第3品目【甘いもの】を4人前食べたい/完食御礼!
「二次元加工食品 まんがフーズ」は 【食べもの・飲みもの】の作画を、
しつこく!!!!考察し、実践する、お絵かきゼミナールです。
本コンテンツの中心は“プロアシ”の
「サハラ」が制作・論考します。
※志望者が漫画家になるまでの腰掛け修行としてアシスタントをしているのに対し、その道を専業として食べている専門作画家が、俗に“プロアシ”と呼ばれます。プロ漫画家のアシスタント=プロアシではありません。
聞き手と書記を「中村珍」という、サハラの元取引先であり、現在はただの友人である漫画家が務めます。※サハラの似顔絵とデザイン画のみ中村が描いたものを使用していますが、本コンテンツの根幹は中村の持ち物ではないため、メインの作画を中村珍が行うことは原則としてありません。ご注意ください。
毎月一品、
プロアシのサハラが、
(自分は絵がヘタなくせに
アシスタントの作画には超うるさい)漫画家・中村珍に
突きつけられた
【難しい食べ物の絵】を
威信をかけて
絶品に仕上げます。
https://www.instagram.com/SAHARA_3838/
この連載は、作画課題を受けてから、ゆっくり考えて、読者のみなさんも絵を描き上げる時間が確保できるペースで進んでいきます。
腕に自信のある二次元料理人の皆さんは是非、一緒に調理の準備をしてみてください。見習い料理人の皆さんも「自分だったらどう描くかな?」と想像して、もし良かったら描き始めてみてください。
難しいパソコンのソフトは使いません。今から始まるのは、紙とペンだけで誰でも挑戦できる真剣な遊びです。
現在アシスタントを育成中の先生がたも、是非このお題と、今後更新されるアンサーをご活用ください!
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更新はメニューごとに四度、四段階に分けて
以下のスケジュールで行われます。
〔当月20日頃〕…料理の注文
『お題』の公開日です。
中村からサハラに注文が飛んできます。
〔当月29日頃〕(にくの日!)…調理場で試作会議
お題に対するサハラのアンサー、下描きを踏まえて、
サハラと中村珍による絵の仕上げ方のガチ議論が公開されます。
〔翌月9日頃〕(食う日!)…ペン入れ
仕上がりを大きく左右するプロセス・ペン入れ。
試作品の試食を重ねるつもりで仕上げに近づきます。
▼【今この段階です】▼
〔翌月20日頃〕…完成!
試作の議論を踏まえて、いよいよ完成原稿の公開!
完成した原稿を挟んで再び論考します。
▲【今この段階です】▲
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第三回のお題は……………【甘いもの】!!!!
■ 第03品目 ■
■【甘いものを4人前】■
2016/4/20 注文
注文内容
課題■甘いものを4人前
【条件】
2ヶ月間、しょっぱいもののことだけ考えていたら甘いものが食べたくなってきました。それもちょっとやそっとではありません、4人前です。
美味しそうな甘いものなら本当になんでも構いません。盛りつける器もなんでも結構です。甘いものを4人前食べさせてください。
食べるキャラクター設定は特にありません。
何をセレクトすればお絵描きゼミナールとして充実するのかだけを念頭に置き食材とメニューを決定してください。
(小言)
なんでも構いません。一体何を選べば、凄く手の込んだ絵で、それでいて初心者も真似しやすく、にもかかわらず圧倒的にクオリティの高い仕上がりを実現できるのか、自身の得意分野と、セミナーを読んでいる読者の需要を検討し決めてください。
羊羹・水羊羹・芋羊羹・ういろう…を描き分けるという修羅の道を行くも良いでしょう…。ミルクチョコ・ホワイトチョコ・ビターチョコ・ハイミルクチョコを描いて信頼を失うも良いでしょう…。たけのこの里・木こりの切り株・きのこの山・小枝という山の幸系チョコレート菓子戦争を起こすも良いでしょう…。
フルーツタルトやパフェのような数品の集合体としての1品に挑む気前を見せてもいいかもしれません。しかしアイスクリームを盛り付けた際の表面の凹凸にこだわる硬派な生き方も良いでしょう。生クリームの絞り型の考察をしても、ワッフルやパンケーキから垂れるシロップで頭をいっぱいにしても構いません。美しい和菓子の質感に挑んでも良いでしょうし、団子に張り付く海苔や煌めくみたらしに明け暮れても構いません。クリームソーダの炭酸と鮮やかな緑色を考え続けることも良いでしょう。
…まさか砂糖を一袋描いてくるという度胸があるならそれも良いかもしれません。
お任せします。
それでは、作画を始めてください。
2016年4月29日
下描きが上がってきました。
調理風景をお届けします。
※編集事情で公開が5/2となりましたが、
サハラの行った作画は4/29の段階で上がっています。
■課題【甘いもの】■
〜下描き編〜
〔担 当〕お疲れ様です!今日は!
