ぼくらのさよなら[林 晴々]【1~2巻】おとなのためのマンガレビュー
構えていないときに。何気なく読みたい。疲れているときにも優しい。
タイトル:ぼくらのさよなら
著者:林 晴々(はやし はるばる)
出版:集英社 オフィスユーコミックス
既刊:1~2巻(2020年3月現在)
装丁:馬場 美由紀 colorée(コロレ)
色々な別れと出会いが詰まったオムニバス。人生なんて、出会いと別れで出来ているわけだから、つまり、みんなの人生がみっちり詰まってる。
のに、くどくない。押しつけがましさが一切ない。
●読もうか迷っている人へ
オムニバス好き、裏設定好きの人には文句なくおすすめ。1~2巻の登場人物の相関を図にしてみたら、凄いことになりました。話によって、軽く50年くらい時代を前後するので、人物の奥行きが凄い。ストーリーを楽しんだ後に、「この人たちはどこで知り合ったんだっけ?」と、サブストーリーを追いかけ直す楽しみがあります。行間を読むのが好きな人はハマるのでは。
●このマンガのここが好き♡
優しくて強くて、危うい。
登場人物も優しければ、それを描く視点も優しい。
様々な登場人物を結び付けるキーパーソンである十和(とわ)という女性は、登場した時点で他界しているのだけれど、残された人たちも優しいし、十和自身も優しい。
でも、最初から出来上がっているわけじゃなくて、みんな自分の弱さと向き合って、昨日よりも強くあろうとして、結果優しくなって行く。優しさは強さなんだなあと実感します。
特に第1話、『ぼくのラブレター』に出てくる、数子先輩が好きです。「倒れたっていいんだって また立ち上がればいいんだって 言ってあげればよかった…」と、亡くなったお父さんにかける言葉を見つけたシーン。大切な人が亡くなった後って、もう自問自答しかできない。
どうすれば良かったのか、どう思っていたのかを本人に確認できないから、自分で答えを出すしかない。数子先輩は、生前のお父さんにかけたかった言葉を見つけたこの瞬間に、ひとつお別れが出来たんだろうなと思います。
もう、1巻の表紙がそれだけで物語っているけれど、1冊丸ごと優しさ成分で出来ているので、さらっと読んだ方が心にすっと入ってきます。
1巻の方がよりエモーショナル。2巻は、それぞれの相関を追いながら気持ちの変化を読んで行くのが楽しい。
今は亡き十和と結婚した若村(ジャクソン)と、その中学時代の同級生である希子(のりこ)との恋愛模様にも、ゆるーく注目しています。
●読むときは、ここに注意!
構えちゃうともったいないです。実際、和食のフルコースくらいの食べ応え(読み応え)があるけれど、うどん1杯食べるくらいの気軽さで臨んで欲しい。どうやったって素直になれないときに読むと良さを味わえないので、そんなときは他の1冊を。
●こんな気分のときにどうぞ
普通のときに。構えていないときに。特に何事もなかった日に。ちょっと退屈な日に。何も考えていないときに。でも、素直な気持ちが残っているときに。
●おすすめしないケース
自分にとって大切な人とのお別れをまだ一度も経験していない人にとっては、ドラマが足りない感じがするかもしれません。さらりとした絵柄で奥行きのある話なので、絵やセリフで全てを伝え切って欲しい人にはおすすめしません。
●電子で読む場合
見開きがなく、コマ割も電子書籍で読みやすい配置なので、ストレスなく読めます。※横ヨミで検証
●このマンガが好きな人はきっとこれも好き
登場人物が交差し合うオムニバスという意味では、『潔く柔く[いくえみ 綾]』に通じます。地方都市を舞台に淡々と人生模様を描くという点では、『雑草たちよ 大志を抱け[池辺 葵]』が好きな人も好きかも。
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