たいようのいえ[タアモ]【13巻完結】おとなのためのマンガレビュー
心がすさんだときや、ちょっとお疲れのときに。じんわり、良い。
キュンとほっこりの両立。
タイトル:たいようのいえ
著者:タアモ
出版:講談社 KC デザート
既刊:13巻完結(2018年8月現在)
装丁:名和田耕平デザイン事務所
中学生男子みたいな女子高生、17歳の真魚(まお)と、お母さんみたいな社会人男子、24歳の基(ひろ)を中心とした、家族にまつわるお話。
家族って、一番近くにいる他人。だから、理解する努力も理解される努力も、理解されない覚悟も必要なんだなと思う。そういう、当たり前だけど普段は見過ごしがちなことを、物語というオブラートに包んでじわっと教えてくれるマンガです。
●読もうか迷っている人へ
絵のテイストも最後まで変わらないし、テーマも一貫してるし、真魚の可愛さっちゅーかいじらしさも1巻で全開なので、1巻を読んだ時点で「お!」と思った人は、最後まで読んで損はないかと。
●このマンガのここが好き♡
真魚も基もそれぞれに家庭の事情があり、「家族」に飢えている。そんな二人が同居スタートという設定からして、もう続きが気になる。
・家族の問題にどう向き合っていくか(しみじみ)
・真魚の秘密の創作(どきどき)
・いろいろな三角関係(キュン)
といった要素が、二人のほっこりした日常に絡まり合って、絶妙なバランスで進んでいきます。
話の展開そのものがムダがなくて面白いんですが、何よりも一つひとつのエピソードが丁寧に描かれているので、私なんぞは、1巻を読み終えた時点で真魚ちゃんにかなりの思い入れが…。
急がず、かと言ってじれったくもなく、登場人物それぞれの気持ちの動きが目の前で展開されていき、ついついみんなに感情移入。「この人も悪くないのにー。けど、その嘘ついちゃって良いのー!?」と、素直に没頭できます。
24歳と17歳のピュアな恋愛って、描き方を間違えると陶酔入った感じで気持ち悪くなりそうなところを、全くそんなことなくまとめているのがスゴイ。
●読むときは、ここに注意!
じわっと良い話にもかかわらず、1巻から展開がなかなか早い。止まらないかもしれない。ので、13巻まとめ読みの時間があるときに手に取ることをおすすめします。
●こんな気分のときにどうぞ
じんわりもキュンもどちらも欲しいときに。
日常のモヤモヤが増えてきて、なんだか自分が嫌なヤツに思えてきたときに読むと、素直な気持ちになったり、周りに生かしてもらっている自分の今もそう悪くないかもしれないって気持ちになったり、するかもしれないししないかもしれない。
●おすすめしないケース
家族に触れてこなかった時間が長いせいか、真魚は自分に向けられる好意に対して相当鈍いです。真魚の親友のちーちゃんも作中で真魚に対して「ひどい奴だったよ」と断言していますが、鈍い主人公にイラっとする人には、おすすめしません。
●電子で読む場合
前半は、見開きを使ったページがほぼないので、電子書籍でも読みやすい。クライマックスに向かって行くにつれ、見開きもちょいちょい出てくるので、後半は微妙に読みづらいコマもあります。それでも、1巻に1~2シーン程度だったはず。※横ヨミで検証
●このマンガが好きな人はきっとこれも好き
『となりの怪物くん[ろびこ]』が好きな人は、好きなんじゃないかな。どうかな。食事を重ねていくなかで家族になる感じは、『にがくてあまい[小林 ユミヲ]』にも通じるものが…。