《サハラ》おつかれさまです!今から下描きします!
〔担 当〕はい!
前回の焼き鳥、前々回のラーメン、とまあ…しょっぱいものが続いたので、甘いものですよ。何が出てくるのかなと楽しみにしていました。
被写体は?
《サハラ》とりあえず何描くか色々考えたんだけど、結局好きなものにしました〜。
食べるのがというよりは見た目が。
〔担 当〕おっ、見た目重視!何でしょうね!?
…バレンタインに、私、大好きなショコラティエなんですけど、JEAN-PAUL HÉVINの物凄く可愛い詰め合わせをくださったじゃないですか。だから私の思う“サハラさんとお菓子”というのは、なんかこう、王道感があって誰でも食べ方が分かっていて、だけどどこかに外見的に洗練された要素のあるものを選んでくる、みたいなイメージなので、なんか、カジュアルかつお洒落な洋菓子が出てくるんじゃないかなと思っています。
《サハラ》ただなんか普通の食べ物に比べるとデザインでブランド感出るなあ〜って思うので。
〔担 当〕あー、なるほど。確かに。
前回のお題だった焼き鳥なんかと比べると、外見が洗練されたお菓子っていうのは既存のブランド感が出やすいですね。「この見た目の感じはどこどこのパティスリーの何に似てる」とか、「このチョコレートは何々っていうショコラティエ独自のデザインだ」みたいなのが出やすくて、作画面でややリスキーな部類の食品ですね。
他の食品以上に、『デザイン性』すなわち『知的財産』である、ということが当然乗っかってくるというか。
資料をどの程度参考にするかの匙加減を誤ると、知財の面で引っかかる実際的な問題だけでなく、描き手が何も考えていないということになりかねない、精神論的にもなんかNGですね。
《サハラ》そのあたりを上手い事、資料を何枚か比べながら、オリジナルの、“架空のお菓子”にしていきたいと思います!
(サハラ=以下《サ》/担当編集中村=以下〔担〕)
《サ》 てことで、カップケーキとドーナツです。
〔担〕 ぐえ。私の嫌いな食べ物だ(笑)
でも、作画としてはとても華のある被写体ですね。
粉を焼いた本体の質感、トッピングに登用されるであろう果物類やチョコレート類のディティール、コーティングやトッピングに使われる砂糖菓子の色合いと硬さ軟らかさ、いずれも異なるタイプの作画の思考を要するパーツが寄り集まった被写体なので知ることが多いと思います。
《サ》 “あたり”。
4人前の度合いわからなくて倍くらい描こうとしてたけど何も甘いもので腹を満たす企画じゃなかった。
〔担〕 そうですね。
私ももしこれがフルーツタルトだったら、「いやいや4人前ってことは私が4人いたら一人あたり4種類をホールで食べますから16ホール描きましょう!」とか思うんですけど、ドーナツとカップケーキに全く情熱ないんで、「私ではない誰かが食べるんだから1人1つずつ計8個あれば充分ですよ」みたいな私情でもって「適量じゃん」って考えてます。
《サ》 でもこれはなんかこう、表参道とか原宿あたりに出来たちょいと並ぶ海外ブランドのやつみたいな…ゴツいやつです。
〔担〕 結構お腹いっぱいになるやつだ。わかるわかる。ミスドみたいな感じよりも、ひとまわり厳つい、ドーナツ好きな人がドーナツ食べたくて行くドーナツ屋って感じのやつですね。
あ、これ、意地悪言いますけど4フレーバー描いてくださいね!!…それも、ディテールに差分の出やすい4フレーバーを(笑)
《サ》 わかってるよ!!!!
