【忍殺二次】ニンジャマスターKAI サツバツマキビシデュエル!!! 登場!オーロラの美少女デュエリスト!
朝。
広大にして壮麗なるチバ邸。
フエー。
「ふぁっ……」
電子笙が鳴るが早いか、ナイトキャップをかぶったチバが目を覚ます。
睡眠時間は七時間ピッタリ。
健康と成長に留意しつつ、タイムイズマネーなのだ!
彼が目を開けるのとほぼ同時に、身だしなみ係、歯磨き係、食事係のコーカソイド美女メイドたちが列をなして入ってくる。
王者たることを運命づけられた彼に無駄な時間など一秒も存在しない!
一部の隙もなく身だしなみを整えると、軍配型ARデバイスを手に取る。
そして、
「ムハハハハハ! 鬼奏!」
いつになく上機嫌に鬼奏を呼んだ。
今日はアラスカデュエルセンターから、朝一でカードが届く予定なのだ!
「あのMAXIIISSRレアが届けば今度こそカイのやつを……」
にやりと笑うチバ。
しかし、
「……む?」
忠実なボディーガードである鬼奏が現れない。
いつもならば声をかけると同時に出現するはずなのだが。
「……どうした?」
首を傾げ、廊下に出る。
「おい、鬼奏……?」
チバの顔に、いっしゅん年相応の少年らしい不安げな表情がよぎる。
だが、それもつかの間、
「そこかっ!」
気配を察し、懐から取り出した扇子を投げつけると、天井が割れ、
「ングァーッ!」
鬼奏が落下してきた!
全身を縛り上げられ、猿ぐつわまでかまされている!
「どうした鬼奏! お前ともあろうものが……!?」
急いで猿ぐつわをほどく。
「ブハッ……!」
鬼奏が大きく息をつく。
「いったい何があったのだ!?」
「も、申し訳ありません、坊ちゃん、実は……」
うなだれながら口を開く鬼奏。
耳を傾けるチバの顔色がみるみる青ざめ、
「な、な、なんだとぉ~!!」
少年は動揺のあまり、思わず軍配を叩き折った!
第XX話 登場!オーロラの美少女デュエリスト!
いっぽうカードショップタキ。
『サツバツ!』
『グワーッ!』
「やったぜ!」
今日もカイはナラクと共にデュエルに勝利していた。
「さすがカイ! ヤッタネ!」
ハイタッチするコトブキ。
「ああ、このまま日本一の座もいただきだぜ!」
意気上がるカイ。
「さあ、次の相手は……」
ふたたび重箱を手に取った時、
「おほほ、おほほほほほほほ!」
鈴を転がすような笑い声が響き渡った。
その声はどこか舌ったらずな、まだあどけない少女のものだ。
SHUUUUD! SHUUUUUD!
そしてとどろく足音!
「な、なんだ?」
「おほほほほほ!」
現れたのは見上げるような太っちょの大男!
そして声の主は、その肩にちょこんと座った金髪の少女!
白のアストラハン帽に暑そうなファー付きのコートを身に着け、おそらくカイたちより2~3才年下であろう。
「あなたさまは日本一を目指されているんですの?」
幼いながら不敵に笑った少女の肌は抜けるように白く、目はどこまでも深い海の青。
可憐な中に気品を感じさせる、見たことのないほどの美少女であった。
「わ、わ、かわいい……!」
思わず目がハートになるコミタ。
少女は大男から飛び降りると、
「わたくし、オリガ・ユリオーナと申します。あなた様に勝負をお申し込みしますの!」
胸を張り、堂々と宣戦布告した。
「へ~」
カイはニヤッと笑った。まだ小さな女の子だ。おそらくどこかで自分のうわさを聞いた初心者に違いない。
すでに有名人であるカイには身の程知らずの挑戦者が絶えないのだ!
「いいぜ、デュエルのやり方を教えてやるぜ!」
少年と少女は、お互いお辞儀をし、データ重箱を開く。
カイの重箱は闘志に燃える赤黒!
それに対しオリガの重箱は、新雪の原野のごとき純白!
「「サツバツ!デュエル!ニンジャオン!!」」
パワリオワー!
「「「ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーッ!」」」
歓声を上げる少年少女たち。
伸びあがるカイの事務所タワー。
だが一方、少女の重箱から展開されるのは、不可思議な玉ねぎめいた極彩色丸屋根の建物だ!
