【まんがたりメディア】フランスの出版社のマンガ事情を聞いてきた!
※まんがたりメディアは「忙しいマンガ家のために、マンガ家の"はてな?"を取材してお届けするマンガ家向けのメディア」です。
今回、フランスの出版社Ki-oon社の方にお話を聞いてきました!
フランスで受け入れられやすいジャンルってみなさん考えたことありますか?
・王道の少年漫画(ドラゴンボール・ワンピース・僕のヒーローアカデミア)
・ファンタジー ※特にダークファンタジー(ポケモン・進撃の巨人)
・スリルあふれるマンガ (王様ゲーム、ダーウィンズゲーム)
とのこと!
週刊誌ではなく単行本からスタートします。日本で制作されている漫画と同様、「1話から読んでね!」という点を大事にしながら、「一巻分でじっくり惹きつける」作品を目指し作っています。
そんなフランスと日本のマンガ市場との違いを紹介します。ぜひご覧ください〜!
背景
みなさん、海外の出版事情は気になりませんか?今や、中国や韓国のマンガ業界はすごく盛り上がってきています!
そんななか、ヨーロッパってあんまり知らないかな〜と思っていた矢先に、以下の記事を見て、代表の方の連絡先が載っていたので、「お話聞いてみたいな〜」とおもって連絡してみました。
皆さんだったらどんなメールを送りますか?私はこんなメールを送ってみて、「お返事返ってきたら良いなぁ」と、期待半分諦め半分くらいでメールしてみました。
キム 様
お世話になっております。まんがたり代表の前田でございます。
https://ichi-up.net/2016/064
の記事を拝見してご連絡しております。
ただいま、私はマンガ家芸能プロダクションとして起業しており、
複数名のマンガ家と仕事をしています。
フランスでの出版に強く興味があり、ご連絡差し上げました。
一度、お話をお聞きすることは可能でしょうか?
よろしくお願い致します。
どうなるかなぁ?一週間以内に返事こなかったら諦めよう、と思っていたら、なんとなんと!当日中にご返信くださいました!
フランスの出版社「Ki-oon」在日オフィス代表の方。キムさん(女性)。フランスの出版社について色々お話いただいたので、今日は聞いたお話を紹介していきます。
フランスは、ヨーロッパの中でもマンガが強い!
西ヨーロッパ(特にフランス、イタリア、ドイツ、スペインなど)では、マンガというのは広く流通しています。
そのなかで、あえてジャンルを分けると、少年誌、青年誌は強い。
少女漫画は比較的に弱めのようです(これは、現時点では少女漫画はマーケットがまだ小さいとのこと)
その中でも、特にフランスは、ヨーロッパでも多くのマンガが見られている国。フランスは『バンド・デシネ』という、芸術作品のひとつのように絵が綺麗なマンガ作品が主流の一つとしてあります。
そのフランスの出版社、Ki-oonさんにお話を聞きに行きました!
Ki-oonはフランスの中でどんな会社?
そもそもフランスは、非常に出版部数が多いのです!
そのフランスの中で、Ki-oon社は、フランスマンガ市場の4位を締めている。主に、日本のマンガのライセンスを買って、フランス語に翻訳して出しています。
フランスの出版事情の主流としては
・日本のレーベルの本を多く出版している
・左開きのままで発行している
・擬音もそのままで、小さくフランス語をプラスで載せているのみ。
という、日本のマンガ家に非常に嬉しい現状。Ki-oon社も、その出版社のひとつです。
ただ、会社としては、日本ですでに出版されているマンガの権利を買うだけだときついので、オリジナル作家(Ki-oonに所属してマンガを描いてもらう作家さん)も増やしています。
具体的には、15年前から自社レーベルオリジナルの作家さんも!オリジナルの中で、筒井哲也先生が一番有名です。
Ki-oonの編集・出版事情
Ki-oon社の社長が二人います。一人(Ahmed AGNE=アメッド・アニュさん)は「漫画部門の編集長」を、もう一人(Cécile Pournin=セシル・プルナンさん)は「書籍部門の編集長」を務めています。
そして、オリジナル作品の制作に携わっている編集者さんの一人が、今回の取材を受けてくださったキムさんでもあります。
Ki-oon社では、自社のオリジナルの作品がとても大事だと思ってます。
ただ、漫画のライセンスを買うより、オリジナル作品を作成するのに、お金と時間とエネルギーが必要なので、期待できる人だけと契約しているのが現状です。その分、予算を惜しまず各作品を大幅に宣伝してくれています!!
また、フランスでは連載雑誌が少なく、主にバンド・デシネが主流です。
ひと昔前には雑誌連載の文化も盛んでしたが、現在は、単行本の描き下ろしが主流となっています。
(前田は、マンガ雑誌文化は日本を除くと、台湾くらいしかやっているところを知らなかったです!知ってましたか?)
週刊誌での発表はありません。しかし、フランスの漫画読者が日本の制作ペースに慣れているので、最初は日本の刊行ペースと同じように少なくとも三ヶ月に一回単行本を出すために、二、三巻分の原稿が貯まることを待って出版作業をします。
そのあとに販売するので、初期投資コストがすごいかかるのです。
ki-oonと日本
Ki-oon社は2015年から日本オフィスを作りました。
それは、自社レーベルから発信するマンガの点数を増やしたいからとなります。そのためには、日本人の方を直接お話、お誘いしたく、それならば、日本に出張所を作ったほうが良いと思って日本に来ています。
キムさんは新人作家を見つけることがメインの仕事となります。マンガ企画を作り、フランス語版を出すことがお仕事です。
また、フランスで成功したら、そのライセンスを販売し、英語や日本語など、他言語版も他の出版社さんから出してもらうことも目標としています。
Ki-oonで連載マンガ企画の募集をどうしているのか?
