではなく、刀で斬り合うシーンもありますし、お侍だけでなく農民も槍を持って戦います。色んな戦い方が見られるという意味でも見ごたえがあるかと。

『乱』は、馬を使った団体戦が好きな人にオススメ。
馬のシーン以外にも、天守に火が放たれるシーンも見どころです。

『椿三十郎』といえば、チャンバラですね。三船さんの刀さばきが一番楽しめるのが、この作品だと思います。

『蜘蛛の巣城』は、飛んでくる弓矢の数がハンパない。ただ、この大事なハイライトシーン、〝黒澤映画といえば〟みたいな特集がテレビで組まれると、たいてい放映されがちで。内容知らなくてもこのシーンだけすでに知ってる人が多そう という理由で4位としました。

『隠し砦の三悪人』は、三船さんが馬を走らせながら一騎討ちになるシーンがとにかくド迫力。僅かでも乗馬の経験があれば、あのシーンのすごさがわかると思います。私はたった1時間の乗馬体験がある程度ですが、限られた小さいコースをおじいちゃん馬でぱかぱか歩くだけでめちゃくちゃ怖かったので、三船さんが手綱から手を放す・・・どころか、両手で刀を持って斬りかかるシーンで「ウソだろ!?」と思わず声が出てしまいました。
去り際に女の子の腕を掴んで後ろに乗せるシーンも鮮やかでスムーズに見えました。が、ひとつ間違えたら大怪我につながるので、やる側にとってはかなり緊張するシーンだったのではないでしょうか。
男同士の一対一の対決もあるので、男の子にはぜひ一度観てほしい作品。とにかく三船さんがわかりやすくカッコいい!



明日も元気に生きねばと思える作品
1位 赤ひげ
2位 生きる
3位 酔いどれ天使
4位 静かなる決闘


解説:『赤ひげ』は長いですが、その分、映画として見ごたえのある作品です。黒澤作品て、あっけにとられたまま次の展開に進んでしまい、感動している暇がない作品も多いですが、唯一ちゃんと泣けました。
重たい病を持った人たちが沢山登場するので、共感しやすい人は、観ていてちょっと辛いかもしれませんが、救いのないお話ではないので、若かりし頃の加山雄三を中心とした青春映画としても楽しめると思います。
なんやかんやあったけど、最終的には若大将のさわやかな笑顔で締める。なるほど、ここまでが加山キャプテンコースか!やられたぜ!と、膝を打ってください(笑)


『生きる』については、まず言いたい。テレビなどで黒澤特集やるとき、みんな三船さんの話ばっかりするでしょう?実際に30本観ると、もっと志村さんの話もしませんか?って思う。三船さんと同じくらいの頻度で志村喬さん登場してるし、なんなら志村さんの方がメインで、志村さんの方がカッコいい役のときすらあるのに!と。あの『7人の侍』も、三船さんの方はお茶目な役で、知恵のある年長のリーダーを志村さんが演じてますし。
三船さんが語られるのはもちろん理解できますが、同じくらい志村さんも話題にあがらないのは不自然じゃないかと個人的には思います。
で、『生きる』ですが、志村さんが主役です。役所の市民課長をミイラのように勤めながら、なんとなく生きていたが、胃癌をきっかけに生まれ変わったかのように熱意を持つ男の話。他の黒澤作品に登場する志村さんと比べて、なんとも不器用な男で、口も達者ではないので、より言葉以外の演技が光っています。
ただただ良い話ではなく、お役所の体質を皮肉るところに黒澤イズムを感じます。


『酔いどれ天使』は、三船さんが病を持ったチンピラで、それを心配する医者が志村喬さんという配役。
最後の方はちょっとお説教くさく感じる人もいるかもしれませんが、自分は、病を克服した女の子のように、しっかり生きていこうと思わせてくれる作品でした。

