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「アフターアワーズ」 西尾雄太
担当K氏よりおすすめされて読んだ作品。
24歳ヘタレ女子×30歳女DJという煽りにグッと心を掴まれる。
出会ったその日にいたしてしまい、なし崩しに同居生活が始まるのだが、30歳女DJのケイちゃんに導かれてどんどん新しい世界へ入り込んでいくヘタレ女子のエミが成長していく様子が気持ちいい。
この作家さん、この作品は百合というよりも「ガールミーツガール」なのだとおっしゃっているそうで、そこを探りたくて最終巻はなんども読み返した。
はじまりは、常に退屈そうな主人公、軽い身体、丁寧に扱わない対人関係。
それが二人が出会うことで、彼女たちの取り巻くすべてのものの意味がオセロのように反転していく。
ただ、自身の身体も性別も本人たちの持つ問題に比べれば意味を持たない、その軽さ。今の人っぽいなあと感じた。
私のようなものには不気味にさえ感じる影の薄さ。二人重なることでやっとその影を濃くすることができる、こんな人との出会い方もあるのだとハッとさせられた。
男だろうと、女だろうと、人生を変えるのは人との出会いである。
こういうことかなあと、自分の中ではそう解釈をした。
「この作品は、今のトレンドですよ」と百合ソムリエさんはおっしゃっていた。世界観、主人公たちの身につけるもの、登場する場所、小物に到るまで全てが洗練されており人の堕落の仕方さえイマドキでお洒落。
最終巻で二人が水族館デートするときのケイちゃんのスカート、リアルに可愛いんだよなあ!!!
高速バスのシーンが私はお気に入り。まるで映画のようで、セリフはなく、情景から回想シーンへ流れていくのだが、見開きいっぱいに夜中の窓から流れる景色と目を瞑る主人公だけが描かれたページは圧巻。
洒落ている。
センスがあるとは、こういうことをいうのだと思った。
そして、最後に思ったことは、結局人はみんなさびしいのかもしれないということだった。
「ときどき思うことがあるの。私、ひょっとしたらこの景色を見るために酔っ払って、踊って、馬鹿騒ぎしてるんじゃないかって」
ケイちゃんはパーティーの後、朝焼けを見ながら主人公にポツリと呟く。体の中の全てを消費しきって残ったものを噛みしめるために、群がり爆発させることの儚さ。一夜の夢。
さびしさを埋めることから始まる二人がとっても小さく健気に感じさせられる切ないストーリーなのだけど、それを切ないとか感じさせない絵の迫力と演出が本当ににくくて、素敵な作品でした。
百合展でスケブも見られて嬉しかったです。
今のトレンド、大変美味しかったです。
ごちそうさまでした。
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