「何あれ?」
「あんなの見たことない……!?」
どよめきがギャラリーに広がる。
「参りなさい、アイアングリルぅ!」
ZOOM!
早速少女がニンジャを繰り出す。
『ま~かせて!』
涎をたらし、どすどすと巨体を揺らし走り寄る鋼鉄マスクのニンジャ!
少女の手さばきは流麗。素早い攻撃だ!
だが、
「やれやれ……!」
カイは余裕で肩をすくめる。
一瞥してそのニンジャが三下であることを見抜いた。
度重なる強敵たちとの戦いで鍛えあげられているのだ!
「一気に決めるぜ! 来いっ、俺の切り札、ナラクッ!」
割れ裂ける大地、そそり立つ漆黒のオベリスク!
ZGOOOOOOOOOOOOOOM!
空間を歪め現れたのは、殺意を全身から放つ赤黒のナラク・ニンジャ!
「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーッ!」」」」
幾度となく彼の勝利をもたらしてきたキーニンジャの召喚にギャラリーが沸き立つ!
修行の末、すでにこれほど短時間でナラクを召喚できるようになっていた!
『ははぁっ、僕はオリガちゃんに褒めてもらうんだぞぉっ!』
アイアングリルが迫るが、
『サツバツ!』
『グワーッ!?サヨナラ!』
ゴウランガ!飛び蹴り一閃!巨体が一瞬で塵へと帰る!
『なんたる弱敵!』
「ふん、楽勝楽勝!」
ここまではカイのペースだ!
いちどナラクを戻し、優位を保ちながら攻めていくというプランも浮かぶが、
「なぁに、大丈夫だろ!」
一気にオリガのタワーへ突撃させる。
体勢を立て直す前に押し切る狙いだ!
その作戦は、間違いとは言い切れない。
しかし!
「ふふふふ……」
空気が変わった。
ДOДOДOДOДOДOДOДO!
怪しげなオーラ、ぞっとするような冷たい気配が漂う!
「な、何だ……?」
「あれ!?」
ギャラリーからも動揺のざわめきが漏れる!
戦場を見つめる少女の眼光は、先ほどとは打って変わって冷徹なものだ。
「その程度ですの? がっかりですわ。でしたら……」
ナラク・ニンジャの周囲がキラキラと光る。
そして次の瞬間!
SPARKLE!
ナラクは突如として、ゆらめく燐光のごとき光の壁に包まれた!
外に出られない!
「えっ!?」
「わたくしのオーロラオーラの中を、永遠にさ迷いなさい……」
冷笑を浮かべる少女。
『これは……!』
「な、なんだ!?」
ナラク・ニンジャが歯噛みをする。
『ウカツ……なんたるウカツ!』
懸命にカラテをふるうも、不可思議に煌めく光は突破を許さない!
「今ですわ! お行きなさい、サイグナスSSR! キンジャールSR!」
ZOOM! ZOOM! 隙をついてキンカクから高レアリティのニンジャを連続召喚するオリガ! 相当な高難度ムーブ! かなりの腕前だ!
「し、しまった! ええい、ウィールダー! サイプレス!」
どうにか時間を稼ごうと低レアリティのニンジャを繰り出すが、
『イヤーッ!』
飛び来ったダガーがサイプレスを貫き、サイグナスの腕がウィールダーの首を飛ばす!
『遊びにもならんな!』
「や、やばい!」
『ヌゥーッ!』
ナラクは必死にあがくが、オーロラから脱出できない!
『イイイイヤァァァァーッ!』
カイに再度の召喚も許さず、四人に増えたサイグナスが一挙にカイの事務所を直接攻撃する。
「ああっ!」
スキル:ぶんしん!
その威力はすさまじい!
BOOOOOOOOOOOOOM!
見る間にライフが減ってゆく!
「ウ、ウワーッ!!」
カイのライフが瞬く間にゼロに!
BOOOOOM!BLAM!CRACK!
事務所タワーはあっけなく倒壊した!
「あらあら、もう少し楽しめるかと思いましたのに……」
くすくすと笑うオリガ。
「くっ……!」
膝をつき、崩れ落ちるカイ。
敗北。
完膚なきまでの惨敗である。
サツバツデュエルではなかったため、重箱に被害などはない。
しかし、
「カイが……」
「あんな簡単に……!」
仲間の前での情けない負け。
それも、こんな小さな女の子に……。
「ぐ、ぐぐぐぐ……!」
カイは歯を食いしばり、
「な、ぬわぁんてことだぁぁぁぁぁっ!」
ショックを受け、大声で叫びながら走り去った!
