女騎士マルガレータの華麗なる食卓#2ミートソース
突然ミートソースが食べたくなった。
おおよそ半年に1度か2度マルガレータはミートソース欲に苛まれる。
この欲求に囚われるともう終わりだ。満足するまでミートソースを腹に詰め込まないと何も手に付かなくなってしまうのだ。
恐らくこれは郷愁なのだろうと内なる欲望の獣を抑えながら考える。
故郷を飛びだし、紆余曲折を経て迷宮騎士となったマルガレータである。
これまでの旅の道中、飯屋でミートソースを食べる機会は多々あった。だっって当然だ、自分はミートソースが好物だと思っていたのだから。
でも違った。自分はミートソースが好きなのではなく母親の作るミートソースが好きなだけなのだと気づいたのは、迷宮都市に辿り着いてしばらくしてからの事だ。
母親の作る料理はよく言えば豪快で悪く言えば雑だった。
材料もその時々で変わるし、調味料も目分量で入れるものだから同じ味の物が出てきた試しなど一度も無い。しかしそんな味のブレも含めて母の料理なのだなと今になって思う。
まぁ、そんな訳で今日はミートソースを作るのだ。
大蒜、生姜を好きな量を好きなだけ刻んだら油をしいた鍋に入れ弱火で炒め、香りが出てきたら細かく刻んだ人参を入れる。人参に色が付き揚げ人参のようになるまで加熱するが正直この工程にどんな意味があるのかはよく分かっていない。このような調理法があると聞いてお洒落だなと思ったから真似している。マルガレータは雰囲気で調理を行っているのだ。
次に挽肉を投入する、使うのは何肉でも良いと思うがマルガレータは合挽肉が好きだ。一度に複数の種類が食べれると思うと何となくお得な気がして嬉しいのだ。
肉に火が通ったら細かく刻んだ残りの食材を入れる。母親は赤茄子の他にも玉葱、塘蒿、茄子、甘藍その他なんでも有り合わせの食材を入れていたが、今回はシンプルに赤茄子と玉葱を入れることにした。
ぐつぐつと煮える鍋に調味料をあれこれ入れてやって最後に塩で味を調えてやったら完成だ。
今回はミートソースをパスタにかけて食べることにした。粉チーズを山ほどかけてやるのがマルガレータ風だ。
咀嚼し飲み込むたびにソースが体に染み渡り内なる獣が大人しくなるのを感じる。帰宅した時は地獄の番犬もかくや言わんとばかりだったものが今では可愛らしい座敷犬にまで落ち着いてる。
腹をパンパンに膨らませ満足感に包まれながらマルガレータは思った。
明日はミートグラタンにしよう。