NHK「ここは今から倫理です」第1話~第4話を見ました。
えー「ここは今から倫理です」。雨瀬シオリさんの原作もとても好きな作品なのですが、ドラマ版も原作をうまく使いながらさらに意欲的な作品作りでとても面白く拝見させていただいてます。
FBの方に感想をサクッとUPしてたんですが、想定通りだんだん長文になってきまして、遂に5話と6話はこちらの方にも転載することに。
というわけで、ついでにこれまでの分もまとめてUPしておきます。
第一話は「合意ですか?」のやつでした。
テーマは「愛と教養」、マックス・シェーラーです。
だいたい原作通りな展開(喫煙所が厳しめくらい)だったけど原作の一話に三話をハイブリッドしてるのがすごい。
ちなみに原作三話のテーマは「正義」。しかも「徳は善なり」と老子を引用してきてます。東洋思想かあ。じつはワタクシ、学部の専攻が「倫理神学」で卒論で「社会正義と教会法」を取り上げてたのでコッチがサブテーマ扱いなのはちょいホッとしたり(でも卒論は「教会法とエイズ」だったからなあww
第二話の「学校は眠い」では「夜遊び」に「母子家庭」の要素が増えて母親との交流がイイ感じに。テーマはおなじみのキェルケゴールで「自由と不安」。人間ってめんどくさいよねw
それにしてもスタッフやりたい事やってる感ある!
こうなるといつ出るのか気になるのが原作二話の「身投げ」のハナシ。期待出来るなあ。
第3話は「美一善」。
個人的にはギリシャ哲学の一番苦手なトコ。ワタシは己がスノッブであるから故に、バロックに惹かれるのです。そう、あなたの歪んだ笑顔に!破綻したコトバに!(変態!
正直、原作にこんなハナシあったかなってくらいな印象で、探してみたら二巻の一話目でした。
でもね、細かい演出とか設定とかがけっこう違っていて、結果印象が大きく変わったんですよね。
いちばんの違いは「貴方は綺麗です」じゃなくて「きみは綺麗だよ!」になったトコ。
コレ、グッと来ました。
だよねだよね!あの台詞を発するのは高柳先生ではないよね!
あと、微妙な違いなんだけど「姉妹」が逆転してるんだよね。
原作だと「お姉さんが読モで有名」だったのがドラマだと「妹が『日本一かわいいJK』として有名」になってハードル上がりまくり。
ちょうど学園祭でミスコンがあるって背景の立て方も上手だと思う。
長女の立場になることで当人の「辛さ」や「悩み」「我慢」の具合がプラスされた感じだし、動機の納得感が強くなったと思う。
原作だと、正直彼女はタダの愉快犯な印象だったもんなー。
やー。よかたなー
第4話はいわゆる性悪説がテーマです。
カントに荀子にハンナ・アーレント、有名どころ揃い踏みですがそれは完全に味付けに過ぎない(出てこないけど個人的には、親鸞上人の「悪人正機」という考えがすごく好きです。イエスの教えに近い感じがする)。
原作での主眼は、倫理教師である高柳先生とおそらくは麻薬の密売を生業とするジュダ。この二人の口論。
「人間の本姓は悪だ。それはだれも否定できない」というジュダに、「であるが故に善を希求するのだ」という高柳先生。「荀子が性悪説を唱えて何年が経った?」と問い返し…そして「こうして口論することだけが俺にとって唯一の倫理的な行動…」と告げ「また飲みに来てよ」と切なく笑う。
ドラマでジュダ(言わずと知れた「裏切りの12使徒」)の名を持つ闇の世界で生きているといわれている青年を演じた成河さんがものすごくかっこいい。
セットには思えないけど、どこにあるのか不思議なバーのカウンターを自在に使いながらの身体性を存分に生かした演技は本当に秀逸で、原作でもかっこよかったけど今一つ「なぜあんなに人を引き付けるのか」はわからなかったジュダさんの魅力をわからせてくれた気がします。そりゃ「教え子を奪われました」ってセリフにも納得です。
あと「ちゃんと考えなさい!自分にとってなにが善か悪かなんて!」ってたかやな先生の叫びの「自分にとって」が結構切ないよね。
「わからないかもしれません、ですがわかろうとすることはできる、だから問い続けます。」
「悪は憎むべきだけど、その悪のおかげで彼女は今も生きてる。」。
高柳先生は常に断罪する側の「善」や「正義」に立たないけれど、できる限り己を律して「善」の立場で生徒の声を聴く。そして「善」に立つが故の答えの出なさ、声の伝わらなさを噛み締めながら生徒達に向き合うのだなあ。
今回、いなくなったダメな兄とその友人たちや、おなじみのクラスメイトたちが「彼を取り巻くリアル」を演じていて、特にツレからLINEで送られた真剣だけどバカっぽいメッセージが「わかんないす、すみません」から「学校いきたい」へ変わっていく気持ちの流れを本当にしみじみと自然に伝える形になってとてもよかった。
うん。ラストまで気合い入れて観よう!よろしく高柳先生!
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