〔担〕 そ、そうか…!!!!!!一般的にはそうか…!!!!
私は気に入ったおにぎり同じの3つ4つ買ったりするから全然気づいてなかった(笑)ごめん!(笑)
《サ》 と、いうか(笑)
正直同じものを4つ並べる方が苦痛に感じてしまうんだよね〜。
家に買うのだと喧嘩を避けるために同種×人数分だけど、他所に持ってくのだと「どれにするー?」みたいなクダリも会話のネタとして…。
〔担〕 ああ〜…気遣いのある買い方ですね。開いた時にちゃんと雑談が出来るものを買って行くっていう丁寧な手土産の選び方だ。
《サ》 あと作画的に同じの3つ目描き始めた時にコピペしたい気持ちに折り合いがつかない。
〔担〕 あ、まあ、そうですね…。絵描き的には一番共感出来る理由です。全部違う種類なら全部描き下ろす意味を感じますし、描き下さざるをえないですけど…。1種類のお菓子を複数個並べるのって、なんか、ちょっとね。4人に配る同じ書類を4部印刷するんじゃなくて、4回打ち込んで1部ずつ印刷するみたいな「これもっと効率上げる方法あるのでは」感が凄いしますからね(笑)
《サ》 カップケーキのだいたいのデザイン…なんかもう胃がもたれてきた…。
〔担〕 「食べるのがというよりは見た目が好き」ってだけですもんね…。
《サ》 ドーナツ描きながら皿の位置が悪いなあと思っている。
お皿の底面の線と手前のカップケーキアウトラインが同じ位置になってて…。なんかこういうの、現実にありえない絵じゃないのに違和感があるのはなんでですかね…。
〔担〕 現実の、3次元の視界で見ると色合いとか前後関係とか立体視できるから特に気にならないっていうか、そもそも「現実だから」という理由で、“あり得るかどうか”すら検討せず「ある」で済むから考えないですけど。
かたや、2次元の枠内で見ると立体視に限界があって、隣接するものの奥行きが示しにくくて、なんか平面的に接触しているように見えたりするんですよね。影を乗せていったり色が加わるとだいぶ良くなるんでしょうけど…。
パースミスとかデッサンミスとかの問題で片付けられがちな話ですけど、既にあるものか、人力で存在させたものか、っていうのの見え方の差分って物凄いので。それも、デフォルメを避けられない漫画絵だと尚更じゃないかなと思います。
《サ》 というわけで、浅いボールの予定でしたが平皿に近い感じにするかも…です。まだ予定です。
《サ》 だいたい描く種類?ディテールは決まったのでこれから細かく書き込んでいくのだけども、すでにここで誤算が……。
ドーナツ、カラフルだとかわいいけどモノクロだとそんなにデザインの幅なかった……。
〔担〕 ははは、まあねえ、白黒ですからね(笑)カラフルなスプレーやチョコソース見たいなのフルカラーの画稿ほどは表せないですからね(笑)
漫画ずっと描いてれば分かりそうなもんなんですけど、それでも、私も何度もやらかした誤算です。白黒になることは承知の上でやってるんだけど、やっぱり資料を探しているうちに頭の中にフルカラーなデザインを思い浮かべちゃって。
《サ》 可愛いのはだいたいなにかがコーティングしてあるけど、その色味の差を出してもせいぜいトーンの番線違うくらいしか見せ方なくて…。
