藤田陽一監督に聞いた「楽しさ」と「おもしろさ」の違い。
先日、アニメ「おそ松さん」でおなじみの藤田陽一監督が不動前トリオで毎月第1、第3水曜日にやっているパーティー「水曜からブットンデル」に来てくれて超久々にお話ししたんですが、おそ松さん一期と二期の跳ね方の違いから、ある事を学んだ、という話をされて、深く感銘というか衝撃を受けた。
「楽しい」と「面白い」の違いの話だ。
要は面白さだけをひたすら追求しても大衆は付いて来ない、楽しさを前面に出せば大衆は付いて来る。という内容だった。
ご存知の通り、「おそ松さん」第一期は腐女子人気も相まって、社会現象になるほどの大ヒット作となったが、第二期はグッと童貞マインドや六つ子のクズっぷりを全面に出し、一回一回キッチリとコントを展開していて、非常に個人的には好みだったのだが、やはり第2期の社会現象的なバイブスには到達していなかった気がする。
藤田監督曰く「第一期は楽しさを前面に出した。第ニ期は面白さを重視した」とのことだった、結果、「楽しさ」を前面に出した方が世間受けは良かったようである。
もちろん、制作側も第一期ほどの社会現象レベルの盛り上がりにはならない事は想定内だったらしいが、この「楽しさ」と「面白さ」を使い分けるという話でハッとさせられた。
約10年間にわたり、アシッドパンダカフェ(東京の平均的かつ最先端のクラブと異名を持っていた)をやった結果、あそこは明らかに圧倒的に「おもしろ至上主義」な価値観が蔓延していた。
面白ければ面白いほど良かったし、あの場の全ての人が面白を求めていると思っていた節がある。イベントやパフォーマンス時の多少の不手際ややらかしも面白かったらとにかくオーケーなのである。
そういえば面白いと楽しいが俺の中では直結しているというか、もはや同意義で考えていたということに気が付いた。
面白いというのは、よく考えると受けた表現を咀嚼して考察するというプロセスがあっての事なのかも知れない。つまりわかること、最低限の理解が出来ることが必要なのだ。
しかし、俺は商売を全く考えずに、儲け度外視で自分たちが面白いと思う事優先で店をやっていたせいなのか、面白さ自体が煮詰まりを起こして、逆にもはや理解できないモノが面白いと感じてしまうという変な次元に突入していたのかも知れないし、俺にとっての面白いが、一般のそれからだいぶ変異してしまっていた可能性もある。
俺は生涯おもしろノイローゼに陥っている状態なのである。とはいえど、おもしろさは個人の感覚にも寄るところがあるんで、それがハマる人ももちろんいるし、何をやっても琴線に触れられないという場合もある。(それはもはや話が違う人種)
アシパン時代を思い返すとよく思っていたのが、「面白いイベントほど客が入らねーなー。」だった。今思うとこれは世間一般の人の理解を超えている興味の範囲外での面白い事を行なっていたためだと分析できる。世間が求めているのは「楽しさ」なのである。
俺のやっているユニット「贅沢ホリデイズ」の代表曲に「節子」というのがある。
節子
https://www.youtube.com/watch?v=NDJwvmqDBV0
この曲は若い時からやっている日本のネタモノサンプリング系のテクノ(ナードコアと呼ばれている)の路線を踏襲した自分の中では割と究極的に面白さを追求した作品で、後にも先にもあんな奇怪な曲は出てこないだろうと自負しているのだが、これの公開後の反応が自分が思ったほどの感触ではなくて、先ほどの「面白いイベントほど客が入らねえんだよなー」に似た気持ちになったという経験があった。
その話を藤田監督にした時に「面白過ぎるんですよ!あれは!」という言葉を頂いた。
物作りをしている側だとどうしても面白さを追求し過ぎてしまう所があるそうだ。
たとえば芸人の世界でも同業者には評価されているが、世間一般で売れてない、という人が沢山いる。
何かそれに近いような感じなのかも知れない。
しかし、「節子」はライブ現場においては無類の強さを発揮する曲だ。
ライブでのパフォーマンスがここに加わる事で、楽しさの強度が補完された形になるからだと思う。
楽しさで行くなら2014年の「LET'GO!シャンパンマン」は数段上だ。
分かりやすい主題と絵に描いたようなアッパーで楽しい曲調。捻りは少ない。
https://www.youtube.com/watch?v=zUiIOnuOwkI
この曲はメジャーで出したというのももちろん大きいのだろうけど、今になっていわゆる夜のお仕事の世界(バーレスクとか)から評価が高まっている。要は「節子」よりもハネた。
例の「楽しさ」と「面白さ」の理論がここにも符合するのだ。
本来なら制作者たるものが、こうした作品に置ける葛藤を語るものではないのかも知れないが、最近は自分で自分を「死後に評価されるんで」と納得させて生きている所はあるんだけれども、それはただの詭弁で、死後に評価されるにもやはり声を大にして評価してくれる人が現れなければ単に忘れ去られて、数十年後に好事家のyoutubeディガーに「昔、こんなバカな曲作ってた奴がいたのかウケるわー!誰だか知んねえけど!」とネット上の古代遺跡やオーパーツみたいな扱いになるのが関の山だと思うし、やっぱり生きてる間に認められてえなあというのが、正直なところである。
とはいえ、自分が楽しさと面白さの違いを認識した所で、その適度なバランスを見極めて作品として出せるかというとまた別問題なのではあるが、エンターティメントの世界で大ブレイクを経験した男だからこそ分かった「楽しいと面白い」の違いを教えてくれた藤田監督には感謝したい。
しかし、また「楽しさ」の正体というのが複雑ではありそうなんだよな~!
それに、ツイッターで見かけた
「コミュ力が高い人」の唯一の欠点はつまらないこと。大勢に好かれようとすればするほどつまらなくなる。コアなファンを抱えた人気アニメも、大衆向けに実写化したらクソ駄作になる。
みたいな意見も考えさせられる所はあるんだけれども。まあ、日々苦悩ですな。
というわけで、「楽しさ」と「面白さ」のバランスが「節子」の時よりも若干掴みかけている感のある「変なポーズマン」の拡散をあらためてここまで読んでくれた皆様にお願いしたい所であります。
贅沢ホリデイズ「変なポーズマン」
https://www.youtube.com/watch?v=ht2Cbx88PbU
楽しさや面白さを感じたら、家族や職場や学校の友達に教えてあげてください。
よろしくお願いいたします。
ホントは大手の代理店とかバックにあれば、ドカーン!おりゃー!と拡散されることもあるのかも知れないけど、大手の音楽ニュースサイトにプレスリリースを送ってもスルーされる現状ではみなさんの口コミとネットでの拡散しか方法がないんです。
とはいえ、俺は少なくとも死後に評価されるんで(まだ言ってる)生きてるうちは焦らず試行錯誤を繰り返していくしかないですねえ。嫌いにならない程度に頑張ります!
ありがとうの一言です。本当にありがとう!