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マンガMee人気作家の漫画の作り方を大公開!『シンジュウエンド』セモトちか先生インタビュー【作画編】

マンガMee公式noteでは、デビューを目指すみなさんへ、面白い漫画作りのヒントになる情報を発信中。マンガMeeで活躍する人気作家さんに、漫画家志望者なら気になる漫画作りのアレコレを教えてもらうインタビュー連載を公開しています。

今回は、ドラマ化もした大ヒット作『サレタガワのブルー』、現在連載中の大人気作品『シンジュウエンド』の著者・セモトちか先生に、漫画の作り方を教えてもらいます。

  1. 連載立ち上げ編

  2. ネーム編

  3. 作画編

と、全3回にわけて掲載しています。第3回となるこの記事では、セモト先生に作画のコツを教えていただきました!

第1回、第2回はこちらから▼


こんにちは!漫画家のセモトちかです。

今回はインタビュー第3回 “作画編” とのことで。
実は私自身、自分の作画にあんまり自信はなく、まだ修行中の身だと心得ております。うまくなりてぇですよね!!

でも週刊連載って容赦なく毎週締め切りがくるんですよ、恐ろしいことに。
作画は日々 “もっとこのコマこだわりたい、練習したい” VS “時間” の連続です。連載を読み返すと、描き直したいコマにあふれています。悔しいです。

でも「セモト先生の絵が好き」だと言ってもらえることが救いで、心の支えですので、今回はそんな方々に向けてどのように作画しているか、僭越ながらちょっと語らせていただこうと思います。

ひうぃごぅ!果たして需要はあんのかい!?


セモト流、作画のこだわりは?

冒頭にも言ったように、まだまだ作画については未熟だと思っていて。でも、「もっと上手く描けるはずだ!がんばれ自分!」というハングリー精神はデビュー当時から良くも悪くも変わっていないです。毎日「下手だなチキショウめ!」と思いながら戦っています!

週刊連載はスピード命。ガッツリ練習する時間はないので、原稿の1コマ、1コマを「もっとやれるはず!もっとだ!」と、どうしたらその絵がよくなるか、毎日考えながら描いているんです。ポージング人形を手元に置いて、人形をごねごねして「この角度のほうがかっこいいかな〜」って考えてみたり、抱き合っている時の構図を確認したり。机に鏡を置いて、自分で表情を確認して描くことも。

でも結局キャラを上手に描くには、何回も描くしかないんですよねぇ。『シンジュウエンド』も今、34話を描いてますが真志も鈴もようやく慣れてきたので、結局30話くらいまで描かないと、キャラが手に馴染んでこないのかもしれませんね!

人物のこだわりでいうと、手フェチなので、手のアップは好きです!男の手と女の手は、すぐわかるようにしてます。ゴツゴツした手、イイよなぁ!!

洋服などは、あえて流行りのデザインで描くのではなく、キャラの好きそうな服や好きな色から考えています(今までお洒落なキャラが出てこなかったのもありますが…笑)。のぶ君ならメンズノンノ系で、寒色系。ともみなら、田舎から出てきた都会に憧れる女の子。梢さんは、男の子のお母さんらしい汚れても大丈夫な動きやすい服。藍子だけが、男によって服装が変わるので、最初はOL系。経営者と付き合っていた時はコンサバ系。ホストに遊ばれていた時は夜の女っぽく。などなど、服装は人格で決めちゃいますね!

『サレタガワのブルー』藍子とのぶ君の服装
©︎セモトちか/MIXER/集英社

街角スナップが掲載されているファッション誌が好きで。「この男の人は、チャラそうだけど意外とお魚は上手に食べそう」とか、スナップ写真を見ながらその人のキャラを想像してみたりしています(笑)。美容院にあるような髪型のカタログとかも、キャラ作りの参考にしています。


苦手から逃げないことが大事

デビュー前のお話をすると、担当編集のきたさん曰く、昔の私の絵は人物が軟体動物じみていたらしいですよ。私ね、矢沢あい先生の絵が一番好きで。小学生の頃からよく模写していたので、絵的には長身のスラーっとした男子が好きなんですよ。

しかし!!担当編集のきたさんはゴリゴリ筋肉マッチョな男が好きで、『キン肉マン』消しゴムみたいなプロレスラー体型が理想らしく!!!男の好みが真逆!!(白目)

でも、きたさんに気に入られないとデビューできないんじゃないかと思って(笑)。やるからには全力で長いものの意見に巻かれようと、男の筋肉を勉強したりしました。自分の癖を曲げることも時には大事ですよ、お金もらうお仕事ですからね(笑)!