「あっ、カイ!」
あわてて後を追おうとするコトブキ。
だが、
「あの、みなさん~!」
年相応の様子に戻ったオリガがかわいらしい声をあげた。
「わたくしの執事のスニェガヴィークが、アイスを持参しておりますの。わたくし、喉が渇いてしまいましたから、みなさんも一緒にいかがですの?」
「エッ、アイス!」
コトブキの目が輝く。
女の子はいつでもアイスが大好きだ、もちろん男の子も!
「……たくさんあるよ」
寡黙な大男は冷凍コートの中から、バニラ、ヘーゼルナッツ、チョコミントなど、どんどんアイスを取り出している。
「……」
コトブキは腕を組み、首をかしげたが、
「ま、カイならきっと高木模型ダヨネ!」
おとなしくアイスを食べることにした。
食べたことのないほど豊かなクリームみ!
イヤ味の無い高級素材のハーモニーが口内に広がる!
「ありがとう~!」
「めっちゃうめぇ~!」
みんなお礼を言い、夢中で食べている。
「ねえねえ、オリガちゃんっていうノ? カイに勝つなんてすごいネ!」
気さくに話しかけるコトブキ。
「あらやだ、それほどでもありませんのですよ」
褒められ、頬を染めるオリガ。
「どっから来たノ?」
「わたくしはアラスカでずっとデュエルの修行を……」
和やかな一同を、電信柱の陰から見張る影があった。
「はい、坊ちゃん、いらっしゃいました。オリガさまです……」
◆◆◆
カランカラーン!
予想通り高木模型店にやってきたカイ。
「店長……」
「おお、カイか」
シンナー臭い店内のテーブルで、店長はコーヒーを飲んでいた。
そして向かいに座っているのは、
「あっ、藤木戸さんも……!」
トレンチコートにハンチング帽の男性だった。
「どうした、カイ」
藤木戸さんはカイを見つめながら尋ねた。
いつも通り目つきは険しいが、その奥には優しさが感じられる。
「いつもの元気がないようだが」
「それが……」
カイは謎の少女、そして少女の使ったニンジャについて話した。
「ヌゥゥ……まさか、それは……!」
「知っているの、藤木戸さん!」
藤木戸はこくりと頷き、
「それはおそらくユミル・ニンジャ! オーロラの力を使い、敵の行動を封じる……!」
「そ、そうなんだよ! ナラクも動けなくなっちまって!」
「なるほど、実在していたとは……」
腕組みをし、ため息をつく藤木戸。
「オイオイ、そんなにヤバい相手なのか?」
「ユミル・ニンジャは敵をオーロラでひとりひとり行動不能にし、ジョーズめいて襲いかかるという。ナラクのみに頼った戦法では勝つのは不可能だ」
「そんな!」
藤木戸さんは、懐を探ると、
「これを持って行くのだ」
そう言って、一枚のカードをくれた。(ちなみに、初期エピソードにおける修行とナラクとの和合、そして販促の都合により、デッキには他のニンジャも入れられるようになった)
ナイフ付きの鞭を振るう忍者の姿が描かれている。
「えっ、すげえ!」
「これはガーランドSR。これをうまく使えば……」
しかし、見たことのないレアをもらって、
「やった~、ありがとう、藤木戸さん!」
テンションの上がったカイはすでに浮かれている!
「考えてみると運が悪かっただけだよな! このレアニンジャがいれば、あんな女の子なんて!」
敗北を運だけのせいにしている! デュエリストのよくかかる病気だ!
店を走り出そうとする少年を、
「待て!」
藤木戸さんは、いつもより厳しい声音で呼び止めた。
「え……?」
驚いて振り返るカイ。
「ど、どうしたの……?」
藤木戸さんは、カイのそばにやってくると、肩に手を置き、目を見つめて語りかけた。
「カイ、そのままではオヌシは勝てぬ」
「……」
動揺する少年。
「これを見よ」
藤木戸さんは懐から掛け軸を取り出し、開いた!
「ニンジャマスターの三病、それは恐怖と心配しすぎ、そして相手を侮ることだ」
「あなどる……」
カイは頷き、くり返した。
◆◆◆
いっぽうその頃、オリガは心配するスニェガヴィークを帰らせ、コトブキとなかよくマリツキで遊んでいた。
ポン、ポン、ポン……!