5年前からフランス語圏限定でマンガ大会をしていて、優勝した人にこちらの描き下ろしの単行本を一緒に作っていくことになります。つまり、フランス人作家のマンガも出しています。
現状、フランスでオリジナル漫画作品を出している出版社はかなり少ないです。
なぜなら、契約したら、単行本形式なので途中で辞められないです。これは、読み切りでのテスト期間もなく、また数話だけで連載終了とすることも難しいからです。
つまり、作家とは長期戦をしていく形となります。
ということで、会社はかなり勇気を持って『投資』することが、金額的に求められます。
まだまだこれから大きくしないといけないフェーズなので、「きちんと連載していくことが今後もできそうな人」と、キチンと話し合った上で、契約していく必要があるのです。
何をもって契約するかどうかを判断するのか?
まずは、作家を知ることからしています。
・自分が描きたいことを話してもらう
・それがフランスの市場に合うかどうかを判断する
出版社から、テーマをお渡ししたり、ましてや、無理やり何かを描かせるということは一切ありません。
逆に、なんならこちらから指示することも、ないかたちで、これまで勧めてきました。出版社は、原作者ではないからです。
なので、ストーリーがしっかりと描ける人とのみ組む(作画担当と原作担当のコンビからの企画もありますが)ことを中心に進めています。過去の実績からも、この形態の方が長期戦に挑むことができると考えているから、とのことです。
フランスで受け入れられやすいジャンル・難しいジャンル
・自分の絵が、しっかりしている人(キャラクターを描ける)
・背景を描ける人(画力がきちんとある)
・長編物語の原作を含む企画がある(原作を作れる or 原作者と組んでいる)
となります。
その上で、フランスで受け入れられやすいジャンルかどうか?をみています。受け入れられやすいのは
・王道の少年漫画(ドラゴンボール・ワンピース・僕のヒーローアカデミア)
・ファンタジー ※特にダークファンタジー(ポケモン・進撃の巨人)
・スリルあふれるマンガ (王様ゲーム、ダーウィンズゲーム)
などが、一例としてある、とのこと。逆に、受け入れられやすいかどうかというと、「前提となる情報」が必要なジャンルは受けにくい、ということがあるのです。例えば、
・ギャグは通じにくい。
→特にシュールなギャグなど、その文脈を理解できる『前提』がないと、笑うためのズレを理解できないから。
・萌えも通じにくい
→萌えというのも、時間をかけて醸成された日本独特の文化なので、多くの人には理解してもらいきれていない
・日本や中国の歴史の話も難しい
→歴史の解釈が国によって違うと「自分が知っている話と違う!」となってしまい、多くの人には理解してもらいにくい
※ただ、一般的にフランスでも親近感がわく時代や舞台であれば人気はある。たとえば「チェーザレ」(イタリアのルネッサンス)や「碧いホルスの瞳」(古代エジプト)はヒット作品とのこと
・エッセイ漫画も同じで難しい
→前提の解釈が必要になってしまうテーマが多い
当然、コアなマンガ好きがフランスにもいます。上記の文化の違いすらも楽しみ、ココロから理解できる人もいます(「私もギャグやエッセイ漫画は好きです」とキムさんはおっしゃっていました)。
ただ、今の時点でそこにチャレンジするのはまだまだ難しく、多くの人に読んでもらえるマンガジャンルのほうが優先されるとのこと。
フランスは、マンガの歴史が長く、色々なものを出した状況でもそういう現状みたいです。
Ki-oon社は何をしてくれるのか?
マーケティングの力を、会社として、すごく力をかけて、宣伝してくれます。特に新人だからこそお金を描けている!というお話でした。
当然、売れる前というか、販売前から、著者には負担をかけないようにするために、印税を払っています(なので、一緒に長い期間できる約束ができる人とだけ、契約しています)
「ヨーロッパでエッセイ漫画は難しい」の詳細
ヨーロッパ全体としては、現地のネタを熟知したマンガじゃないと、共感されないなぁと感じています。
例えば、じゃんぽ〜る西さんはフランスの題材で、フランスに住んで、フランス人の方と結婚して、それはフランスでも売れたという実績があります。
逆に、それ以外はフランスについてのエッセイマンガはできなかった。なかなかうまくいく事例ができず、きびしかったです。
上述の通り、エッセイマンガは、みんなが常識に思っている部分をネタにしているので、難しい部分がある。それはフィクションではないからかも知れません。
ここは国による傾向はあると思う。たとえば、韓国は勉強になりそうなマンガは受けているみたいだと思っています。
とはいいつつ、お願いしたいことは「フランス人を意識して描いてほしくない。思い切り、描いてもらったものがフランスに合う場合に、一緒にできたらそれが一番いい」ということとのことです。
持ち込みって行っていいの??
持ち込みは受け付けいつでもしているみたいです!
ご要望が多かったら、まんがたり主催で、フランス出版事情説明会のイベントを一緒にするのもありと伺っておりますので、希望があれば言ってください〜!
作家さん向けにフランスの現状をお知らせすることはOK
Ki-oonの紹介もちょっとさせてもらえるなら笑
とお話してもらっています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
フランスで勝負するなら、「じっくりと一作品を描きながら単行本で勝負できるマンガを描いているマンガ家さん」というのが自分なりに見えてきました。
・もっとこういうことが聞きたい!
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ご覧頂きありがとうございました〜!
マンガ家さんのきっかけや思考に、役に少しでもたてば幸いです!
参考
Ki-oonのキムさんが、フランス市場について描いた記事たち
同様に、ニコニコオリジナルニュースのために書いたKi-oonとフランスの事情の記事
ありがとうございます! マンガ家のコマッタを解決するために使わせてもらいます! マンガ家に還元!!!