ただ、きたさん曰く「セモトさんのメンタルが弱ってる時は、全体的に身体も顔も細くなって、痩せてしまう」らしいです。おっそろしです!!メンタル管理、気をつけよう…!!!!

また、背景を描くのが苦手だったので、逆に意識していっぱい描くようにしていました。だって逃げたら、上手くならないですからねー!!背景が上手になるために、今も、資料写真を自分でもいっぱい撮りに行くようにしています。実際現場に立つと、ストーリーが湧き出たりしますし(『シンジュウエンド』のために、崖いっぱい行きました!)。

苦手なことがあったら立ち向かうのが、昔からの性格なんだと思います。自分が子供の頃ビビリで、通学路の途中にいる大型犬が怖すぎて、犬について図書館で研究しまくった記憶が蘇りますね(なので、今も犬種に詳しいです!)。おかげで5年くらい週刊連載をやっていく中で、背景描くのがすっごい好きになりました。犬はまだ怖いけど(笑)!


カラーであることのメリットは?

今の漫画家になりたい方って、ページ漫画と縦カラー漫画のどちらでデビューを目指すか、選択肢があると思うんですよね。

私はデビュー作の『星になる前にキミと』から、縦カラー漫画を描いてきまして。なんだろう…モノクロ漫画よりもやっぱりカラーは時間がかかるんですけど、ほら……塗り絵って楽しいじゃないですか(笑)。日々、絵画を描いているイメージで、縦カラー漫画って楽しいなと思います。

そして情報が白黒よりも、ダイレクトに伝わるのは、縦カラー漫画の利点かと。例えば『サレタガワのブルー』(以下、『サレブル』)の1話の冒頭で、のぶ君がお魚を焼いたり、鰹節から出汁をとったりと、お料理をするシーン。白黒よりもカラーのほうが作画的には大変だと思うけれど、その分、「おいしそう!」というのが、より皆さんに伝わるかなと思います。食べ物を描くシーンは、えっちなシーンと同じくらいピリッと緊張しながら描いてますね(笑)。

『サレタガワのブルー』ご飯の様子
©︎セモトちか/MIXER/集英社

こんなふうに色でダイレクトに情報が伝わってくるので、縦カラーの漫画って、作者の色の好みがモロに出るなと。私でいうと、あまり原色は使わないようにしているかもしれないです。目がチカチカするから(笑)。単純に優しい色が好きなのもありますが、“明度明るめ+彩度低めのトーン“ がわりと見やすいかなと思っていて、色彩学的には “ライトグレイッシュトーン” くらいの感じで全体をまとめています。

でも物語の中でショッキングなシーンは、ガツンと強い色を入れたりすることも。あとは夕方のシーンや夜のシーンでは、光と影とのバランスを大事にしていて。綺麗な空や夜景、夕陽を見た時には写真を撮って、積極的に色味を原稿に取り入れたりしています。東京出張に行った時は、「都会と田舎の夕方は、まるで人の肌色が違うんだなぁ」と目に焼きつけたりもしますよー! “縦カラー漫画家あるある” だと思うんですけど、外で綺麗な色を見たら「暗めの青を乗算50%…その上に発光レイヤーで黄色とピンクをグラデ……」などとデジタルでの塗り方をすぐ考えたりします(笑)。楽しい職業病です!

人を驚かしたい人は縦カラー漫画がおすすめ?

縦カラー漫画は、ページ漫画と違ってスマートフォンをスクロールすることで、話が進んでいきますよね。人が指でスクロールして読むことをいつも念頭に置いているので、会話の緩急はすごく大事にしています。

私の作品は、わりと会話の吹き出しが多くて。ちっちゃい吹き出しでタッタッタと配置されているのが特徴らしいです(担当編集・きたさん談)!テンポのいい会話劇ができるのは縦カラー漫画ならではかなぁと。

人が口論している時はセリフを被せて、1スクロールの中に吹き出しを詰める。逆に沈黙が流れている時は、セリフを配置しないことで、絵だけのコマを縦長でたくさん置いて、会話がないことを強調させたり、なんてテクニックもあります。

あとは、縦カラー漫画ってページをめくる感覚でスクロールするので、下にいくワクワク感がありますよね!『シンジュウエンド』なら、崖から転落する姿をスクロールすることで落ちていく感じを出せたりと、トリック的な表現がやりやすいです。“笑顔なキャラクターが、下にスクロールしていったら、実は手にナイフ持っている!” とかさ!