真剣なオリガの瞳はキラキラと輝いている。
「そう、そこで足を!」
オリガの真っ白な細い足が、バウンドするボールをまたぐ。
「うん、上手ダヨ、オリガちゃん!」
鉄棒、一輪車、縄跳び、ブランコ。
どれもオリガは初めてだった。
「スゴイヨ、すぐ上手になったネ!」
「そんな。ありがとうございますよ!」
頬を染めるオリガ。
「でも、アラスカにはこういう遊びはないノ? 寒いカラ?」
「いえ、他の子供たちは遊んでいたと思います。ですが……」
オリガの口元に寂しそうな笑みが浮かんだ。
「わたくしは、デュエルの修行ばかりでしたから……」
「ア……」
コトブキはいっしゅん口ごもったが、すぐにニッコリ笑い、
「じゃ、これからいっぱい遊ぼうネ!」
「はい!」
すぐにオリガも明るい笑顔になった!
「じゃあ、次は……」
友達を呼んで、缶蹴りでもしようかと思ったそのとき、
「オリガ様!」
サングラスをかけ、揃いの黒スーツを着た男たちが現われた!
「オリガさま、おとなしくご同行ください!」
しばらく前から見張られていたのだろう。
周囲をすっかり取り囲まれている!
「お前たち、なんだヨ!」
「さ、オリガ様!」
「……」
少女は目を伏せ、黙って黒服たちのほうに向かった。
今にも泣き出しそうな顔。
「オリガちゃん……!?」
「さあ、参りましょ……」
黒服が手を出した瞬間、
オリガが顔を上げ、男をにらみつける!
「ぐ、グワワワワワワワワワワ!」
PRICKLE!
全身をしびれさせ、痙攣する黒服!
オリガの常に携帯するスタンガン、ザルニーツァだ!
「やなこったですわ! わたくし、もう帰りません!」
「む、むぅーっ! あの大男がいないうちに、無理矢理にでも……!」
つかみかかる黒服を、
「ハイヤァーッ!」
SMASSSSH!
懐に走り込んだコトブキが、掌底で吹っ飛ばす!
「あら!」
「ハイ、ハイハイ、ハイーッ!」
回転しながらの流れるような功夫!
瞬く間に蹴散らされる黒服たち!
「に、逃げろっ!」
あわてて男たちは逃走していった!
「すごいすごい! すばらしいですわ!」
興奮してぴょんぴょん跳びはねるオリガ。
「お姉さまと呼ばせてくださいまし!」
「フフン、チョロいもんだヨ!」
胸を張るコトブキ。 「じゃ、つぎ何して遊ぼっカ?」
言われたオリガは小首をかしげ、 「あの、お姉さま、ずっと遊んで、汗をかいてしまいましたし、よろしければお風呂にでもお入りになりませんこと?」
「お風呂? どこにあるノ?」
「スニェガヴィーク!」
腕の通信機に呼びかけると、まもなく巨大リムジンがやってきた。
チバのものよりもさらに大きい! ほとんどキャンピングカーだ!
「わたくし、三度の飯よりお風呂を愛好してますの。だから、いつもリムジンの後部にお風呂を用意してありますのよ!」
中に入ると、
「ウワーッ!」
真っ白なバブルの泡立ち、バラの花びらが舞い、大理石で作られた天使やワータヌキが飾られたカワイイな浴室にコトブキが歓声をあげる!
「さ、お姉さま、いっしょに入りましょう!」
「イイネ!」
オリガはコートを脱ぎ、コトブキも躊躇無くアオザイのホックを外す!
◆◆◆
そしてその夜!
カイは自室で藤木戸さんに言われたことを考えていた。
『ニンジャマスターの三病、それは恐怖と心配しすぎ、そして相手を侮ることだ』
「あなどる……!」
眉を寄せ、深刻な面持ちのカイ。
腕組みをし、唸っている。
そして、
「えっと……」
机の上の辞書で調べ、意味を理解した!
「あなどる……馬鹿にすること! そうか!」
みんなも、わからない言葉があったら、必ず辞書を引こうね!
「俺は、オリガのことを馬鹿にしてたんだ……年下で、女の子だからって……!」
おごり高ぶっていた自分の姿が浮かんでくる。
『デュエルのやり方を教えてやるぜ!』
『楽勝楽勝!』
「俺は……!」
後悔と恥ずかしさに苛まれる。
だが、
「こうしちゃいられないぜ……!」
すぐに気を取り直した!
