【動画原稿】三幕構成で紐解く!「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語」《前編》
こんにちは!
新人Vtuberの万華鏡かのんです。
私は普段、勤め人として日々シナリオを制作しており、読者わかんね~~!!って言いながらキーボードを叩いたりクライアントとお喋りしながら頑張っています。
Re:AERの公式Vtuber、モノカキ・アエルちゃんと近しい業界にいるのではないでしょうか(畑は違いますが、maybe)。
そんな中で一時の癒しとして、映画を観たりアニメを観たり、小説を読んだりしているのですが、
職業病といいますか、そんな中にもギミックが果たす役割やシナリオ上の位置づけが気になってしまったり、「ああ、これはここを楽しむ物語なんだな!」というところからお話について思索にふけったりしてしまいます。
いやですね。もっと頭を空っぽにしてCORONAとピザとピクルスをたしなみながら「デスペラード」とか「茄子 アンダルシアの夏」とかを観たいものです(茄子は表情づくりが最高なのでぜひ)。
とまあ、話しておりますが、今回取り上げたのは「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語」。
こちらの動画の原稿を、文字に起こしたものになります。
嫌ですね、なんて言ってしまいましたが、別にこういう楽しみ方もアリっちゃアリで、そして何より物書きにとって作品に親しみ、分析することは「勉強」にほかなりません。
そうして得たものを、ただ肥やしにしてしまってはもったいない。パッケージにして手に取りやすくしたい(私自身もしかり)。
そう思って、文字媒体のアーカイブとして残すことにしました。
本編とこちらを見比べながらご覧になると、より一層お楽しみいただけるかと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします!
0.はじめに
こんにちは!
万華鏡かのんです。
この動画では、映画や小説、漫画などを、ストーリーの書き方本などを参考にしながら、主に構造の面から分析していきます。
今回取り上げるのは、「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語」。
記録的な興行収入をあげ、アニメの歴史に名を遺すこの名作を、「お話の作り方」の視点から前後編に分けて読み解いていきたいと思います。
前編では、このお話の面白さの構造について、クライマックスからたどる形で考えていきます。
そして後編のほうは、今回の内容を踏まえつつ、このお話が巧妙に「クライマックスを隠す構造」になっている、ということについて考えていきますので、そちらもお楽しみに!
と、大きなことを言っていますが、私も勉強中の身ですので、至らぬ点などありましてもご容赦いただけますと幸いです。
また今回は、ネタバレで面白さが減ってしまう題材です。
新鮮な気持ちで見られなくなる可能性がありますので、本編のネタバレを避けたい場合は、一回見てからこの動画に戻ってきていただければと思います。
1.まえせつ ~納得の爆弾~
(少し間を置く)そういえば、これ2013年上映なんですよね。
なんと当時生まれた子供が、小学校に上がるくらいの時間がたっています……。
とはいえ、ここで長々とあらすじを語ることはしません。
大まかなあらすじはウィキペディアでも確認できますので、忘れちゃった方はそちらをご確認くださいね。
思い出していただきたいのは、あのいちばんショックだったどんでん返し。
まどかがほむらを救いに来てハッピーエンド……と思いきや、ほむらのほうから逆に「この時を、ずっと待ってた」とまどかの手をつかむシーンです。
見た当時、私は正直度肝を抜かれました。
ほかの皆さまもきっとそうだったことでしょう。
しかし思い出してみてください、驚くと同時に、妙な納得感もありませんでしたか?
これまでの物語を振り返るまでもなく、ほむらがまどかの手を乱暴に掴んだ瞬間「それを待ってたんだ!」と思いませんでしたか?
あれは別に劇場版3部作やテレビシリーズの記憶が、一瞬で全部つながったというわけではありません。
これ一本の中で過去の記憶を巧みに刺激し、この展開を納得できるよう仕向けているトリックがあります。
私たちが先の読めない展開に振り回されている間、私たちの頭の中では、まるで爆弾をこっそり仕掛けるように、納得する準備が進められてでいたんです……!
この納得の爆弾を解体していくにあたって、小難しい話をしていく必要がありますが……その前にまずは「なぜ納得してしまったか」の、直接の原因。
導火線が何かから考えてみましょう。
2.なぜ納得してしまったか? ~導火線を探せ~
納得とは疑問の解消です。問題に答えが見つかれば、誰だって面白いですね。
つまりこの疑問が、先ほど話した導火線になります。
では私たちがこのクライマックスにおいて、与えられていた疑問は何でしょうか。
いちばん大きな疑問は、直前にほむらが言っていた意味深なセリフ。
シルエットの中から魔法少女のほむらが姿を現し、本心を取り戻したことがわかるところですね。
しかしぱっと開放されるような映像とは裏腹に、セリフのほうは「どんな罪を背負っても」とか、「どんな姿になり果てたとしても」とか、救われる直前のものとしてはちょっとふさわしくありません。
意味がわからない。だから私たちの中に疑問が生じます。
そうですね。このセリフこそが、導火線です。
そしてこの後すぐ、ほむらの行動によってこの疑問は解消され、「ああ、これが答えだったか!」と私たちは納得します。
つまりこのセリフは、ほむらが悪魔になることを決めた大事なセリフです。
物語を左右する重要な決断です。
そんなものがいきなり出てきたら、普通ならば納得できません。
しかし私たちは、なぜか深々と納得させられ、感動してしまいました。
ということはですよ。
この決断は、別に私たちを驚かせるためだけに、脈絡もなく差し込まれたわけではなく、
私たちが気づかないうちに、ここへたどり着く過程が描かれていたということです。
ということで、次はこの決断にたどり着く過程をさかのぼり、私たちの納得の理由を確かめていきましょう。
それに役立つのが、三幕構成というお話の考え方。
シド・フィールドという有名な脚本家さんが「映画の共通項」として発見・理論化したもので、今では多くの映画脚本がこれにのっとって作られています。
さあ、お待たせいたしました!
いよいよペンチとニッパーを持って、爆弾解体を始めていきましょう!
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