〔担〕 ビビッドなピンクのスプレーと、ビビッドなライトグリーンのスプレーとか、白黒原稿でどっちがどっちか判るように描くのは画力の問題とほぼ関係なく、まず無理ですからね。できることとできないことっていうのは絶対ありますから。
《サ》 なのでめちゃオーソドックスなドーナツを描きます…。
〔担〕 おお(笑)
トッピングに頼らずにディティール勝負で描き分ける種類にするんですね。むしろ難しいじゃないですか。
《サ》 1番手前のカップケーキ、これは生地がココアな感じで濃い色にしたいので、カップも濃いめに入れようと思ってます。
《サ》 さくらんぼ乗っけた。
ツルッツルのさくらんぼにしたいのでトーン任せ。生地も一応タッチ入れてるけどトーン任せです。
〔担〕 一番手前のさくらんぼがこの位置にくると、奥のケーキはさくらんぼと似過ぎた色をつけられないので、…つけられなくはないでしょうけど、つけると全体的にメリハリがなくてボケた感じになるので、こういう入り組んだ構図を描き慣れていない人の場合には、どこに何色の何を配置するか、よく考えたいところですね。
《サ》 2つ目と3つ目。
生クリームの濃度とか絞り方とか変えるの変化あるかなと思って違う形にしました。ブルーベリーを乗っけたのですがこれはあとでベタ部分増やすかも。
〔担〕 そうですね。あんまりベタが控えめだと、さくらんぼと質感や色味が被ってしまうリスクの高い被写体なので、背後のドーナツのチョコソースと喧嘩しない程度の黒さは欲しいところかもしれません…。
《サ》 4つ目。上にうっすい板チョコみたいなのを刺したいなあーと思ってますが、形がちょっと…うーん、後で変えるかもしれない。
〔担〕 丸いものをトッピングすると手前2つの果物系と頂上が被るし、角を出しすぎるとバランスが取りにくいし、角を取ると逃げ腰なデザインになるし、何を優先するか…。うーん…。
《サ》 オールドファッション。チョコ部分は陰影濃い目で、光の反射が出るようなイメージ。生地の方はボソボソ感が出せるように細かめにタッチ入れます。
《サ》 フレンチクルーラーと、なんかコーティングされてるやつ。
フレンチクルーラーは明るい色で、コーティングはひかりの反射でツルツルさせたいので主にトーンで表現します。
〔担〕 ドーナツって何しろ丸2つ描けば一応その形になるので、“描くのが簡単なお菓子”というイメージが一般的にはあると思うんですけど、ここまでリアルに描くにあたって、何かコツってありますか?
《サ》 ドーナツはあまり綺麗な丸より、少し歪ませたほうが生地の柔らかい感じとか出るかなーと思います。
〔担〕 なるほど。トッピングがどうこうよりも土台の部分ですね。
なんとなく「いかにトッピングを可愛く仕上げるか」みたいな上澄みの部分で考えていたんですけど、一番大きなコツが潜んでるのって、もっと根本の部分なんですね…。
歪ませ方も種類によって色々あるでしょうから、初期の段階で勝敗が分かれやすい被写体なのかもしれません。
《サ》 フレンチクルーラーにはクリーム挟みました。
《サ》 1番奥はオーソドックスなやつ。ハニーディップ?かな?名前がわからないけど、これもほとんど描き込まないです。
〔担〕 あ〜、私がよく手作りハンバーガーのバンズに使ってるやつだ。ドーナツとして食べると「お前退屈なヤツだな…」って感じなんですけど、ハンバーガーのバンズとしては「慎ましくて協調性があり良い」って評価してます。
