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自然の力で文明はさらに進化する!都市に海をつくる「イノカ」の挑戦【後編】

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アクアリウムをつくる「アクアリスト」の知見と、高度なテクノロジーを融合して限りなく自然の海に近い環境をつくり出す技術をもつ、株式会社イノカ

従来のような観賞用としてだけのアクアリウムのみでなく、自然な海が身近に存在することで、わたしたちの暮らしにもさまざまな恩恵があるということですが、一体どんな「イイコト」があるのでしょうか?

■テクノロジーの力で海の生き物をより強く、元気にしたい

高倉さんが代表を務めるイノカの「人工生態系」技術は、さまざまな海の環境を水槽の中で再現する技術。美しいサンゴ礁や多くの魚がすむ海を再現することには、どのような意義があるのでしょうか?

「人類は科学の力でどんどん文明を進化させ、自然の脅威にも立ち向かってきました。でも一方で、人類が今の生活を続けるなら地球2個分の資源が必要だともいわれています。僕達人類がある程度のガマンをすることはもちろん必要ですが、もうひとつ、自然の側をアップデートするという方法も考えたいんです」

自然をアップデート?それってどういうこと?

「自然界のバランスはとても繊細。それゆえに、ほんの少し環境が変わるだけで崩壊してしまうものでもあります。例えばサンゴは水温などのわずかな変化で成長が止まったり、死んでしまったりします。そこに僕たち人類が少し手を貸すことで環境を安定させたり、生き物が環境の変化に適応したりできるようになれば、自然にとっても生存チャンスが広がります」

なるほど、自然の治癒力や防御力のアップにも、テクノロジーが一役買うということですね! 

■表参道にサンゴ礁が現れる?イノカが描く「都市と海の融合」

高倉さんによれば、人工生態系技術によって各地で海を再現できるようになれば、研究のチャンスも広がるとのこと。

「僕たちが研究の軸にしているサンゴは年に1度しか産卵せず、しかもサンゴ礁のある海は限られています。

これまでは人間が海へ出向いて時期を待ち、観察や研究をしていましたが、人工生態系技術によってあらゆる場所で“海”を再現すれば、世界中のどこでも研究を進められます。そのための目標として僕らが掲げているのが『都市のなかに海をつくること』なんです」

都市に海!というと、ベネチアのような街を想像しましたが…?

「僕が思い描いているのは東京都心、例えば表参道に大きなアクアリウムがあるようなイメージですね。人工生態系技術によってつくられ、環境の操作が可能な海があれば、沖縄でしかできなかった研究を東京にいながら行うこともできます。

また、環境を操作することで、サンゴの産卵のように希少な現象をもっと頻繁に観察できるようになる可能性も。研究のスピードはさらにアップしていくと考えていいはずです」

“海”にまつわるいろんな分野の研究者が「イノカの方舟」に集まって研究に取り組み、議論を交わす。新たな発見や、分野を超えたコラボレーションにもつながりそうです。

■自然のしくみを知ることで、文明はさらに進化する

都市に海がとけこむ未来。研究者にとっては身近な場所で研究に打ち込めるというメリットがあることがわかりましたが、一般に暮らす人々の生活には何か変化があるのでしょうか?

「自然との物理的な距離が縮まることで、僕たちは自然をより身近に感じるようになります。自然のなかに身を置くことによる“癒し”の効果もあるでしょうし、自然に存在するものの形や生態は、人間がつくるプロダクトのヒントになることもあるんですよ。異なる分野の仕事をしている人にも、アイデアを与えてくれるはずです」

確かに、少ない材料から強度の高いモノをつくるための「ハニカム構造」は、ハチの巣をヒントにしたもの。自然から生まれるアイデアは、自然そのものを見ていないと浮かんできませんよね。

「水生生物からもいろいろな発見がなされています。例えば『オワンクラゲ』から発見された緑色蛍光タンパク質は、医学や生物学の分野で活用されています。自然界から人間が得るものはたくさんあるし、それを見つけるためにも、イノカの人工生態系技術が役に立つと感じています」

■まとめ
「水生生物の研究はまだまだ白地が多い。研究が進まないうちに環境変動によって失われてしまうのは僕たち人類にとって大きな損失です。だからこそイノカの技術で海の生き物との接点を増やして研究を進め、生き物がより強く元気に生きられる環境づくりに取り組みたい」と語ってくれた高倉さん。
美しいだけでなく、いろいろな恩恵を人類にもたらしてくれる海を未来へ残したい。そんな思いがこもった「イノカの方舟」。自然と文明が融合した未来の都市の姿、ちょっとだけ想像できた気がします。

漫画=しのみやななせ@nanase774938
取材・文=藤堂真衣(@mai_todo
編集=中嶋駿

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