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マンガMeets3周年記念! 袖山みみり先生オンラインセミナーイベントレポート・後編【週刊連載のスピード感とQ&A編】

マンガMeets3周年記念として、マンガMeeで大人気連載中の『隠したがりの同期くん』の作者・袖山みみり先生のオンラインセミナーを2023年8月24日に開催しました。
後編では、週刊連載のスピード感と一日のスケジュール、最後にはセミナー参加者からの質問にも答えていただいています!
本記事ではオンラインセミナーの様子を再編成してお届けします!

前編【失敗から連載に至る道のり編】の記事はこちら


袖山みみり
『Bebe Vol.3』(株式会社ふゅーじょんぷろだくと)にてマンガ家デビュー。2022年9月よりマンガMeeにて『隠したがりの同期くん』連載中。


担当編集者・棚橋
『隠したがりの同期くん』『恋にほろよい』『陰キャな後輩は溺愛上手』などを担当。


月産50ページ以上!? 週刊連載のスピード感と一日のスケジュール

棚橋:
現在『隠したがりの同期くん』は週刊連載をしていますが、どんなペース感で動いているのでしょうか?

袖山:
1話だいたい15ページくらいで、おまけマンガは1〜2ページです。『隠したがりの同期くん』の場合は、3話掲載しておまけ1話を挟んで連載しています。マンガMeeの場合、2週間のペースで入稿と校了を行います。そのため、2週間で2話描くペースと2週間で1話とおまけを描くペースを交互にやっていきます。2週間で2話描くときはカツカツで、1話とおまけを描くときは休みつつ調整しながらしています。

棚橋:
ページ数でいうと4週間、月産約50ページ分ぐらいですよね。

袖山:
2週間で2話描かなきゃいけない週を図にするとこんな感じです。

袖山:
これは調子が良い時です。なかなかアイデアが出なくて詰まっちゃう週もあります。原稿が終わったら、次の日は打ち合わせをします。次の話はどんなことをするか話し合います。打ち合わせをもとにプロットを描いて再び打ち合わせをします。

棚橋:
ネームの前にプロットを書くんですね。

袖山:
流れを決めるのがプロットなので、ここは必ず考えますね。調子がいいと、プロット打ち合わせの日にネームができちゃう時もあります。プロットが固まったら、ネームを1、2回出します。場合によっては4回以上になることも……。色々赤字が入って、打ち合わせして、方向性を変えながらネームをテキパキやっていきます。

棚橋:
やっぱりネームは大変ですか?

袖山:
そうですね。シナリオを考えたり、コマ割りとか、色々考えることが多くて。ネームをするときが一番頭を使います。ネームが通ったら、翌日から原稿作業に入ります。最初は背景担当のアシスタントさんに指示を出していきます。

棚橋:
ちなみにアシスタントさんは何人いらっしゃいますか?

袖山:
背景2人の、トーンを1人で、合計3人でお願いしてます。次に線画をどんどん進めていきます。私は2ページから4ページくらいに分けて下絵と線画をワンセットにして進めています。これを6日間続けていきます。最後にトーンなど仕上げをしていきます。

棚橋:
袖山さんが1番好きな工程は?

袖山:
全部できあがったときに原稿を眺めるのがすごく好きです。ここまで大変だったなとか、このコマはよくできたなって眺めて、登ってきた山の景色を楽しむというか。達成感を味わうのが好きです。

棚橋:
一日のスケジュールはどんな感じなんでしょうか?

袖山:
図にするとこんな感じです。

袖山:
ネームの日は原稿作業の疲れが残っているので、睡眠を十分に取るようにしています。その後、掃除をして体を動かすことによって仕事モードに頭を切り替えます。ネームの前にシナリオを作成します。各キャラがどういう風に動くか、とか、ここは背景のコマとか、こういうモノローグ、こういう表情をするなどをシナリオで一気に打ち出していく作業です。

棚橋:
なるほど。文字でざっくりネームに描くとか、ページ割りするみたいな感じですか?

袖山:
そうですね。その段階の前に全部アウトプットします。そのあとにネームをしていきます。ネームができた段階で打ち合わせをします。この日は18時から打ち合わせをしています。

棚橋:
打ち合わせのあとはご飯を食べて、お風呂にはいるんですね。この間もネームのことを考えているのでしょうか?

袖山:
お風呂に入ってる時と、自転車を漕いでる時が1番アイデアが湧くんですよね。動くと脳が活性化するのか、すごくアイデアが湧いてくるんです。

セミナー参加者質問コーナー!