どうにかして、あの子を倒す方法を考えなければならない。
「たしか、藤木戸さんは……」
『ユミル・ニンジャは敵をひとりひとり行動不能にし、ジョーズめいて襲いかかる』
あのときも、ナラクの周りにオーロラが現われたのだ。
ひとりひとり行動不能にする。
ひとりひとり……!
「そうだ……!」
カイはむかし幼なじみからもらったリズムゲームを始めた。
難易度はエクストリーム・サツバツ・イエロー!
ズドズドズドズドズドドズドズドズドズ!ズンドコズンドコズンズンブンブン!パンパンピロットプンペペーン!
超常的な速度で回転するキャラクター!
飛び交う音符の嵐!
「あのとき、あそこで……!」
積み重なっていくMISSの山。
だがわずかずつではあるが、GOODが、EXCELLENTが、そしてPERFECTが増え始める……!
◆◆◆
「こっちだヨ、オリガちゃん!」
「お姉様はやーい!」
登り棒にするすると登っていくコトブキと、それを追いかけるオリガ。
「お嬢様……お気を付けを……!」
おろおろと見守る大男。
「もう! 大丈夫ですことよ! スニェガヴィークもいらっしゃいましな!」
楽しく遊んでいる二人のところへ、
「オリガ!」
「あらあら、あなたは……」
やってきたのはカイであった!
徹夜で特訓していたのであろう。目の下にはクマが刻まれ、しかしその口元には不敵な笑みが浮かんでいる!
「俺と、もう一度勝負してくれ!」
オリガは登り棒を滑り降り、
「ふふふ、もちろんなのですよ!」
優雅に一礼し、勝負を受け入れた。
「「サツバツ!デュエル!ニンジャオン!!」」
試合開始だ!
「来なさい、モキシバスター!」
まずは低コストのニンジャを召喚するオリガ。
それに対し、
「来い、アラマンダ!」
カイも同じくコモンのニンジャを召喚する。
「お出でなさい、サキュバス、オーガフィスト!」
「スーサイド、シガーカッター!」
共に強力なニンジャを並べ合うが、睨み合いが続く!
おいそれと攻撃は仕掛けられない。
うかつに攻めれば、逆にその隙を衝かれてしまうのだ!
「カイ、オリガちゃん……!」
すさまじい緊張感。まるで剣豪同士の立ち会いだ!
コトブキも汗をかき、拳を握りしめている。
いつのまにかギャラリーも集まりつつあった!
「昨日とは動きが違う……さすが、日本一を目指すだけのことはありますわ、カイさま」
サキュバスのスキルで突破口を作ろうとするが、それも防がれてしまう。
わずかなきっかけで、勝負は決まるだろう!
「……よし、来い、ナラクッ!」
ZGOOOOOOOM!
ついにカイがエースを登場させる。
だがその瞬間をオリガは待ち構えていたのだ。
「ふふふ、ではこちらも! 来て、ユミル・ニンジャ!」
AR空間に吹雪が舞う。星空に不可思議な乳白色の光が煌めき、一点に集まり、現われるのはマリンブルー装束のニンジャ!
「さあ、やっつけて!」
その姿がかき消え、オーロラが煌めいたと思うと、
『サヨナラ!』
まずはデッドリーフから撃破だ!
「ユミル・ニンジャは無敵ですわ! さあ、そのまま全部倒して!」
『ンッンッ……任せておけ』
再びその姿が光の中に消える。
今度はアラマンダの周囲が煌めき、オーロラに飲み込まれる。
『サヨナラ!』
このまま頭数を減らされていけば、戦線は崩壊し、蹂躙されるであろう。
だが、カイは冷静だった。
(相手を侮らない。相手は、俺より強い……!)
ユミル・ニンジャの動きをよく観察していたカイは、
(わかってきたぞ、あいつの動きが……!)
スーサイドの周囲が煌めいた瞬間、
「今だ、ナラクッ!」
『待ちかねたぞ!』
そのわずかな兆候を見て取り、ナラクをスーサイドに向けて突撃させた!
さらに、
「来いっ、ガーランドっ!」
絶妙なタイミングで、スーサイドのそばに藤木戸さんからもらったニンジャを召喚!
反射神経を鍛える特訓の成果だ!
そこに現われるオーロラ!
「な、なんたることですの!?」
一対一のキリングフィールドであるオーロラの中に、同時に三体のニンジャを飛び込ませたのである!