ハニーディップで合ってます。
《サ》 結局、平皿にしました。
これはあとから変わるかもしれないけど、今のところ白っぽいお皿です。
〔担〕 お菓子って華やかさ勝負の被写体だと信じて設定した課題だったんですが、結局これもディティールのつけ方や、たとえばドーナツの表面の凹凸など、地味な部分に神が宿るタイプの被写体でしたね…。下描きを見ながら気づかされました…。
特にオールドファッションの凹凸は、これがしっかり描けたら食感がリアルに想像できるだろうな、という肝の在り処を感じます。
《下描きを終えて》
とりあえず下書きは以上です!意外と描き込めるところが少なくて…。最初はカップケーキが楽しみだったのだけど、今はオールドファッションのが楽しそうです。(サハラ)
2016年5月9日
ペン入れが上がってきました。
調理風景をお届けします。
■課題【甘いもの】■
〜ペン入れ編〜
《サ》 これからペン入れますが…。
〔担〕 はい。いよいよペンですね。どうですか。
《サ》 なんかこうトーン処理で色や素材を出すものかなーと思うので、あまりがっつりペン入れすぎないようにしたいです。
〔担〕 あ〜、まあ、そうですね。明るい色というか、明るい印象のものって、ペンは最低限であとはトーンで鮮やかにしちゃうのが王道かもですね。スイーツの類はね、ツヤを出したい素材も多いですし。
《サ》 チェリーとクリームです。クリームはアウトラインくっきりさせてます。
〔担〕 クリームのツノやカドがしっかりしていると溶けていなくて新鮮なイメージがありますね。美味しそう。それに素材が何なのか明確になると思います。絞った時に鋭角がしっかり出るクリームと出ないクリームとがあるので。例えばカスタードクリームがトッピングされていたりすると、逆にポヨっと、なんていうんですかね、スライムっぽさみたいなのが出るわけですが。
あと留意点は何でしょうね?
《サ》 クリームの流れというか波っぽい線はできるだけ細く。あとはトーンの陰影で表現します。
〔担〕 陰影がトーンじゃなくてペンだと表面が滑らかに見えないですもんね。ザラザラした硬いメレンゲ菓子っぽく見えるというか。
《サ》 これはココア味というか、チョコっぽい暗い色のスポンジ…であってるのか?
〔担〕 うん、わかりますよ。茶色い蒸しパンみたいなやつね。
《サ》 …を想像してるので、点描で陰影をいれてみました。
〔担〕 おお、そうですね。生地の気泡が焼き上がりにも出るから、スポンジの表面に点状の凹凸を想像させるものがあるのは正しいと思います。
《サ》 これが…トーンの時にどう生かせるか…今考えてる………。
〔担〕 あ〜、そうですねー。トーンのドットとケンカしちゃうかもね。砂だと同化しちゃうし。死なないかなぁ。どうだろう。悩みますね。
《サ》 下のカップの部分です。焼くとこのカップに色が透ける感じなのでこちらも色は暗めにしてます。
〔担〕 なるほど。中の色が透けるってことは、カップ自体は半透明の白ってことですね。
《サ》 奥のカップケーキのペン入れます〜。
〔担〕 手前のココアスポンジと奥の黒×(かける)茶色のドーナツに挟まれているのでライトな色合いにまとめたいところですね。画面の色数が豊富に見えるかどうかの要の一つ…!