棚橋:
ここからは事前に募っていた質問にご回答いただきます。

Q:
おすすめの漫画、影響された漫画とか好きな漫画、参考にしている漫画とか、筋肉を描く上での資料などがあれば教えてください。

袖山:
影響された・参考になる作品は、コマ割りと視線誘導、構図に分けて挙げさせていただきました。

コマ割りは、ほしの瑞希先生『みにあまる彼氏』と『たいがー&どらごん』ですね。 私の主観なんですけど、ほしの先生のコマ割りがすごく読みやすくって。あとポップな感じで可愛らしいコマ割りになっているため、参考にすることが多いです。 

トーンと視線誘導は日下あき先生『はやくしたいふたり』を参考にしています。日下先生はトーンをたくさん使っているのですが、読みにくさが全くなくて。私自身トーンでここに何か入れたいなって思った時とか、 このページのトーンどうしようかなって思った時に、日下先生の作品をパラパラ開いて、ヒントをもらうようなイメージで使わせていただいてます。 

構図にかんしては、ひろちひろ先生『ふたりで恋をする理由』を参考にしています。ひろ先生はときめきのあるシーンの構図がすごく素敵だなと思っていて。特に、顔。まず、イケメンの顔をバーンって出すんです。そして、それに対するヒロインの女の子のリアクションや構図が綺麗だったりもして……。人の大きさ・小ささのメリハリがすごく参考になるなと思っています。

他におすすめの作品は、珠森ベティ先生『ねぇ一色くん、私のこと好きでしょう?』です。すごく作画が綺麗で、トーンの使い方も綺麗。あと、ファッションセンスというか、女の子の着ている服だったり、男性陣もすごく私服がオシャレなんです。こういう人いたらいいなっていう気持ちで読めたりだとか。あと、このヒーロー役の男の子が後輩の男の子なのですが、なんかもう表情も上手いし、ただただ顔が良い! もう、こんな人に迫られたいなっていう気持ちになりながら拝読しています。

また、綿野マイコ先生『かわいすぎる人よ!』もおすすめ。これは、おじさんと姪っ子ちゃんが同居するほのぼのとしたマンガです。2人とも、特に姪っ子ちゃんが素直で、本当に優しくて。それを見守るおじさんも色々葛藤を抱えつつも、でもすごく安心して見ていられる2人なんです。優しい世界が広がっているので、癒されたい時に読み返すことが多いです。アナログで描かれているので、アナログならではの温かみもあって、すごく好きな作品の一つです。

筋肉のデッサン資料のおすすめを2冊あげます。
『リアルなキャラクターを描くためのデッサン講座』。これはアニメーターさん向けの本なのですが、私のバイブルです。筋肉の部位の名称とか、画面構成における黄金比とか。あと、映像関連のtipsだとかも載っています。あとはカメラですかね。望遠カメラとか、そういう種類のカメラを使った時の効果を解説してくれています。漫画の画面構成に役立つなと思って読んでいます。
もう1冊が『強い筋肉の描き方』。これは、筋肉にフォーカスした本になっていて、表紙の通りすごいゴリゴリのマッチョが載っています。

Q:
コマ割りやネームで意識していることを教えてください。

袖山:
これは絵を見ながら説明します。次の画像は喧嘩した細川くんが、かれんの元に駆けつけてくれるシーンです。

(©袖山みみり/集英社)

袖山:
意識した流れは、赤い矢印の通りです。まず、吹き出しの通り読んでもらうような流れを意識しました。 この流れの近くに、今いる場所の情報だったり、細川くんの肩が濡れている状況を置いて、情報を拾いやすいようにしています。看板であったりとか、濡れてる肩が、吹き出しを追っていくと目に入ってくるみたいな。
全体的に見るとS字になっています。読みやすいように、例えば1コマ目のすぐ下、余白と描いているところに何も入れないようにすることで、1コマ目を見たらすぐに左下に行けるように、流れを誘導させるような感じでネームを組みました。
もう1ページ見てみましょう。

(©袖山みみり/集英社)

袖山:
画像は、バスケの試合でかれんに応援されて、細川くんが「よっしゃ頑張るぞ!」となっているシーンです。これも赤いラインの流れに沿って読んでもらうよう意図しています。3コマ目、細川くんがパンパンって顔を叩いて、ゾーンに入るところ。ここで切り替わったようにワーッていう雑音を、流れより外れたところにおいて、歓声が消えたような演出にしてみました。
最後に余白を入れることによってゾーンに入ったことがわかるようにしています。一拍置くようなイメージです。