最初の試合でも、オーロラが現われる前に、前兆と一瞬のタイムラグがあった。
カイはそれを見逃していなかったのだ!
『イヤーッ!』
『イヤーッ!』
『サツバツ!』
オーラ内では、一対三とて、強大なユミル・ニンジャは互角以上に立ち回っている。
しかし、いまやオーロラは護りではなく、彼の動きを封じる枷となった!
『ドグサレッガー……!』
「よしっ!」
カラテを集中させ、ヴァニティSR、オールドストーンSRを立て続けに召喚し、サイグナスとサキュバスに突撃! 玉砕覚悟の近接戦闘を挑む!
距離を取れなければ強力なスキルもうまく使えない!
「ここで決める!」
そして、このゲームの最初から温存していたニンジャを、満を持して解き放った!
『オラオラァーッ!』
インシネレイトSRだ!
『キンボシいただきィーッ!』
防御を考えぬ突撃、火の玉そのものと化し、オリガのロシア教会風事務所タワーへと突っ込んでいく!
FWOOOOOOOOSH!
かとんスキルによる範囲攻撃だ!
「ゆ、ユミル・ニンジャッ!」
動揺の叫びをあげる少女。
『オリガ……!』
だが、彼女のバディはナラクたちにかかりきりだ!
「いけぇぇぇっ!」
BAAAAAM!BOOOOOOOOOSH!WOOOOOOOOOOOOSH!
かとんスキルは止めようもなく聖堂を焼き尽くしていく!
「あ、あああ……!」
オリガのライフが見る間に減り、
『……すまん』
BAAAROOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOM!
巨大な爆発とともに、決着はついた!
AR空間が消滅し、
「「「「ワオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーッ!」」」」
ギャラリーたちが歓声をあげる。
カイの勝利だ!
「ヤッター! やっぱりカイはスゴイネ!」
興奮し、バンバンと背中をたたくコトブキ。
「オリガちゃんも、おしかったネ!」
負けて、放心状態のオリガ。
が、はっと我に返って、重箱を閉め、
「本当にお見事でしたわ~」
ニッコリ笑って小さな手でぱちぱちと拍手をした。
ギャラリーからも両者の健闘をたたえて大きな拍手が起きる!
「はじめて、わたくしを倒せる殿方にお会いいたしました……」
「お前だってすごい強かったよ、また勝負しような」
にっこり笑うカイ。
「あ……」
頬を染め、こくんと頷き、そそくさと帰っていくオリガ。
「オリガちゃん、マタネ!」
コトブキがブンブンと手を振って見送った。
「なんだ? あいつ」
カイは急に態度の変わったオリガに首をかしげる。
が、小三の男子に女心はわからない!
「ま~いっか、デュエルデュエル!」
カイは相手を見つけ、再び対戦を始めた。
◆◆◆
そしてチバ邸。
「カイさま!」
豪華なフリル付きのドレスに身を包んだオリガが、目をキラキラと輝かせ言う。
「わたくし、あなたをお慕いしてしまいましたの!」
「そ、そうなのかい」
美化されたカイの面をつけ、相手役をさせられているのはチバである!
(カイだと!? いったい何があったというのだ……!?)
しかし、少年は言われるがまま、
「と、とっても嬉しいよ……」
ぎこちない演技を続ける。
オリガは、チバの妹であり、ソウカイエンタープライズの暴君が唯一逆らえない相手なのだ!
チバはだらだらと汗を流しながら、
「お、オリガ……その、お前そろそろシトカに帰ったほうが」
やんわりと進めてみた。
だが、
「いいえ! わたくし、ずーっとここにおりますわ!」
きっぱりと断るオリガ!
「ずーっと……」
チバの顔が青ざめる!
「お、おい、鬼奏! なんとか言え……!」
「アノ、坊ちゃん、ソノ……」
しかし、むりやりロマンチック執事装束を着せられている鬼奏に何を言えるはずもない!
「ああ、もうこの愛は運命ですの。ノリとオモチのように、誰も二人を引っ剥がすことはできませんの……!」
自分の世界に入ったオリガは、くるくると回り、純白の重箱を抱きしめ、
「待っててくださいましね、カイさま!」
星空を見上げ、そこに浮かぶカイの笑顔に、うっとりとほほ笑んだ。
(ニンジャマスターKAI サツバツマキビシデュエル!!!
登場!オーロラの美少女デュエリスト! 終わり)