《サ》 これはプレーンな味のカップケーキにしたいなあと思うのでカップ部分の陰影は薄めに〜。
《サ》 クリームは手前のカップケーキ同様、アウトラインくっきりめで中は極力細く。一部ちょっと硬めでボソっとしてる雰囲気を出してます。
《サ》 ブルーベリーの形はまん丸よりちょいと歪んでる感じ。熟しすぎた柔らかめの甘いののイメージです。
〔担〕 あ〜、わかります。わかります(笑)熟してるんじゃなくて、ちょっと熟したところを通過してる感じのね。そういう洞察リアルだなー。
《サ》 なんかこういうのに乗ってるフルーツってちょっとイマイチなの多いなって偏見…。
〔担〕 カップケーキってちょっとザコ扱いされてるっていうか、トッピングの果物までわざわざ頑張ってくるお店って少ないんですよね。タルトに力入れてるお店だったらありえないような果物が乗ってくんの。多分買う側も大抵の場合カップケーキに全力のフルーツ感って求めてないからどうでもいいんだろうけど。
《サ》 手前のカップケーキの色味考えるとブルーベリーにもベタっぽさ欲しいなあと思ってちょっと黒入れました。でもトーン貼ったあとに少しホワイトするかも。手前のチェリーもちょっとだけ影足しました。
〔担〕 ブルーベリーの質感が正しいですね。ジャムで想像するとツヤツヤした食べ物に思えるけど、パッと想像するよりは結構マットな質感だから、こういう点描っぽい描き込みが合うんですよね。
《サ》 あとの2つは似たようなもんです。クリーム緩めというか、ちょっと空気多めって感じです。これは上のがナッツ。
《サ》 奥のも同じようなののトッピング違い。クリームの色味をトーンで変える予定です。
〔担〕 似たようなもんですって言っちゃうと身も蓋もないけど、まあ似たようなもんですよね(笑)カップケーキで登用されるクリームってまあ、ね、まあね、こういうレパートリーですからね(笑)あんまり非実在のオンリーワンを求めてもしょうがないので、ある程度は現実的に形がカブるもんだと思いますよ。
《サ》 オールドファッションのチョコ部分。
〔担〕 うまいなぁ…。想像ですか?
《サ》 これはもう資料見ながらテカリを観察するしかなかったです。
〔担〕 やっぱりちゃんと観察するんだ…。
《サ》 でも食べたり見たりした事あるものだからイメージは湧きやすいので、楽しい(^v^)あとは穴の中のほうが陰るようにベタ多めを意識しました。
〔担〕 自信のある時の顔してますね、なんか、(^v^)こんな顔ね。
オールドファッションで苦戦する人は多分雰囲気でディティールを描き始めてしまった人だと思うので、困ったらドーナツを正面からではなく、横から、断面図として凹凸を捉えるといいと思います。それで、必ずしもそういうセオリーでツヤが入るわけじゃないんですけど、凹んでいる場所をベタ、盛り上がっている場所をツヤって二分すると、ちょっとコツが掴めると思います。あとは、凸の頂上を上から見た形のアウトラインをとって、その外側をベタで潰すという考え方でもいいかも。
《サ》 生地の部分。これは点描が主です。ボソボソ感出すイメージで。
〔担〕 あ、ちょうど良かった。今しがたの説明の裏付けになる点描が入りました。チョコと生地の境目のところ、チョコでベタが入ってる箇所には生地も点描が入ってるんです。生地の凹んでいる場所にチョコが流れ込んでるってことです。
《サ》 あとはこれをキツネ色に見えるようなトーンを貼ればなんとかなる、はず。
〔担〕 これもまた、ココアスポンジと同じ課題点ですが、点描とトーンのドットがケンカしないといいですね…。せっかくいい具合に点描が入っているので…。
《サ》 綺麗にツートンカラーを出すようにバランス見ながら貼ろうと思います!
〔担〕 えー、さて続いては、フレンチク…クー…クラ…クーラー?クル…ル?…ラ?