Q:
男子をかっこよく描きたい。男性キャラの魅力的な見せ方について、性格や言動も含めて意識しているところなどあれば教えてください。

袖山:
手の仕草をキャラごとに分けています。アノ(注:伊勢アーノルド鋼太郎)は両手を顔の前に持ってこさせたり、岬はちょいキザなポーズをさせることが多いです。手は表情以上にキャラが出るというか、感情が出るところなので。そこをうまく使っていけると、補助的にもかっこよく見せることができます。

Q:
デジタルで描く漫画で気を付けていることを教えてください。

袖山:
圧倒的にスマホで読む方が多いので、以下3点を心がけています。

  1. セリフが小さくならないようにする 

  2. 線を太目にする

  3. 描き込みすぎない 

先程のネームにもありますが、余白やトーンのコマを使って緩急を作って読みやすい画面を意識しています。
また、なるべくセリフをシンプルにまとめています。そうしたらその分、セリフの文字を大きくすることができるので、読みやすさに繋がるかなと思っています。

Q:
コメディとシリアスのバランスを、どのように調整していますか。

袖山:
キュンとさせたいところはエモく、ちょっとだけシリアス(?)にしています。私は無駄にコメディになりがちなので、担当さんに手綱を握ってもらっています。

Q:
自分の漫画が面白くないかもしれないと思ってしまった時とか、手が止まってしまったりした時はどうしますか?

袖山:
ネームの時点だったら担当さんに相談しています。原稿中に面白くないかもと思うことはあまりないです。担当さんがOKくれてるのでいけるっしょ!と思って描いてます。手が止まる時は他の漫画読んでやる気をもらっています。メンタルがきつい時は『ブルーピリオド』や『ブレス』を読んだり。アニメの『ユーリ!!! on ICE』の4話と7話を観てます。

Q:
脱稿後すぐに次の原稿に取り掛かるまでの時間が長いです。中弛みせずに次の原稿に取り掛かれるアドバイスがあれば欲しいです!

袖山:
脱稿の翌日に打ち合わせをしてもらっているので、中弛みになることのないスケジュールにしています。完成した自分の原稿を眺めて「次はこうしたいな〜」と目標を決めるとやる気が出て取り掛かりやすいと思います。

Q:
キャラクターを作る時に、制服や私服などは何を参考に描いていますか?

袖山:
そうですね。私は主にピンタレストとかファッション雑誌を参考にしています。あとは最近Instagramで目ぼしいブランドの新作の洋服とかを見ています。流行を意識的に取り入れるようにしています。

Q:
先程、お話の中で読者を裏切る設定とありましたが、想定外を作るコツはなんですか?

袖山:
LINEのメモ機能にアイデアを書き留めたりすることが多いです。アノ(注:伊勢アーノルド鋼太郎)がこうしたら面白いよねとか。そういう突飛なアイデアをなんでもいいので書いておいて。それをどこかで違うキャラにして放り込んで使えることもあります。

Q:
コマ割りのカメラワークを考えているのですが、単調にならない工夫をどうしたらいいですか?

袖山:
よく言うのは、アップが続いたらちょっとロングにするとかですかね。初歩的な話なのかもしれないですが。カメラの引きとか寄りをちょっとばらけさせるみたいなのはあったりしますよね。あとは手の表情を入れるとか。背景だけのコマとか。間に入れて流すコマを作るっていうのもありかなって思います。

Q:
女の子と男の子での描き分けを聞きたいです。

袖山:
私、結構目が似ちゃってるので、どうしようかなと思いつつ……。髪型と体格、首の太さで描き分けることが多いかなと思います。

Q:
自分の絵を好きになるために必要なことはなんですか?

袖山:
自分の好みを前面に出すことを意識して描くことが、自分の絵を好きになることに繋がるんじゃないかなと思いますね。

Q:
人と話しながら原稿を進めたりしますか?

袖山:
原稿時は、私は人と話すと気が散っちゃうので音楽を流していることが多いです。動画はあまり流さないです。たまに流すとしたらお笑いを観るぐらいで。ジャルジャルとか。この間、ジャルジャルの就活系コントの動画を見てて、めちゃくちゃ笑って原稿にならなかったんです(笑)

質問は以上です。
本日はありがとうございました!


全体を通して、袖山先生がどのようにして失敗をいい方向へと持っていたのか、そして実際の創作のペースはどのような感じなのかなど、深くお話いただけました。素敵な作品を世に出している袖山先生にも、表には出ない試行錯誤があるわけですね。
創作をすでに始めている皆様、そして、これから始めようと考えている皆様にとって、本レポートから参考になるポイントを掴み取っていただければ幸いです!  そしてぜひマンガMeetsへの投稿もお待ちしております!
袖山先生、本当にどうもありがとうございました!

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