人を驚かす漫画が描きたいと思っている人には向いているかも?でも、トリックを入れたり、凝ったネタを入れても、最後に仕掛けがないと読者さんの心には残らないっぽいんですよ!!!

コメント欄を拝見していたら、その話のストーリーの最後の部分に触れている読者さんが多いので、大事件や大きな見せ場は、毎話、終盤にもってくるのがいいなーと。これ、最近の気づきです(笑)。縦カラー漫画はまだ教科書も少ないので、皆さんも分析してみてください!


セモトちかこだわりの作業環境

私はiMacにWacom液晶ペンタブ(CintiqPro24PT)を繋げて、ソフトは王道のCLIP STUDIO PAINTで作画しています。ネームや枠線くらいはiPad併用で。セリフや物語を考えるのはアナログメモ帳 + iPhoneのメモです。

ペン先は、普段からあまり変更はしないタイプ。「いい設定がある」と聞けば他のペンも試してみるんですが、あんまりしっくりこなくて!結局、CLIP STUDIO PAINTのデフォルトのカブラペンを使っています。

ただ子供の頃から筆圧が激弱なので、設定は自分仕様に合わせてます。
『サレブル』から『シンジュウエンド』に移行する時に、左手ツールにTourBoxというデバイスを導入したのですが、すっごく時短になっていいですよー!オススメ!


上手になるには好奇心の旺盛さも大切に--

最後に、作画の上達に悩んでいる皆さんに “練習” についてのお話をすると、漫画はもちろん毎月すごい冊数を買いますが……、恥ずかしながら『〇〇の描き方』系の本も、めっっっっっちゃ買います(笑)!最近買った本は『美中年の描き方』!(私の漫画に美中年が出てくる予定は、今のところありませんが笑)。

あと作画法は、YouTubeなども参考にしています。なんでも買ってみるし、試してみる!あ、スポーツやバトル漫画も好きです!自分じゃ絶対に描かないジャンルだとは思うけれど、たくさん読みます。身体の描き方が上手で、すごいですよね…!

漫画家って知識がいるし、なんにでも好奇心旺盛に漫画以外のことにもアンテナを拡げて研究するのがいいと思っていて。思わぬところで活きる時があります!

たとえば、『シンジュウエンド』でヨーヨーを描くシーンがあるんですが、たまたま遊んだ友達の旦那さんがヨーヨーの達人で!いろいろ教えてもらって、楽しかったので漫画に取り入れました(笑)。

ふとした時に表現の幅が広がる可能性があるので、好奇心と人懐っこさはいつまでも大事にしていきたいです!


まとめ。漫画を描くということ。

結局上手くなるには、漫画をたくさん描くしかないです。たくさん描いて、たくさん模写もして。幸い私は、中学生の頃からクラスの友達に定期的に読んでもらうため、“自由帳で週刊連載” をしていたこともあって、感想もらって喜んでいました(笑)

今読んだら、マジもんの黒歴史で特級呪物なんですけど、あれは知らず知らずのうちに漫画家への訓練になっていたのだなと思います。

一枚絵は上手く描けても、コマにしてみたら違ったりすることがあるので、漫画家を目指すのであれば “絵の訓練” というよりは、とにかく “漫画” をたくさん描くことが大事だと思います!今はSNSの普及により、自分から発信しやすいですしね!昔よりだいぶ、漫画家は目指しやすい職業へと進化しているなと感じます。

「漫画家は漫画を通して、人生において大切なことを人に教えられる存在」だから、みんなから「先生」って呼ばれていると、デビューの時に編集さんに教わりました。私も、「誰かの先生になれるかな?がんばろう」って思った。やっぱり私はいろんな人の心を揺さぶる漫画が描きたいです。もっと頑張ります!!!!

そして、まだまだいろんな漫画が読みたいです。あなたが “先生” となれる新時代の漫画、楽しみにしてます!がんばろうねー!えいえいおー!!!!!

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関連リンク

セモト先生の新作『シンジュウエンド』はマンガMeeのアプリからお楽しみください▼

マンガMee公式noteでは、マンガMeeで活躍する作家さんに漫画の作り方を聞くインタビューを公開中。

第一弾:みっしぇる先生/『誰か夢だと言ってくれ』

第三弾:葉夕シオリ先生/『メンヘラうさぎはヤンデレ狼に溺愛される』

文・セモトちか / 編集・戸田帆南

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