【人機一体】失われた未来を取り戻せ!~巨大ロボットが世界を救う~【後編】
人型重機が普及すれば、肉体の差による不平等は解消される。
筆者のように運動が苦手な人間でも、人型重機を使えばヒーローみたいに人助けができるかもしれない。想像するだけでワクワクする未来である!
だが今のロボット業界は、工場で用いられるアーム型などの位置制御ロボットが主流だ。そんな世の中で、全く別系統の力制御ロボットを社会実装するのは容易ではないだろう。
そもそもなぜ金岡博士は、このような困難な挑戦をしようと考えたのか?
■悲劇を繰り返さないための力制御ロボット
かつて金岡博士は立命館大学ロボティクス学科の教員として、力学ベースのロボット制御工学を研究していた。
だが位置制御ロボットやコミュニケーションロボット、AI技術がもてはやされ、力制御ロボットが“無視されている”状況に疑問を感じていたという。
そんな中、東日本大震災が発生し、原発事故が起きた。
人間が生身で入れない汚染された原発施設では、ロボットが活躍するはずだった。
だが市場に流通している位置制御ロボットではドアを開けることさえ困難。また現在のAI技術では、原発事故の現場で周囲の状況をふまえた臨機応変な対応などできるはずもない。
結局ロボットは活躍せず、原発事故による汚染が広がってしまった。
力制御ロボットの人型重機が社会実装されていれば、原発事故の現場にも適応でき、被害を最小限に留められたのではないか・・・。
次に大きな災害が起きた時、最悪のシナリオを繰り返すわけにはいかない。
「必要な技術はもう揃っています。ただビジネス面での壁があるせいで、力制御ロボットの社会実装が進んでいないんです」
大学で新しい技術を研究するのも大切だが、それだけで社会を変えることはできない。
テクノロジーはもう壁を越えている。力制御ロボットを普及させるには、ビジネス面の壁を越える必要がある。
だから金岡博士はスタートアップを起業し、具体的なビジネスに取り組み、力制御ロボットが持つ無限の可能性について発信するようになったのだ。
では力制御ロボットのシンボルである『人型重機』が社会に実装されたら、私たちの未来はどう変わるのか?
■人型重機を新たな生活インフラにする
「『人型重機で何ができる?』ではないんです。『人型重機がないと、何もできない時代』に変わります」
現在多くのデスクワークはパソコンがないと仕事にならないだろう。それと同じことだという。
人型重機は『人の外的身体』として巨大な力も出せるし、触れた物の反力を感じながらの繊細な力加減も可能だ。そして何より汎用機械であり、操作者の熟練と創意工夫で、何でもできるようになる。
たとえば土木建築の現場では巨大な資材を運び、人のような器用さで組み立てられる。災害現場でも大きな瓦礫を撤去し、被災者を優しく救助できる。
人型重機があらゆる力仕事に対応できるのであれば、もはや生身で行動するのは危険で非効率だ。
『人型重機で何ができる?』ではなく、『何でもできる人型重機を使うことを前提として社会を再構築する』が正解なのだ!
PC・スマホなどの通信デバイスと同様に、人型重機の使用を前提とした社会になるのであれば、ビジネス面でも無限の可能性を秘めていると言えよう。
しかし、これが金岡博士の思い描く終着駅というわけではない。
金岡博士が人型重機の普及を目指す裏には、もっと根源的な熱い想いが隠されていた。
■失われた未来を取り戻すために
「フィクションの中で多くの人々が熱望し、繰り返し描かれてきたことを我々は実現しようとしています。多くの人々に『あの時夢見た未来がやっと来たんだ!』と思って欲しいのです」
金岡博士には、多くの人々がロボットアニメに託した夢を現実世界で実現したいという願いがある。
だからこそ『博士』を名乗っているし、社屋である『秘密基地人機一体』も寝転んだロボットを模した形状なのだ。
ロボットアニメ『機動警察パトレイバー』の世界では、1998年にすでに巨大ロボットが社会実装されていた。
現実世界では2020年となった今でも、未だ巨大ロボットは普及していない。
人々がロボットアニメに託した夢は今も失われたままである。
人々は「大人」になり、巨大ロボットは絵空事として「非現実」のレッテルを貼られ、記憶の片隅にしまわれている。
しかし忘れないでほしい。
現代の先端ロボット工学技術は、巨大ロボットとしての人型重機を実現するレベルにすでに到達している。
そして、金岡博士率いる株式会社人機一体は、技術・ビジネス両面から、巨大ロボットの社会実装に向けて着実に進み続けている。
誰もが自由に巨大ロボットを動かし、災害時には巨大ロボットを操るヒーローが駆けつけてくれる世界。
そんなロボットアニメのような世界が実現すれば、私たちはもう二度と同じ後悔を味わうことなく、失われた未来を取り戻すことができるはずだ。
漫画=こうや豆腐(@toufu_0141)
取材・文=茶谷葉(@tyatani_you)
編集=中嶋駿
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