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16 せんべろ古本トリオツアー 武蔵小山編(その3)

大岡山駅から池上線に乗り、旗の台駅へ出た。リサイクルショップ系の「みやこ書房」を覗くが、ここでも収穫はなし。中原街道をテクテク歩いて(今回のツアーはよく歩く)、「ブックオフ中原街道長原店」を訪ねる。

このコラムをお読みの方々が、ぼくのことをどの程度ご存知かはわからないが、ぼくには「日本一ブックオフに行く男」という異名がある。古本屋をやっていたりもするので、その仕入れ活動の一環でもあるわけだが、北は北海道、南は沖縄の支店まで出かけていく。そこまでする必要は全然ないのに、だ。

現在,東京都内にある107支店(当時)はすべて訪問済みだが、それでもブックオフがあると嬉しくて、訪問済みの店でもつい入店してしまう。ブックオフには貴重な古書が埋もれているようなことはほとんどないので、マニアックに古本と接する人たちの中には、ブックオフを素通りする者もいる。けれど、古本トリオの相棒二人はいつも付き合ってくれて、とてもありがたく感じている。

ブックオフでは2冊買った(ぼくが欲しがるような本はブックオフにこそある)。長原駅から再び池上線に乗り、今度は蓮沼駅で下車。かなり日暮れが近づいてきた中、「月の輪書林」を訪ねてみるが、やっていない。ガラスドアから店内を覗き込んでみると電灯はついているものの、入り口のすぐ手前まで本の束が積んであって、入れそうにないのだ(あとで調べてみたところ、古書市への出店や目録販売が主で、店舗販売はしていなかった)。

さらに歩いてたどり着いた「エコブック蓮沼店」では、収穫なし。「揚羽堂」はシャッターが開いておらず、こちらも古書市と通販のみのようだった。ここまで来たらどこまでも行ってやれ! とばかりに歩きに歩いて蒲田に到着。

ぼくは蒲田にある日本工学院専門学校の出身なので、この街には懐かしい思い出がたくさんある。在校時には周辺に何軒もの古本屋があったが、いまはどこも閉店してしまって見る影もない。かろうじて現存していた「一方堂書林」「南天堂書店」をハシゴしてツアーを終了させた。もう足がクタクタだ。

ツアーの終わりには、いつも打ち上げをする。ここまでにもそれなりに酒は飲んでいるが、やはり打ち上げで飲む酒は別肝臓だ。一刻も早く飲みたいという気持ちと、だからといっていい加減な酒場で場を濁すわけにはいかないぞ、という酔っぱらいのプライドがせめぎ合う。

三匹の酒の虫の眼力にかなって打ち上げ会場に選ばれたのは、蒲田駅西口の路地に店を構える「源氏酒蔵」という酒場だった。それぞれ好きな酒を注文して乾杯したあとは、その日の戦利品を見せっこする。古本を肴に飲む酒よりうまいものが、この世にあるだろうか。

この店では、どれくらい飲んだだろうか。酎ハイにして3杯くらい? 日本酒もお燗して飲んだっけな。非常にホスピタリティの高い店で我々はたいへん満足したが、店を出たあともまだ少しばかり腹が減っていた。そこで、駅を通過して東口にある「ニュータンタンメン本舗」へ向かった。ここでも酎ハイなどを飲みつつ、辛くてうまいタンタンメンを食ってツアーを終了させた。

開いてた店、開いてなかった店。すべてを合わせて訪問した古本屋は16軒。酒場は4軒まわったことになる。毎度のことながら実に楽しい旅である。これもまた酒の楽しみ方のひとつと言えるだろう。さて、今度はどこへ行こうかな──。

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とみさわ昭仁
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