『静かなる決闘』。これは、タイトルに惑わされそうですが、「決闘」といっても誰か特定の人物と戦うわけじゃないんですよね。強いていうなら、医者としての自分と、ひとりの男としての自分がせめぎ合ってる感じ?
梅毒という病の恐ろしさは描いてるけど、子どもに見せられないトラウマシーンは入ってないので、若い人が観ても大丈夫です。
そして、忘れちゃいけないのが助手を演じる千石規子さん。すごく良い味出してる名脇役ですね。彼女に感情移入しながら観る人も、実は結構いるのかも。千石さんは、黒澤映画にもっとも多く出演した女優だそうです。



サスペンス好きに贈る作品4選
 野良犬
 羅生門
 悪い奴ほどよく眠る
 天国と地獄


解説:『野良犬』は、満員のバスの中で拳銃を盗まれてしまった刑事の話。自分のミスによって、銃が悪用されることを恐れて、気が気じゃありません。『7人の侍』で、シュッとしたハンサム侍を演じた木村功さんが出ますが、調べるまで同一人物と気付きませんでした。俳優さんすごいね。

『羅生門』。海外でも評価の高い作品ですね。芥川龍之介のを読んだときは、なんともいえない薄気味悪さだけが残った記憶がありますが、この映画のラストは、黒澤アレンジでしょうか?もう少し人を信じてみようと思わせてくれるような結びになってました。

『悪い奴ほどよく眠る』。こちらも見ごたえあるサスペンスです。気持ちのいい終わり方ではないにしろ、サスペンスとしてはむしろ素晴らしいラストだと思います。
前期の作品は、「黒澤明という人は、人間というものを心のどこかで信じている人なんだな」と感じさせますが、後期になると、やや人間に絶望しつつある?その片鱗が見え隠れします。ちょうどこの作品あたりからそれが顕著になってる気がします。

『天国と地獄』。大変おこがましい発想ですが、趣味で小説書いてる身としては、よくこんな設定思いつくなぁと感心させられてしまいます。設定思いついた時点で勝ちやないかと。(何に勝利するかはわからんですが)
息子を誘拐したという脅迫電話がかかってきたと思ったら、さらわれたのは自分の息子ではなく、雇っている運転手の息子だった。身代金は莫大な金額。しかし、今まさにビジネスの方でも莫大なお金を必要としており、それを用意できなければ自分の立場が脅かされるという大ピンチに追い込まれていた。さて、どうする?という話。
息子の命であれば、迷うことなく仕事の方を一旦諦めるという発想になるかもしれませんが、運転手の息子というのがミソですよね。見殺しにはしたくないけど、お金を渡してしまったら自分の立場が危うい。ハラハラします。
サスペンス好きな方は、4作のうちどれを選んでも楽しめると思ったのでランキングにしませんでした。



女性にこそオススメしたい作品(ヒロインと呼べる人がはっきりと存在する話)
1位 わが青春に悔いなし
2位 素晴らしき日曜日
3位 一番美しく
4位 隠し砦の三悪人


解説:『わが青春に悔いなし』も、タイトルに惑わされますね。ものすごく男向けっぽいタイトルですが、物語は一貫してひとりの女性の生き様を描いてます。
主演は大女優 原節子。昔の女優だからとあなどるなかれ。外人さんのように目鼻立ちがくっきりした美人さんです。
そういったビジュアル面でも楽しめますが、彼女が愛した男性のために人生を捧げる様は、本当にいろんな女性にぜひとも見てほしい!
優雅な暮らしをするおてんばなお嬢さんが、戦争に翻弄されてたくましくなっていく姿は、洋画の『風とともに去りぬ』に通じるものがありました。
ただ、あちらは拳を握って立ち上がり、強く生きることを神に誓うシーンで終わりましたが、こちらは、その後の姿も描かれています。後半、日本特有のジメッとした展開もあり、見ていて辛い場面もありますが、恋愛が信仰に変化していく様はすさまじいものがあります。
そして、途中で泥だらけで誰だかわからないくらいになっていた原節子は、最後には再び美しく気高い原節子へと復活を遂げます。さすが原節子!原節子はそうでなくては!
親の敷いたレールを歩むことに一度でも疑問を感じたことがある女の子は感動するお話だと思います。

