08.ENNEAD(エネアド)1章のハイライト6_あの夜(セトサイド)

さぁ、ついに!
エジプト神話の恋愛漫画
エネアド一章の最大の恐怖回
「あの夜」についてまとめます!

「あの夜」とは
エジプト王かつ最高神が
オシリスからセトに変わった夜。

セトを
家族を愛し兄を尊敬する平和な武神から
罪のない人間の女子供を殺す残酷な暴君
変えてしまった夜です。

🌙セトの秘密

セトがエジプト王となり、
人間や家族に暴悪な行いをするなかで

怯える神々・家族にも
だれにも決して話さなかったことが
いくつかあります。それは

あの夜にセトが知った
・アヌビスが実の子でないこと
・ネフティスが自分を裏切ったこと
・オシリスの思いと恐怖の計画

そしてあの夜に
・オシリスに手籠にされたこと
・セトの精神を崩壊させた疑いの種
・不死身のオシリスをどう倒したか

です。この秘密のすべてを
知ってるのは
セト本人と厄災の神セクメト。
目撃して部分的に知っているのは
姉でオシリスの妻であるイシスです。

名シーンの数々を時系列で振り返ろう!
索引がわりに話数を細かく入れますね!

ホルス回と同様に、
エロ考察と未成年版翻訳は別記事にします!

🌙1.セトがオシリスの部屋に乗り込んだ(1-40)

この夜、セトは
厄災の女神であるセクメトに
兄王オシリスに、妻ネフティスを
寝取られているとささやかれました。

すぐ妻に問いただすと
数百年息子として可愛がっていた
アヌビスがオシリスとの子であること
を認めました。

セトは怒って兄であり
当時のエジプト王であった
オシリスの元に乗り込みました。(1−40)

🌙2.種の件。オシリスに騙された(1-40)

しかしオシリスはいたって
落ち着いて嘘の事情を説明します。

セトの種に問題があり妊娠できなかったので、
ネフティスはオシリスの種を分けてもらった。
アヌビスはオシリスの種でできた子だが、
行為はないし、育ての父であるセトが父だと。

セトはショックを受けたものの話を信じ、
怒りをしずめて2人は酒を交わします。(1−40)

しかし
セトは酒を飲むと目眩とともに
床に倒れ、トゲトゲの植物に
捕えられてしまいます。

🌙3.恐怖!種とオシリスの赤い花(1-41)

毒の酒かと問うと、
オシリスは酒の正体を
淡々と説明します。

実はセトの種に
問題があったのではなく
生命の神であるオシリスが
セトから種(妊娠させる力)を
無断で奪ったのだと話します。

理由はオシリスは
セトとネフティスが子を授かり
つよい絆を抱くことを避けたかったから

酒はセトの種で咲かせた花
をオシリスの生命のちからでつけたもの。
セトは凍りつきます。(1−41)

⛄️脱線
精⚪︎でつけた花だよって
言われたら、きもちわるいYo。

🌙4.恐怖!「創造の力」の行方(1-41)

(淡々と怖い事実を明かしていく
オシリスの本意のすべてが怖い!)

さらに
オシリスはネフティスが
自分の種でアヌビスを産む対価として、

女神のみがもつ
創造の力(妊娠出産で新しい神を作る力)
を受け取っていました。(1−41)

🌙5.恐怖!オシリスの狙い(1-41)

その力を、
セト用に砂型に加工して
セトに植え付けることで
セトに自分の子供を生ませよう
としていました。(1−41)

これにより
・セトの子供が欲しい願いと、
・セトと強い絆(愛の結実)が欲しい
 オシリスの願い

が同時に叶えられると考えたのです。

さらに、セトが
自分との子供を生んだ後
その子供を殺さないように
対策を練りました。

(つまりオシリスは、
セトが嫌がるってわかってた!)

🌙6.恐怖!アヌビスが人質。セトは手籠に(1-42〜44)

オシリスはセトが
自分との子供を愛するように

セトが数百年のあいだ溺愛している
息子アヌビスを殺し、その人格と
魂をつかって新しい子供を作ろうと考えたのです。

生命の神であるオシリスは
すでにアヌビスの体から魂を
抜いて準備してしまっていました。(1−42)

セトは、創造の力を
自分に植え付けようとする
オシリスに全力で対抗してましたが

これを知ったことで
身動きが取れなくなります。
アヌビスが瀕死の状態
助けたくても手立てがなく
ふるえて涙を流します。

そして、
子供も諦めるし
オシリスに何でもするから
アヌビスを助けて欲しいと、
アヌビスの命乞いをします。(1−42)

結果アヌビスを助けるために
オシリスに手籠にされてしまいます
(1−43〜1−44)

🌙7.目撃者イシス

この夜、
この状況をイシスが目撃していました。
そして裏切りと自分の信頼が許せず、
4きょうだい全員に呪いをかけます。
(イシスの思い1−46は別記事で)

🌙8.オシリスの思い(1−40、1−49)

