今日の天使(3)
単調な日々の中で、鬱々とした時間の波が襲ってくることがある。そんなとき、ふと微笑みかけてくれる今日の天使。
今日の天使『ドヤ顔おじさん』
どうしてもそれでなくてはならない。ネット検索で見つけたあの商品。他のメーカーのものではダメだ。成分からして話にならない。
思い当たる限りの近所の店を探した。しかしどこにも置いていない。だいたいどこの店も同じメーカーの同じ商品ばかりだ。物流が乗っ取られている。なんと不幸な。多様性などというのは嘘だ。
世界さえも呪った。
あとはこの店しかない。趣味の悪い看板を掲げたその店に入った。
めったに利用しない店なので、それがどの棚にあるか、まったく見当がつかない。
黄色いエプロンをした年配の店員が通りかかる。もう彼に尋ねるしかない。
「ああ、それね」
店員はスタスタ歩いていって、とある棚からそれをピックアップし、私に差し出した。微笑みまじりのドヤ顔とともに。
そのドヤ顔を見た瞬間、私は呪縛から解かれた。
----------
一人の人間の一日には、必ず一人、「その日の天使」がついている。
これは中島らも「その日の天使」へのオマージュです。