I Have Just an Idea,Takeru.(後編)
2010年02月02日に某mixiに投稿した侍戦隊シンケンジャーSS。
前編(↓)から続いてます。そちらから読んでくれると嬉しいです。https://note.com/manet26/n/n9dd08c5904d1
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薫 「丈瑠…考えがある」
半身を起こした姿勢から布団をつかんで、ずいっと丈瑠の真正面に顔を寄せ。
目をきらきらさせながら、薫は一気に言い放つ。
薫 「わたしの子供になってくれぬか?」
丈瑠「は?」
薫 「養子縁組だ。そうすればおまえが志波家の当主になれる。」
丈瑠(ちょっとパニくった口調で)「それは…あの…えーと、わたくしも一応そのことは考えたのですが、おそれおおいというか、つるぺた、いや、まだはやいというか、きっと他にもっといい人が見つかった時に後悔するというか、オレ…ええ、そうじゃなくて」
薫 「何を言っている?」
丈瑠「え、だから…ごほ、…志波家に婿養子に入れ、とそうおっしゃってますか、姫」
薫 「…」(思いがけないことを聞いて真っ白になったらしい
丈瑠「…姫?」
ようやく理解して、見る見るうちに真っ赤になる薫姫。
薫 「ちがーぁぁぁぁうっ!」
その時、天井の羽目板を空けて、くるりと回転しながら姫の脇に控える朔太郎。
恭しく献上するは…ご存知特大ハリセン。
すぱぁぁぁんっ!
と、左腕一本で一気に振りぬいて、痛みに真っ青になって倒れ込む薫姫。
あわてて支えようとする丈瑠から本能的な動きで跳び退ろうとして、ふっと意識が遠のき、朔太郎に支えられる。
朔太郎「姫、お静かに。丹波殿が何事かと心配されます。」
薫 「え、あ、ああ。そ、そうだな。すまぬ、礼を言うぞ」
丈瑠「姫」
薫 「誤解するな、丈…影。」
朔太郎「影(苦笑)」
薫 「うるさい。お前なんかやっぱり影で十分だっ」
丈瑠「申し訳ありません」
(朔太郎、縁側の障子を開けて退散)
薫 「もう一度言う。養子縁組だ、影。私の息子になれ。その上で私が当主の座を退けば、おまえが志波家の19代目当主だ。そうなれば丹波にも文句は言えぬ。日下部も黒子衆も異存は無いであろうし、侍達もきっと喜ぶ!」
丈瑠「しかし姫…私は」
薫 「このまま座して、ドウコクにこの世を蹂躙されるわけには行かないっ!」
丈瑠「…」
薫 「そうだろうっ」
丈瑠「はい」
薫 「ならば、もはや封印の効かぬ奴を相手に私たちに出来ることは、死力を尽くしてドウコクを倒すことだ。だから皆が本当に力をあわせて闘えるように、皆の力をひとつに集められるようにっ…悔しいことだけれど、私では出来ないから」
丈瑠「姫」
薫 「あやつらとともに闘い、培ってきた信頼、絆。それこそがきっと、お前の力になる」
薫の強い瞳。
丈瑠への、そして仲間達への信頼。そうなれなかった自身への悔しさと少しの未練。
ゆっくりと、目を上げ、薫の瞳を受け止める丈瑠。
丈瑠「姫」
薫 「うん」
丈瑠「そのお話、しかと承りました。」
薫 「よし。」
丈瑠を押し切れちゃったのは「コドモの強み」だと思います。法律的にダメだとか、そんなこと知りません。
理屈じゃなく、ただ純粋にドウコクを倒し、この世を守る。
そして人々の、もちろん自分達の未来に幸いあれかしと願う。
その無垢な思いこそが丈瑠の決意を促し、周りを動かし、きっと不可能を可能にする。
丈瑠「それにしても、姫」
薫 「なんだ」
丈瑠「皆びっくりするでしょうね」
薫 「ふふ、そうだな。きっと丹波とか息も出来ないぐらいに驚くだろう。…くく、あはは(笑)」
丈瑠「いい笑顔です」
薫 「え?」
丈瑠「いい笑顔です、と申しました。その笑顔を守るために、ずっと姫の影をしていたのだなあ、と思いましてなんだかやっと俺の影としての人生に納得がいった気がします。」
丈瑠の口元にも柔らかな笑み。
薫 「そうか。そう言ってくれると、少し心が軽くなる。長い間苦労をかけて、またここで大変な役目を負わせてしまうが。よろしく頼む。」
丈瑠「はい。お任せください、俺と俺の仲間達に。」
薫 「ところで…ひとついいか?」
丈瑠「なんでしょう」
薫 「たったいまから、お前は私の息子になった。
丈瑠「はい…?」
薫 「だから、今後は私を姫と呼ぶな、母上と呼べ」
丈瑠「ぅ…、し、しかし姫」
薫 「姫ではない、は・は・う・え・だ!」
丈瑠(不承不承に)「…母上」
薫 (満足げに)「うむ、それでいい。それでな、丈瑠。対ドウコクの闘いの為に、このようなディスクを用意して・・・」
(一刻の後)
御前の間に薫の声が晴れやかに響く。
「殿の御前であるっ!頭が高ぁぁぁいっ!!」
「ははーっ!」
皆の笑顔を受けて、丈瑠はあらためて思う。こいつらと一緒に闘ってきてよかったと。
この世を、人々の幸せをこいつらと守ろう、そしてこいつらの笑顔を、俺が守ろうと。
そして物語は最終決戦へと向かう。
「I Have Just an Idea,Takeru. 」Fin.