オシリスは
弟セトを愛する中で
セトを繋ぎ止めるために
エジプト王と兄という立場を得ました。

一方セトに
偉大な王で兄としてしか
認識されないことに
気づいていました。

つまり恋愛面では
自分の存在は何者でもなく、
セトの中に存在しないこと
に苦しんでいました。

そこで
数千年じっっっっくり眺めて
弟の心情や願望、心の弱さ、存在意義を
支えるもの、弱点(アヌビス)を見抜き

セトを手にするため
じっくり計画・準備していたのです。

⛄️脱線
告白する前に振られている
プリテンダーみたいな
男の悲哀に満ちてますね。
でも、セトの気持ちを無視して
妊娠させようとか
愛息を殺そうとかは
すんごいキチガイ感を感じます。

🌙9.事後。きざまれるオシリス(1−47)

セトが手籠にされた後
セクメトがオシリスを眠らせます。
また、アヌビスの魂を元に戻します。

起きたセトは
アヌビスが助かったと知り、
やっとオシリスに怒り、
寝てる間に体を切り刻みます。

バラバラで目覚めた
オシリスはセトが刻む
そばから再生し、

ここで、セトに
とんでもない話をします。

砂漠を作ったのは自分で、
元々
セトは砂漠の神ではないと。

🌙10.超重要シーン1(1−35+1−47、1−48)

オシリスは
セトは本当は
強いエジプトの守り神
戦争と砂漠の神ではなく、
弱い砂の神であると説きます。

証拠に自分のように
地上の命を枯らして砂漠を
作ることはできないだろうと。

セトの権威と力は
セト自身の力でなく
自分が与えた贈り物
だと。

🌙11.セトはオシリスをどう倒したか(1−35+1−47、1−48)

オシリスは
不死の祝福を受けた神なので
どんなに攻撃しても再生します。

一方セトはこのとき酒のせいで
砂になれず、人間のような体
なっていました。

そこでセトは今なら
人間のように容易く死ねると考え
自殺しようとしました。

自分を攻撃して
死の境(エジプトと冥界ドゥアトのあいだ)
で沈むセトをみてオシリスは動転します。

創造の力の砂を飲み
死ねない自分がセトと
離ればなれにならないように
その場で神格を捨て、

生命の神を辞めて
冥界の存在として

自分を再構築しました。
(事実上の自殺)

実はこれはセトの戦略で、
冥界にしずむオシリスを尻目に
セトは回復して、エジプトに戻りました。

🌙11.最重要シーン2(1−49)

エジプトとドゥアトの
境をはさんでセトとオシリスが
最後の会話をするシーン。

オシリスは
自分の王と兄という立場がセトの
心をつかむことにはならなかったように

セトのネフティスへの愛は錯覚
であると説きます。

その夫婦関係は
周囲に認められる願望
満足感、達成感、優越感
を担保する

セトの居場所で
幸せの定義を置いているだけで
愛ではないと。(1−49)

一方でネフティスの
セトへの愛も錯覚だと説きます。
平和の神は本能的に強いものを選ぶ

ネフティスが
セトと結婚したのは
ネフティスが
セトを愛しているからではない。
戦と砂漠の神だから。

でも本当は戦争と砂漠の神でない。
だからセトでなくオシリスの子を欲しがった
のだと。(1−35)

🌙12.まとめ:「疑いの種」

・兄と妻の裏切り
・アヌビスが実子でないこと
・兄の狂愛
・手籠事件

これらの出来事の
後も正気を保っていたセト。

セトを狂わせ
暴悪な邪神に変えてしまったのは

この最後の会話で
オシリスがセトに植えつけた
「疑いの種」でした。

セトの苦しみの正体は
自分自身への不信・存在否定です。
  ・砂漠の神でない疑い
  ・本当は弱いという疑い
  ・本当の自分は
   ネフティスにもアヌビスにも
   愛されてないという疑い

こうした疑いが頭に擦り込まれ、
無限に反復し、セトの精神が崩壊した。

無意識に「自分が本当に弱い」
と信じているから

だれかに押さえつけられたり
確信するようなことが起きると
非力になってしまう
ということが起きるのです。

オシリスがここまで
ひどい話をセトにしたのは
無力感に耐えられなくなったら
今度こそエジプトを去り
自分の元に来ると思っているから。
(やはり恐怖!)

実際にホルスH回の記事の後半、
未成年版の翻訳でご紹介したように

セトはこれ以降
自信を失い、自分を疑い、
孤独を感じ、自分の行為を責め、
苦しみの悪循環に陥っています。

ここまでが「あの夜」の全貌でした!
目撃したイシスの話はこの次の記事
あの夜Hの未成年版の翻訳で紹介します。

⛄️脱線
「疑いの種」私の考察

あくまで
わたしの予想ですが

オシリスが砂漠を作ったという話が
影絵のように繰り返し出てきますが、
これは嘘と思ってます!

セトは砂漠の神でしょう!
なぜなら1−45でセクメトが
セトが消えたら砂漠が減ると
言っています。

また1−62で
ホルスもケンミスでセトの中に
美しい砂漠を感じとってます。

砂の神でなく
砂漠の神であることは
まちがいないでしょう。

さらに極めつけは
2−68〜70の半神から神になるとき
すべての記憶を失うという設定です。

兄のオシリスは
セトより先に神になって
半神のセトが神になる時
砂漠ができる姿を見ているのでは
無いでしょうか。

セトには記憶がないから
こんな嘘がつけてしまうのかなと。

セトはこれが
ネフティスにばれて
振られたくないから
絶対に言えないのでしょうけど

もしセトが
自分は砂漠の神でないのか?
と他の古い神に聞ければ、だれか
答えてくれそうだなと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?