《サ》 フレンチクルーラー。
〔担〕 フレンチクルーラー。クルー、ラー。フレンチクルーラー。フレンチクルーラー。はい。フレンチクルーラー。
《サ》 手前のオールドファッションが細々描き込んでいるからフレンチクルーラーはトーンで色味を付けようと思います。
〔担〕 そうですね。どっちもペンで描いちゃうとガチャガチャうるさい絵になってオールドファッションとフレンチクルーラーの境界が分かりにくくなるし…。フレンチクルーラーは表面が比較的滑らかですしね。
《サ》 あー食べたい、お腹すいたーー。
〔担〕 (笑)
《サ》 こちらも、コーティングされてるドーナツなので色味は完全にトーン任せです。さらに上に線みたいなデザイン引いてあるのは白にしたいので所々線を抜き気味にしてます。
《サ》 一番奥のドーナツを描いて皿とナプキンペン入れました。
〔担〕 最後のハニーディップが「トーンでディティール出せなかったら何もかも終わり」って感じのトーン頼みな具合ですね。ほとんどアウトラインだけっていう(笑)
完成、期待しています。
《ペン入れを終えて》
今頃気がついたけどフレンチクルーラーとハニーディップの色味が似てるのでちょっとトーン悩みそうです…。あとお皿の形を少し修正して、紙ナプキンを重ね気味にしました。とりあえずこれでペンは終わりです。うーん、トーンで可愛くなると良いのだけど…絵柄的にどうしても渋いよね……。
でも一番楽しそうなオールドファッションがいい感じなのでトーン楽しみです。(サハラ)
2016年5月20日
いよいよ完成です。
調理風景をお届けします。
■課題【甘いもの】■
〜トーン貼り編〜
〔担〕 さて、いよいよ仕上げですが。
《サ》 とりあえずちょっとまだイメージというか色の配置が決まっていないので。
〔担〕 色数のある被写体ですからね。
《サ》 陰影つけながら考えようかなと思います〜。
《サ》 これは61番の網点トーンを全体に貼って青シャで影の部分に印つけたやつです。ちょっと楽しそうだったクリームの削り出しを先にやってしまいました。
〔担〕 楽しいことだけやって生きていきたいもんですよ(笑)
「青シャ」って私たちの周りだけの呼び方なのかな。水色芯だろうが、鉛筆だろうが「青シャ」って呼んでしまうけど。ちなみに読者さん向けにザックリ説明すると、印刷時に写ってしまわないよう、この色の芯を使ってアタリを取ったりします。市販される原稿用紙のガイドラインも薄水色で印刷されている場合がほとんど。消しゴムをかけなくても印刷に出ないから結構便利で、指示書きとかこれで書くんです。活版印刷時代のセオリーだけど、デジタル時代の今も、シアンを指定して色を飛ばせる(※)から便利です。
※画像編集ソフトでは、「シアン(薄い青)系の色だけ処理する」「レッド系の色だけ処理する」という指示をソフトに出せるので、例えばこの画像の場合、「シアン系だけ明度を限界まで上げる」という処理を指定してしまえば、青シャの線が(絵が込み入っておらず、なおかつ作画者が画像処理者に対して良識的な筆圧で描いてくれてあれば、)ほとんどキレイサッパリ消すことができる。本記事の写真に出ている程度の描き込みであればソフト処理で簡単に、一瞬でほとんど消すことができる。
《サ》 手前のカップケーキのクリームは固めなので光はくっきり、左横のクリームは空気多めのフワッとモコっとした感じなので淡めに削り出していて、さらにケーキ部分は素材をイメージして粗めに削ってます。
《サ》 カップケーキの削り出しはこんな感じです。
右のカップケーキは白いクリームでは無いのでちょっと削り少なめにしてます。
〔担〕 あ、これ、白いクリームじゃないんですね。…でもそうか、ベリー系のトッピングだとベリー系の淡い色のついたクリームのレシピも多いですね。
〔担〕 珍しいですね、先に被写体の影削り出しちゃうの。
《サ》 今回の影はあまりくっきりではなくて淡くさせたいので、先「ここまでしか影落ちないライン」ていうのを削っておいて、この中を削り取ってく感じにします。
〔担〕 スイーツだからかな?軽やかさを保つための限界線みたいな。
《サ》 なんで淡くさせたいかっていうと、まずカップケーキ自体にそんな強い光当たってる描写じゃ無いからっていうのと、カップケーキの上のクリームだのなんだのをくっきり落とすのはややこしいからです!
〔担〕 ああ、なるほど。そうか、そうですね。
『影としての影』がしっかり入っちゃうと、クリームなんかは特に小刻みな段差のあるものだから、『ディティールとしての影』なのか『光の陰の影』なのか、影の機能が何なのか、どんなイメージを呼び起こしたくてつけた影なのか鮮明に伝わんなくなっちゃうんですね。
そこまで気が回っていなくて、全然理解できてませんでした。「スイーツって明るいイメージだし」みたいな浅はかなこと思ってた。
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