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ぼうけん25 小泉喜美子さんを再読する
読書は物心ついてからずっと大好きで、ストレス解消のひとつでもあります。小学校で明智小五郎とルパンとホームズに出会い、図書館の奥の方に隠れていた少女探偵ナンシー・ドリューに憧れ、中学でクイーンとクリスティに出会って、クリスティの赤い背表紙を古本屋で一冊ずつ集めて・・とかなりミステリに偏った読書遍歴をへて、高校で青木雨彦さんや植草甚一さんを読んでそのエッセイに「くーーーっ」と悶絶しながらクリスティのあとを継ぐのは誰だ、とP.D.ジェイムズやルース・レンデルにもがっつり取り組んでいました。
そんななかで「この人はすごすぎる」と思っていたのが小泉喜美子さん。生島治郎さんと結婚して、作家が家に二人いるといやだ、といわれて離婚するまでは絶筆していた、という、もうほんとにもったいないことをしていらした方で、離婚してからは怒涛のように推理小説、翻訳、エッセイと多方面で活躍されていました。彼女の原作の英語とこれはこういう感じだよね、という彼女の翻訳になんどため息をついたことか。というか、そのころ英語はからきしわからないので、翻訳だけ読んでうっとりしていた、というのが正解。
今関係している会社は蔵書を貸してくれるというとてもとてもすてきな会社なのですが、そこで見つけたのが彼女の「やさしく殺して」。
改めて読んでみると、やっぱり彼女の奥深さがすごい。
ずいぶん前に亡くなられていたと思ったけど、いつだろう。
やさしく殺して、を執筆したのは48歳。そんな若いのにこの文章。
彼女が亡くなった年をとうに超えた私は、できれば私の人生の一部を彼女に使ってもらいたい、と思うけれどそうもいかないので、彼女の本をせっせと読んで、彼女のおすすめをまた読んでみることくらいしかできません。できるだけ、「ほんとにいいなあ」と思う本、思う文章を拾い上げたいと思います。
10年前くらいから信頼しきっている書評家さんは豊崎由美さんで、あのズバズバ、スカッとした書評は本当に好きです。彼女と小泉さんにはなんとなく近しいものがあるんじゃないかなあ。海外文学を愛し、日本を愛し、正しい日本語を愛し、適当を嫌う。
適当、というのと違うかもしれないけれど、shaby(シャビー)な表現は苦手です。使い古された言い回しです。「警官が駆けつけたところ」とニュースで読まれると、うーん、となります(民放ニュースはこの表現を必ず使います。NHKは使わない)。恋愛ドラマでカップルがキスしたとたん、BGMがどどーんと盛り上がる音楽になる、というのも私にとってはシャビーです。ほかにないんかい、と思います。ここで音消す、ってことだってできるだろうし、前と同じ音楽流しててもいいじゃないか、と。
小説でもたまに使い古された言葉がでてくると、ちょっとがっかりします。そういう言葉がいくつかでてくる小説は(そういってはなんですが)たいてい出来がよくない。言葉選びはとても大事だ、と思います。それが原点くらいに。
話がやたら飛びましたが、小泉さんのきれいな日本語を読んでいたら改めてそんな風に思いました。
そういえば最近ナンシー・ドリューは動画配信で大人気。確かシーズンも4まで更新されています。しかし、私が知っているナンシーとは違って、怪奇現象と戦っています。今どきですね(でもかわいいの)。
以前あんなに好きだったルース・レンデルやP.D.ジェイムズ。また読んでみようかな、と思います。
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