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水色シネマ 乙ひより
「爽やかな百合を」と、百合ソムリエさまからおすすめいただいた乙ひより先生の暖色・寒色シリーズ(と勝手に私が呼んでいる)の寒色の方。
芸能人の唯が撮影で訪れた海沿いの田舎町で多恵というぽわぽわな女の子と出会い(なんと同級生だった)失恋で傷ついた唯を素朴な多恵が寄り添いながら互いを分かち合っていくストーリーなのですが
女王様のような唯と従者のような多恵という、パラーバランス。
もっというと、飼い主と子犬のような二人。
傷ついた飼い主を無邪気な子犬が癒していくような……これはまるでペットセラピーではないか。
そんな錯覚をするくらい、この多恵という女の子が今時珍しいくらい純朴で素直でいじらしい清い女の子なのです。
多恵の後ろには、この子の暮らす街のいつもそばにある潮騒とか、山の気配とか、空の広さとか、潮と山の木の湿気が混じった匂いとか、そういう染み付いた自然がある。
読んでいるこちらの心も浄化される。
この多恵のヒーリング能力の高さに、なぜ美しく完璧な唯が田舎のイモ娘(言い方は悪いのですがわかりやすさを優先させます)を一目で選んだのかを一発で納得させられてしまうのです。
これは、このキャラを生み出した乙先生の才能に拍手というか、心から感謝という感じでした。私も都会の生活に疲れているのかな(笑)
多分、唯は自分がレズビアンであるという自覚とそれをコンプレックスに思っているんですよね。多恵の言葉を勝手に解釈して傷ついてしまうのも、マイノリティだったゆえの孤独とか悲しみを抱えているからで、それでも多恵は丸ごと受け止めてしまう。その包容力はまさに母なる海。
こんな女の子が味方についてくれるならば、唯はきっと素晴らしい女優になれるでしょうね。
力を分け合う女の子同士の綺麗で優しいお話でした。
ああ、癒された。
大変美しかったです、ごちそうさまでした。
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