全国の舅・姑に「理想のお嫁さんてどんな感じですか?」とアンケートをとり、その結果をかき集めて煮詰めて練って固めると原節子になります。冗談です(笑)
でも、それくらい理想の嫁のイメージを刻みつけています。


『素晴らしき日曜日』。カップルが主役だし、タイトルも平和だし、何事もおこらないんでしょ?と思われそうですが、現代のカップルとは違いますのでね。そこがポイントです。
戦後間もない若者は、みじめな思いを沢山したんだろうなと想像できました。しかし、同時に、夢を抱き力を合わせて立ち上がった夫婦が沢山いたからこそ、戦後日本は目覚ましいほどの発展をとげたんだと思わされました。
人から惨めな扱いを受けたとしても、いや、受けたからこそ、自分たちは人にそんな思いはさせないし、2人でお店を開いたなら、より豊かな気持ちになれるようなサービスを提供しようと誓う。なーんて爽やかなんでしょう!
というわけで、恋人同士で初めて観る映画、あるいはこれから2人で力を合わせて生きていこうという新婚さんにもおすすめの作品です。

『一番美しく』。こちらもパッケージや簡単な解説文だけでは誤解を招きそうなので触れておきます。
舞台が戦争中であること、女子ばかり出てくることから、恐ろしい米兵や上官を連想してしまいそうですが、このお話はそこにスポット当ててません。出てくる男性は、上官から小遣いさん(用務員さん)まで、みんな面倒見が良くて優しい人ばかりなので、そこはご安心ください。邦画好きの方には伝わると思いますが『あゝ野麦峠』みたいな悲惨なことは起こりません(苦笑)
むしろ、こんな昔に作られた作品で、女性のリーダーにスポットが当てられていることに驚きました。
周りからいつも、やりたくもないのに班長・組長・部長を押し付けられてきたしっかり者の女の子は、「うわぁ、わかるー!女の集団束ねるのって苦労するよね〜」って、励まされるんじゃないでしょうか。
管理職の女性の皆さんにもおすすめします。

こぼれ話をご紹介しますと、主演の矢口陽子さんは、のちに黒澤監督の奥様になっています。
残念なのは、最後の最後、陽子さん演じるヒロインが「強いばかりで心配していたが、あの子は優しい子になった」的なことを言われてるのですが、どこがその「優しい子になった」描写だったのかが私にはよくわからなかったので、3位としました。


ここでいきなり『隠し砦の三悪人』が出てきて意外かもしれません。ですが、みんな大好き〝美しいお姫様〟が出てくることには触れておかねばなりません。
国が危機を迎えて、自分の命すら危うい状態にある秋月の姫役を演じたのが、当時大学生だった上原美佐さん。
突然、黒澤作品のヒロインに大抜擢されました。素人だった女の子がいきなりスターになったわけですが、その必死さが秋月のお姫様の境遇とピッタリと合致して、もう他の人では考えられないくらいにハマってます。
立ち回り方などは、黒澤監督本人が動いて、その場で真似させるという演技指導を行なったそうで、あの時代っぽい身のこなしをしています。


ちなみに番外編として、『7人の侍』と『姿三四郎』を挙げさせてください。黒澤映画は30本もありますが、若い男女の恋の始まりが描かれているのは『7人の侍』と『姿三四郎』だけです。
そういう意味では、戦いがメインの作品だとしても、こちらの2作は女性も楽しめる作品なのかな?と。
まぁ・・・お気づきかとは思いますが、なにぶん男寄りの感性を持つ私がそう言ってるだけなので、この2作を女子が観るかはご本人の選択にお任せしたいと思います(^_^;)  


オマケの漫画
「黒澤映画を観たことない人にも姿三四郎の可愛らしさを伝えてみたいと思います」

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