私の夢 ~絶望と挑戦を越えて、日本にモンテッソーリ小学校を~
はじめに
はじめまして。私はモンテッソーリ教師の安倍陽子(あべようこ)と申します。
現在、東京都世田谷でモンテッソーリ教育を実践する教室「モンテッソーリファーム」を運営しています。これまでに0歳から12歳の子どもたちを対象とした教育に携わってきました。
私の夢は、児童期以降の子ども達に自分にあう教育の選択肢を広げること。
その一環として、2026年4月に東京都あきる野市でモンテッソーリ小学校を開校する計画を進めています。
この記事では、私がなぜこの夢に向かうことになったのか、そしてこれまでの道のりで直面した困難や葛藤についてお話しさせてください。また、モンテッソーリ教育を初めて耳にする方にも、最初に少しだけその魅力をお伝えしたいと思います。
モンテッソーリ教育とは?
モンテッソーリ教育とは、100年以上前にイタリアの女性医学博士、マリア・モンテッソーリによって考案された教育法です。この教育法の特徴は、子ども一人ひとりの成長や発達に寄り添い、「自分でできる力」を育むところにあります。
例えば、小さな子どもたちでも、日常生活を通して、指先の力を養ったり、自分で考えて選択をする練習をします。自分のペースで進められるため、個々の興味を尊重できる点が大きな特徴です。Googleの創業者達やAmazonのジェフ・ベゾス氏、将棋の藤井聡太さんなど、世界中で活躍する多くの人々がこの教育を受けたことで知られています。
しかし、日本では主に幼児期(0~6歳)に限られており、小学生以上のモンテッソーリ教育が受けられる場所はほとんどありません。この現状を変えたいという思いが、私の挑戦の原点です。私には、2026年4月にモンテッソーリ小学校を開校し、日本の子どもたちに新たな教育の選択肢を提供するという大きな夢があります。ここまでの道のりにも、すでに数えきれないほどの困難と葛藤がありました。それでも私は、子どもたちの未来を信じ、歩みを止めることはありませんでした。
絶望から始まった新たな挑戦
今から約20年前にモンテッソーリ教育に出会い、幼児教育の現場で働き始めた私は、やがて児童期以降の教育の重要性に気づきました。2018年にアメリカへ渡り、6歳から12歳の子どもたちを教えるモンテッソーリ教師資格を取得するためのトレーニングに挑戦しました。このトレーニングは、莫大な費用と3年という長い時間を要するもので、経済的にも精神的にも大きな負担でした。
さらに、日本にはモンテッソーリ小学校がほとんどなく、働く場所がないという現実に打ちのめされました。
私はそれでも諦めきれず、自分で働く場所をつくり、小学校を開くことに目標をシフトして、努力を続けました。理想とする小学校を絵に描いて、それを勉強机の前の壁に貼って、見ながら頑張りました。でも学びの最中には、何度も自分の選んだ道に自信を失いかけました。
さらに、周囲の人から心ない言葉をかけられることもありました。
「モンテッソーリ小学校開校!?そんなに大変なこと、たくさんの人がやろうとしてできなかったんだから、あなたにも無理よ。」
そう言われるたびに胸が締め付けられる思いがしました。それでも、「日本に教育の選択肢を広げたい」という強い思いが私を支えました。
支えとなった仲間たちとクラウドファンディングの成功
資格を取得して帰国した私は、2020年の冬、クラウドファンディングに挑戦しました。正直なところ、支援が集まるかどうか不安でいっぱいでした。しかし、多くの方々が私の夢に共感し、387人もの支援者の方々から合計7,218,000円もの寄付をいただくことができました!
その資金を元に、2022年に「モンテッソーリ・ファーム」という教室をオープンしました。この教室は子どもたちが、一般の小学校に通いながら、放課後や週末、長期休暇にモンテッソーリ教育で学びを深められる場所です。これまでに100人以上の小学生が通い、子どもたちが生き生きと学ぶ姿を見るたびに、心からこの道を選んでよかったと感じました。
さらなる挑戦と夢への道
しかし、全日制の小学校を開校するにはまだまだ課題が山積みでした。モンテッソーリ教師資格を持つ仲間を増やすこと、日本語での教材を整えること、文部科学省の指導要領に沿った運営体制を構築すること 等。もちろん、それ以外にも開校を一緒にする仲間を見つけたり、場所や資金の問題など、これらを一つひとつクリアするたびに、新たな課題が立ちはだかります。
そんな中、何度も挫けそうになる私を支えてくれたのは、子どもたちや保護者の皆さんの声でした。
「この教室があったおかげで、うちの子が笑顔を取り戻しました。」
「ここで学ぶことで、自分で学ぶ楽しさを知った。」
その言葉の数々や、子どもたちの成長が、私の背中を押してくれました。
また、全国のたくさんの新聞やメディアにも取材・掲載をしていただき、さらなる勇気を頂きました。
絶望を希望に変えて
2026年4月、私は東京都あきる野市の自然豊かな地に、仲間と共に、小さなモンテッソーリ小学校を開校する予定です。この学校は、子どもたちが選べる「オルタナティブスクール」の一つとして、新しい道を切り開く第一歩です。
そして私の夢は、ここで終わりではありません。将来的には中学校以降といった選択肢も、きっと広げていきたいと考えています。働く場所が増えていくことで、日本でも(日本語の)モンテッソーリ小学校教師養成コースが開かれることも目標にしています。
そひていつか、日本中の子どもたちが、自分に合った学びの場を見つけ、自信を持って成長できる未来。それを実現するために、これからも挑戦を続けます。
私がここまで来られたのは、困難に直面しても諦めなかった自分と、それを支えてくれた多くの方々のおかげです。絶望を希望に変え、未来の子どもたちのために、大きな夢を胸にこれからも歩み続けます。
日本の子どもたちの教育の選択肢と、多様な学び、明るい未来の実現を目指して
2024年12月末 安倍陽子
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