ホメロス『イーリアス』に見るニンジャ真実

ドーモ、ニンジャ研究家アカズカです。
本日のテーマはイーリアスです。
エーリアス(かわいい)ではありません!


1.イーリアスとは?

イーリアスとは何か?
それこそかの著名な詩人ホメロスが記したとされる古の書物で、
トロージャン戦争について語られた叙事詩です。
(ちなみに、イーリアスに世に知られた木馬は登場しません。
『オデッセイ』にはでてくるのですが。基本的な出典は古代ローマ詩人ウェルジリウスの作品です)

ホメロスの名は「囚われ人」の意であるため、
彼こそが名高き「メシウド・ニンジャ」であったとの説もありますが、
個人的にはアッリアノスのごとく、執筆時には、
ニンジャに心酔しその身を捧げたモータルであったのではと考えております。その理由は、この文の末尾に述べたいと思います。

トロージャン戦争は大将アガメムノンに率いられたアカイア人たちが、
小アジア、現在のトルコにあったトロイに対し、
奪われた美貌の姫ヘレンを奪わんとしかけた戦とされています。

しかしあまり知られていない事実ですが、そもそもからして、この戦役は、
ゼウス・ニンジャが増え過ぎた人口を調整するために起こしたイクサであったのです。(その顛末は前日譚である『キュプリア』断片に記録されております)

このように、神の酒にも喩えられる豊潤なエーテルの流れの中、
ニンジャたちの力はまさに神のごとく、
彼らの暴威にモータルたちはあらがうことなど夢にも思わず、
ひたすら彼らの加護を願い、許しを請い、平伏するばかりであったのです。

イーリアスのテーマは、まさにニンジャの暴虐なのです。
とは言えニンジャたちでさえ、
その頂点に君臨するゼウス・ニンジャを畏れております。
そして無敵を誇った彼でさえ、今や呵責なき時の顎の餌食となり、
その名を空しく伝説に留めるに過ぎません。



2.ニンジャたちの痕跡


A. 神々の子ら

アカイア人たちとトロイエ人たちの軍勢には、数限りない英雄たちが参加しており、それぞれ並ぶものなき豪傑揃い。
各々がオリジンストーリーを持っており、
まさにアベンジャーズ対ジャスティスリーグです。

その中でも、アカイア人随一の英雄と言えばアキッレウス。
トロイエ人の明星と言えばヘクトールでしょう。
その双方が、ゼウスの血を引くとされています。
いや、彼らにとどまらず、じつに夥しい数の英雄たちが、
ゼウスの、あるいはアレスやアフロディーテの血を引くとされています。

しかしニンジャが子を成すはずがありません。
すなわち、彼らはゼウス・ニンジャあるいは他ニンジャの
カラテを習い覚え、あるいはすでにクランの一員となっていたものと思われます。
そして数限りない試練をくぐり抜け資格を得た者は、神の一員として、
上天にその座を与えられるのです。
これがカイデンの比喩でなくてなんでしょうか。

ゼウス・ニンジャは始終アキッレウスを特別扱いしていますが、
モータルでありながらすでに名声高き彼のカラテを高く買っていたものと考えられます。



B.「神に見まごう」


また、イーリアスにおいては「神に見まごう」という描写が何度も何度もはてしなく現われてきます。
「なるほど、乙女座のシャカのようなやつなのだな!」と思っていると、
次々に同様の形容を背負った益荒男たちが登場してくるため
最後には一山いくらで買えそうな気がしてくるほどです。

これには、同様の描写をくり返してはならないという
修辞学上の規範が存在しなかったという点に加え、
神代においてはモータルとニンジャの垣根が現在よりも低かったと言うことを示唆しています。

当時はモータル同士の戦といえどカラテで全てを決するものであり、
また様々なリチュアルや神秘的なクエストは、
知らず知らずのうちに人々を神的な存在に近づけていたのでしょう。

銃器の発展がモータルがニンジャに対抗する手段を与えましたが、
同時に両者の隔絶を確固たるものにしてしまったのです。



C.「距離のパトス」


しかしホメロスが執筆した当時でさえ、「現在の男たちではとても持ち上げられない」といった、
(さらに)昔の時代の男たちを神聖視する描写が散見されます。

これはまだ仮説に過ぎませんが、
もしかするとイーリアスとはゼウス・ニンジャが、
カイデンを得るものの減少と当時の門下生たちのふがいなさに呆れ、
プロパガンダあるいは教育的読みものとして、
ホメロスに命じて書かせたものであるのかもしれません。

ニーチェ・ニンジャがいみじくも語ったように、
超人(=ニンジャ)への道程の根幹をなすものは「距離のパトス」。
すなわち、現在のモータル的価値判断に囚われた自分から遠ざかり、
果てしないカラテの道を上り詰めていく情熱なのです。



