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私の思う招き猫の魅力
江戸時代より日本の縁起物として愛されている招き猫。
招き猫はもともと庶民信仰の対象として始まったものの、愛玩動物でもあったことからか、いつの間にか一つの「キャラクター」として扱われるようになり、江戸時代から今に至るまで様々な作品が作られ親しまれています。
また、9月29日を「9(来る)29(福)」という語呂になることから、「福を招く招き猫の日」として制定されているほど定着しています。
招き猫の由来としては「猫が前足で招くようなしぐさをしたところ、客人が来た」という中国の故事が元になっているようですが、それ以外にも招き猫発祥の地と言われている場所があり(世田谷の豪徳寺とか浅草の今戸神社などがそれですが)そちらでもそれぞれ謂れがあり、それぞれ異なっています。どれが本当のルーツなのかは分かりませんが、逆にルーツが色々あるのも人気のもとなのかもしれません。
一般的に招き猫の縁起としては、右手挙げは「金運招き」左手挙げは「千客万来」といわれ、色によっても謂れがあります。
白猫は「福招き」赤猫は「健康招き」黄猫は「金運招き」黒猫は「厄除け」。
また耳より手が上に上がっているものは「より遠くの福を招く」などと言われ、謂れが細分化されているのでその分こだわりのコレクターも多く、今では外国人観光客にも幅広く受け入れられています。
そのように根強い人気のある招き猫ですが、一番の魅力とは何なのでしょうか。
「縁起物で万人に愛されるキュートなキャラクター」。
確かにもうそれだけで魅力的です。
ただ私は、作り手側として言わせてもらうと
「制約があるから」
といえると思います。
昨今インスタグラムなどSNSを見てみると、世界中に猫マニアがいるのが分かります。そして世界中の様々なクリエイターが猫をモチーフに様々な素材で作品を作っています。
色んな猫アーティストがいて、個性的で面白い作品を見ることが出来ます。そしてそれがとても人気なのが分かります。
私も仕事柄都内や観光地で展示会を開きますが、猫好きな外国人観光客が招き猫をよく購入してくれます。もちろん「縁起物」として認識していない方もいます。でも中には招き猫コレクターもいて自宅に多数の招き猫を飾っている写真を見せてくれる外国人もいます。そんな方たちに多い感想が、
「猫作品が好きだけど、招き猫は特に面白い。同じ形なのにみんな違う」
というものでした。恐らく魅力はそこなのかと思います。
招いていなければならないので自由な形が作れない。ある程度決まった形がある。その制約の中でどれだけ自分の個性を出せるのか?。あるいは面白い作品を見いだせるのか?。
そこに面白さがあり、作り手の真骨頂があると思っています。
猫作品の中で「招き猫」は一つのジャンルを確立しているかもしれませんが、作品としては実は圧倒的に少数派です。あまり目にすることがありません。あっても同じようなデザインばかりです。ただ時には「こんな発想するとは」というユニークな招き猫を見ることが出来ます。
江戸時代から続いているお馴染みの招き猫ですが、日本のみに留まらず世界にアピールできるキャラクターだと思います。また作り手としても伸びしろが存分にあると思っています。
余談ですが、以前スペインの作家さんが当方の招き猫に色付をしたことがありましたが、彩色が独特で驚いたことがあります。国によっても色彩感覚が違っていて、それだけでも面白い作品が生まれるんだなあと思ったことがあります。