2023 二重奏新曲 振り返り

2023年は、マンドリン・マンドラ・マンドロンチェロ・ギターを組み合わせた二重奏(10曲)を作ることを目標にしていました。
予想より早いペースで作り終わったので、本来は年末にまとめ記事を作るつもりでしたが、早めに振り返り記事を公開します。


1.Rabbit Race

公開日:1/9
編成:マンドリン×2

2023年は卯年なので兎の曲、という安直なテーマ設定です。今年一曲目なので肩に力が入ったか、なかなか曲のテーマがまとまらなかったのですが兎と決めてからはスルスルと作業が進みました。
兎という言葉からは、跳ねる、耳が長い、小型など、一般的にイメージされる印象がいくつかあります。
この曲では跳ねる感じをメロディのリズムで、フレーズで小さなかわいらしさを表現できたのではないでしょうか。耳の長さを音楽で表現するのは難しいですね。

2.小さな約束

公開日:1/22
編成:マンドラ×2

2022年は新編成チャレンジと銘打って二重奏もたくさん作ったので、2023年に作る二重奏と編成が被っています。
同じ編成で作った曲が同じ曲調になることは避けています。(ドラ二重奏では、2022年はハミング・ロードという曲を作りました)
ということで、今回はそれと差別化してしっとり系にすることは最初から決めていました。イントロをとりあえず作って、あまり大仰なテーマではなく、個人的で小さな世界観が良いと思ったので、その方向性でメロディを作っていきました。
タイトルの「小さな」とは、子供の、という意味です。軽い、とか大したことない、と受け取られると意図と違うので、もっと良い言葉選びはあったかもしれません。ただ大人視点では軽い約束が、子供にとっては重いこともある、というニュアンスもあるので、解釈が違いすぎるということもないです。

3.スパイラル

公開日:2/1
編成:マンドロンチェロ×2

シンコペーションが多く、16分音符のフレーズも多いのでそれなりに難易度が高いです。たまにはこういう勢いがある感じの曲も書かないと飽きられてしまいますので、普段は弾きやすいことを重視していますが定期的にこの手の曲は書こうと意識しています。
昨年「夜光」というAORな雰囲気の曲をチェロギターで書きましたが、チェロと相性が合うジャンルがまだまだ開拓されず残っているように思います。今後も色々と試していきたいですね。

4.光の声

公開日:2/14
編成:マンドリン、マンドラ

今回はかなり抽象的なタイトルになりました。曲が持つイメージがかなり抽象的だったので、そういう時に無理に具体的でわかりやすいタイトルにする必要はありません。「光」だけでも良いかなと思いましたが、宇多田ヒカルさんの「光」とかぶるのでやめました。
光という言葉には、明るさとともに温度感も含まれています。温かいか冷たいかは曲を聴けばわかりますから、言葉で説明する必要はありません。必要最低限で、しかも良い印象を与えるタイトルを考えていきたいものです。

5.孤心

公開日:2/24
編成:マンドリン、マンドロンチェロ

詩人、大岡信さんの「うたげと孤心」という本から、タイトル先行で作りました。昨年は同じ編成で「古道巡礼」という曲を作ったので、違う雰囲気にするという予定もあったのですが、本を読み終わったらすぐに作りたくなったので、同じく和風な雰囲気になりました。同じ編成で同じ雰囲気の曲を作るというのは、幅を広げるためにもできれば避けたいものです。

6.Rolling Hills

公開日:3/5
編成:マンドラ、マンドロンチェロ

マンドロンチェロで伴奏をするというのは、なかなか音を考えるのが難しいものです。簡単で弾きやすいパターンはいくつかありますが、とりあえずはそれを使わない方向で何かできないか、と悩む時間が作業の大部分を占めていたかもしれません。
曲の雰囲気は、ニューミュージック(今ではシティポップとまとめられているかもしれません)のようなイメージで作っています。歌だとするともう少しテンポは下がるでしょうか。

7.街角のアラカルト

公開日:3/11
編成:マンドリン、ギター

2022年の「新編成チャレンジ」では、私が今まで作ったことがない編成に挑戦する企画だったので、マンドリン&ギター二重奏は作りませんでした(過去に雨の迷宮、Snowbellなど作曲経験あり)。
私の基本方針として、あまり難しくなくシンプルに、というテーマがあるので普段は転調をあまり使わないようにしていますが、今回は反対に転調を多用する作り方をしました。その中でどこまでシンプルにできるのか?という工夫のしがいがありました。
曲調はフレンチポップスから出発して後は流れで、という感じで、悩みを抱えながらも街角から街角へ、目を楽しませる散歩、というイメージにまとまりました。
こういう色々計算が必要な作曲は結構楽しいものですが、複雑になるので正直あまり人気は出ないのが惜しいところ。かといって単純なものばかり作っていると飽きますし、たまには売れ線を放棄した曲も作らないといけません。

8.あすか

公開日:3/23
編成:マンドラ、ギター

「あすか」は奈良の飛鳥です。わりと日本の古代史や、その時代の古典に興味があるので、飛鳥はいつか行ってみたい土地の一つです。日本人とは何か、という問いには様々な視点から考えることができると思いますが、飛鳥時代に一つの代表的なイメージの源があるという印象があります。(あくまでも大和民族的な視点からで、まつろわぬ者を含めた、その他日本列島に存在した様々な民からの視点ではありません)
この曲はいま飛鳥にいる、という曲ではなくて飛鳥に想いを馳せる曲で、それは空間だけでなく時間を超える想いです。

9.カゼオヨギ

公開日:4/1
編成:マンドロンチェロ、ギター

「夏」という言葉を使わずに夏を表したかったので、「泳ぐ」というワードを使ってみました。「夏」以外にも、「移動」「水」など様々なイメージがこの一語で想起されるのではないかと思います。タイトルをカタカナにしたのは、「風泳ぎ」だと「ふうえいぎ」と読み間違うのと、「泳ぎ」というイメージがあからさま過ぎる感じがしたからです。「カゼオヨギ」なら、少し考えれば「カゼ」と「オヨギ」に分解して理解できますし、読み間違う可能性もありません。理想的には、「風」と「泳ぐ」というイメージを、このタイトルを目にした人の頭の中で重ね合わせたときに、何か新鮮な印象が生まれたら良いな、と思っています。

10.Sunflower

公開日:4/8
編成:ギター×2

今までに「海辺の時計台」「秋のワルツ」などでギター二重奏の動画は公開してきましたが、ギター二重奏のために作った曲はこれが初めてです。
マンドリンとギターの違いは色々とありますが、弦をはじく手応えが、弾いていて最も強く感じる差異です。ギターからは「糸」、マンドリンからは「線」を感じると言いましょうか、ギターの方が張りが弱く、指で直接触れることもあり、より自然で人間的な印象があります。(良し悪しではなく)
そのギターのための曲を作るにあたって、マンドリンに比べると音の弾力性を意識したフレーズの作り方になりました。今回のフレーズはマンドリンで作っていたら思いつかないし、弾いても別物になります。


終わりに

以上、今年作ってきた二重奏の新曲、10曲の紹介でした。
二重奏というアンサンブルの最小単位は、制限はあるもののどんな環境でも強くしぶとく生き残れる力を秘めているように思います。

今後も時間をかけて、徐々にレパートリーを増やしていきたいと思います。

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