D. 神々のメンポ


ゼウス・ニンジャはトロイエ勢に肩入れしており、
他の神々がアカイア人たちを助けることを禁じています。

ですが神々は、その姿を様々に隠し、
アカイア勢を助けに現われます。
まさにこれはメンポの一側面とも言えます。
彼らはモータルの姿を借りており、
見た目は朋友のようでも、しかして明らかに違いがあり、
そのような仮初めの姿ではごまかせないのです。

たとえばポセイドン・ニンジャが現われたときには、
杖で体を打ってアカイア人たちに超常の力を与えます。
全身に力をみなぎらせ脚の動きを軽くする。
すなわちエンハンスメント・ジツです。

アカイアの英雄である二人のアイアスは、
「あれは神託を伝える鳥占いのカルカスではない。わたしは立ち去ってゆかれる時の
足や脛の動きで、容易にそれと判ったのだ」と語っています。

モータルの中でも極めてカラテに優れた二人だからどうにか動きが視認できたのであり、
そうでなければポセイドン・ニンジャの動きは、
色つきの風にしか見えなかったことでしょう。




E. ブリッジ真実と古代ローマカラテ

また、繰り返して語られるのが、
「脛当てよきアカイア勢」という形容です。

これほど品質が強調されているのならば、
当時はブレーサーよりも、
脛当ての方が重要視されていたのでしょうか。

原因として考えられるのは、
当時ブリッジ回避が開発されたばかりであったということです。
おそらく新しく投入された技法であるブリッジ回避に対応できないトロイエ勢は、
上体を諦め、狙いやすい脛を集中的に狙ったことでしょう。
そのため、脛を固める必要があった。

もしかすると、アカイア勢の勝因はトロイの木馬などではなく、
ブリッジ回避と脛当てなのかもしれません。

また、トロイエ側の落人としてローマ建国の祖となったアエネアスが、
己の敗因を探り、敵の技術であったブリッジ回避を徹底的に研究し、
ついに古代ローマカラテにおける一技法として確立したとすれば辻褄が合っています。
なんという説得力でしょうか。
わたしは真実への扉を開いてしまったのかもしれません。
いや、間違いない。
これが真実だ。
もう加減する必要なんてない。アッ、はるかによくなってきました!
スゴイ! これはスゴイ!
よくわかっているのです!
「翼ある言葉」とはTwitterの隠喩であり、
「道広きトロイ」とは、ブロードウェイミュージカル化を指しているんだ……!




3.ホメロスの最後


……はげしく興奮し、たいへん失礼いたしました。末尾として、
このような古事記にも比すべき不滅の作品を残した
ホメロスの最後についてのある伝承を記しておきたいと思います。


……
昔から語られるある伝説があった。
神に愛されし詩人ホメロスがどこかで生きている、というものだ。
もちろん真面目にとりあうものなどいない。
酒飲みのほら話に過ぎない。

だがあるところに、ホメロスの心酔者である青年がいた。
彼はこれほど偉大な物語を作り上げた人物への思慕がおさまらなかった。
船酔いに苦しみ、盗賊に身ぐるみ剥がされ、
体中シラミに食われながらも探索の旅を続けた。

彼だって本気で信じていたわけではない。
ただ、もしもホメロスの遺品なり、
あるいは力尽きた場所なりでも見つけ、
彼の不滅の功績を、香油を注いで称えたかったのだ。

ある島のある町へやってきた。
「ホメロスを知らないか?」
いつもの問いだが、意外な答え。
「知ってるとも」

あまりに意外な答えだった。
「あの詩人のホメロスか?」
相手は笑った。
「ただの飲んだくれさ」

森の中に小屋があった。
入っていくと、腐敗臭と、糞便の匂いが鼻をついた。
変色したワラの寝床に、
とてつもなく年老いた老爺が寝ていた。

「あんたがホメロスか?」
反応がない。
耳が聞こえないのだ。
肩を叩く。
目を開けた。
その目は真っ白だ。
彼は耳も聞こえず、目も見えないのだ。

……彼にしてやれることは何もない。
葡萄酒を飲ませてやっても、小さく獣のように唸るばかり。
急にとてつもなく馬鹿馬鹿しくなってきた。
帰ろうとしたとき、老人が何か言った。
よく聞こえない。耳を近づける。
もう一度言った。

「オデッセイ……」
若者は凍りついた。
自分の耳が信じられなかった。
もう一度しぼりだすように言った。
「オデッセイ……!」

老人は静かに続けた。
「ムゥサよ、我に語り給え、
聖なるアポロの祝宴の……」
まるで香の煙のごとく、
声はかすれて消えてゆく。

その唇に、一匹の蝶が止まった。
オレンジ色の蝶は、そのか細い口吻をのばし、
末期の詩魂を吸い尽くすと、
木漏れ日明るい森の中へ飛び去った。
……

この蝶こそが、アポロチョウであると言われております。
おそらくホメロスをアポロ・ニンジャが迎えに来たのでしょう。





イーリアスの引用に関しては、
松平千秋訳『イリアス』岩波文庫を利用させていただきました。 


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