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ペンギンの靴工房
こんにちは。
山田英輝と言います。
私は、現在ドイツにて、ドイツの国家資格「整形靴職人Orthopädieschuhmacher 」を取得するため職業訓練に来ています。(6月現在、まだ正式には開始していません)
このnoteは、ドイツで職業訓練をする傍ら、ふと思ったことを書き留めておくための雑記帳と思っていただけると幸いです。
整形靴に関することはもちろん、個人的に海外経験が比較的多い方なので、ドイツでの生活や、職業訓練のこと、そもそも海外移住、留学などを検討している人にも何か有用なお話ができれば良いかなと思って、このnoteを開設しました。
比較的手広く、いろいろなお話を書き溜めてゆこうと思っています。
詳細な自己紹介に関心がある方は、プロフィールをご覧ください。
皆様は、整形靴技術 Orthopädieschuhtechnikというものをご存知でしょうか?
整形靴技術は、足に問題のある人のために作られた医療知識に基づく靴の製作技術全般のことです。
身近なものでは外反母趾や、ひざ痛なども対応しますが、いわゆる医療の領域になるとリウマチ、糖尿病、麻痺や、左右の足の長さの差、そのほか様々な疾病に対応します。
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私は生まれつき脳性麻痺という障害を持っています。
比較的軽度ではありますが、幼いころには非常に歩行が困難であり、普通の靴は脱げてしまうので履くのが困難、また10歩歩けば1回転ぶような子供でした。膝小僧には常に擦り傷があり、いつでも膝の皮が分厚い状態で、独立歩行は可能でしたが、物心つく頃には常に装具がそばにありました。
(おかげさまで、整形靴と職業としてかかわっているのはまだ3年程度ですが、整形靴それ自体は患者として20年以上経験があり、業界のアレコレを患者目線でよく知っています。子役的な物だと思ってください)
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写真は6歳の頃の足型です。
しかし、そんな私を支え、様々なところへ連れて行ってくれた魔法の靴が、ドイツ式整形靴でした。この靴があれば、より遠くに歩くことができました。
このドイツ式整形靴技術は、自分が子供だった20年ほど昔に比べれば遥かに知名度が向上し、また技術者も増え、選択肢も相当数増えました。当時は黒か白かしか選ぶことができず、同じ品番を履き続けなければいけなかったあの頃に比べると、相当の選択肢がある時代になりました。
とはいえ、整形靴技術はいまだ持って日本に浸透しているとは言えない状況にあります。技術者が増えたとはいえ、いまだ専門的な知識を持つものが限られ、また医療、保険のかかわる業界のため、法律、制度面でもいまだ多くの課題があり、正直に言って厳しい現状はあると思います。
私は、ドイツで整形靴を学ぶことで、未来、この業界が何らかの進歩をしてゆくための一助になれれば、と思い、今ここドイツに来ています。
ちなみに、タイトル「ペンギンの靴工房」について。
コウテイペンギンを表すフランス語、Manchotの語源はラテン語で「手足の不自由な」という言葉に由来します。(ペンギンからしたらはた迷惑な名前でしょうが)
私はなんとなく、自分自身の中に一匹ペンギンを飼っているような気持でいます。
もともとペンギンは理由もなく好きな動物なのですが、
確かにペンギンの不器用に見える歩き方にはなんとなく親近感があり、そして、自分の得意なことになればスイスイと海を泳ぐ自由さにも憧れがあります。
いざとなれば、いの一番に誰も飛び込んだことのない海へ飛び込む勇気のある動物です。
そんなペンギンが自分の中にいるつもりで、歩き方は不器用でも自分の興味のある水の中に飛び込んで、スイスイとこの世界を泳いでいけたらと思います。
そして、そのペンギンが作る靴が、いつかほかの「ペンギン」を支える糧になればうれしいなと思います。