紫の夜を越えて
『チェリー』『ロビンソン』『空も飛べるはず』
この3つがあまりにも有名すぎて、リリースから25年以上も経つのに、未だにスピッツの代名詞として君臨し続けているように感じます。
「スピッツって爽やかだよね」という感想は、おそらくこれらの代表曲を想定したもので、あとはボーカルの草野さんの外見イメージと、あの柔らかな歌声からくるのではないかと思っています。
もちろん、それもスピッツの持つ一面です。
でも、わたしから見たスピッツはこうです。
変態で無邪気なひねくれもの。
わたしはそんなスピッツが、大好きです。
30周年のスピッツとの歴史
スピッツは1991年3月25日、今日からちょうど30年前にデビューしました。
結成はその4年前。
わたしが生まれた時には、既にスピッツというバンドはこの世に存在していたということになります。32年間の人生をすっぽり包んでしまえるような息の長いバンドなんですね。
わたしがスピッツをちゃんと聴き始めたのは高校生の頃。周りの女の子たちは、女性ボーカリストたちが歌う恋の歌に夢中だったけど、わたしにはどうにもしっくりこなかった。
そんな時、同級生だった今の夫が貸してくれたCDがスピッツでした。
今でもよく覚えています。
ウミガメに乗った女の子が描かれた、赤いジャケットのアルバム「スーベニア」。おすすめの曲を教えてもらって、繰り返し聴いたっけ。
わたしにとってこのアルバムは、ちょっと照れくさいような甘酸っぱい思い出が染み込んだものです。
そのときから、わたしのスピッツへの印象はガラッと変わりました。
これまで、それこそ爽やかな曲を歌っているイメージがあったスピッツの、ロックで力強くてかっこいい曲に痺れたし、真っ向からド直球を投げてくるというよりも、斜めの角度から読めない打球を投げてくるようなスピッツの世界観にどんどん引き込まれていきました。
夫婦になってからも、スピッツのライブには必ず二人で行きます。お互いがお互いにとって、一番スピッツ好きな友人でもあるから。
こうやって、スピッツの曲はその時その時の思い出と結びついて、わたしを形づくってきました。スピッツを通して過去の自分を覗けるくらいに。
紫の夜を越えて
本日デビュー30周年の節目にリリースされたシングル、『紫の夜を越えて』。NEWS23のエンディング曲になっているので、耳にしたことがあるひともいると思います。
これは、間違いなく今の時代に向けた応援歌。でも、あからさまな言葉で背中を押すのではなく、そっと寄り添ってくれるような、そんな曲です。
のびやかな草野さんの声と、リズム隊の動きのバランスが耳に心地よくて、実は今も聴きながらこのnoteを書いています。
草野さんの歌詞は、どれもが彼の感性からしか生み出せない不思議な言葉と言葉の組み合わせで、ファンタジー物語の幻想の中にいるような掴みどころのないものが多いです。でも、それが押し付けがましくなくて優しい世界に繋がっているんですね。
今回の「紫の夜を越えて」の中で、特にわたしが好きだった歌詞を紹介して、この記事の締め括りにしたいと思います。
夜明けは近いよ、と言ってくれているようで少し涙がこぼれた、
ありがちで特別な3月25日。
少し動くのも恐れてた日々突き破り
紫の夜を越えていこう いくつもの光の粒
僕らも小さなひとつずつ
紫の夜を越えて/スピッツ