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「ラヴァーズ・キス」より彼女の嫌いな彼女・TEMPEST 吉田秋生
「片思い」をテーマに借りた一冊。
いろんな種類の恋模様が「キス」を鍵にして交錯していく、鎌倉が舞台の物語。
このテイスト、おしゃれじゃないですか?
今の世代のみんなだって、一周まわって素敵じゃないですか?
クソガールとして青春を過ごした私らのようなのが憧れ倒した風景です。
まあ、それはいいとして。
girl meets girlとして描かれているのは主人公の妹えりこちゃん。物語の主体は姉りかことサーファーの藤井の恋なのだが、その周りの脇役たちがどんな恋をしたのかということが丁寧に描かれて、主体の2人の恋をより特別にしていく。
この妹、お姉ちゃんの親友に恋をしてしまうのである。
そして、親友はお姉ちゃんを密かに想っているという百合三角関係状態であり、私は自分が思っているよりも「百合の三角関係」がツボであったという、新しい自分の発見があった物語だった。どうでもいいですね。
そういえば。
恋愛において「脇役」というポジションについていつも考えていたような気がする。
こんなに恋をしているのに
こんなに想っているのに
どうして報われることがないんだろう、と。
自分が想いを強くすればするほど、自分がまず土俵に上がれていないことを思い知る時の、あの、空の高さ。
辛いよねえ、切ないよねえ。
えりこちゃんは本当に賢く凛々しい子で、そんないい子だからこそ報われない恋を抱えて途方に暮れている様子が泣けて泣けてしょうがない。
「出会ってしまったんだから、しょうがない」
この境地に達する時の絶望と開放感は脇役にしかわからない。
好きな人の前では自分はまな板の上の鯉。
もう、降参。
振り向いてくれないならば振られるしかない。
いつか主演を果たすために、こうやって強くなっていくしかないのだ。
私がクソガールだった頃。
好きになった人が同じように自分を好きになるなんて、そんなことは奇跡が起きるよりも難しいことだと思った。
お姉ちゃんよりも、私の方が好きなのよ?と口説いたところで
お姉ちゃんの親友だってお姉ちゃんに出会ってしまっているのだ。
でもこんな日々も宝物となる日は必ず来る。
来てしまうのだ。
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