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『マンガで楽しむ古典 百人一首』(吉海直人)

忙しい先生のための作品紹介。第25弾は…

吉海直人『マンガで楽しむ古典 百人一首』(ナツメ社 2014年)
対応教材      『百人一首』
ページ数      303
原作・史実の忠実度 ★★★★☆
読みやすさ     ★★★★☆
図・絵の多さ    ★★★☆☆
レベル       ★★★☆☆

作品内容

 『百人一首』の和歌が一首ずつ解説されています。それぞれの歌について、歌の内容がマンガで描かれる他、関係人物の紹介、キーワード、一行コラムなど、それぞれの和歌を楽しむための仕掛けがたくさん用意されています。

 そのほかにも、『百人一首』全体や古文常識についてのコラム、『百人一首』に詠まれた景物の写真、競技かるたのルールや強くなる方法など、さまざまな視点から『百人一首』を知ることができます。

おすすめポイント  多様な解釈で楽しむ『百人一首』

 まず目を引くのが、和歌の解釈についてさまざまな解釈が書かれている点です。「たちわかれ~」が因幡に赴任するときの歌なのか、京都に帰ってきたときの歌なのか。「春の夜の~」は実際の恋歌なのか、ただの恋愛ゲームだったのか。このように解釈が分かれる歌については、それぞれの説ではどういう意味になるのかが解説されています。そのため、歌の解釈を疑問に思った際には本書が参考になるでしょう。ただし、解釈については、内容をある程度理解していないと難しいため、レベル3に設定しています。

 また、各和歌の冒頭に、見出しのようなものがついているのも注目です。「ぎゃふんと言わせてあげるわ!」(「大江山~」)、「変わるものと、変わらぬものと…」(「八重葎~」)などと、和歌の内容が端的にまとまっています。和歌を読解する上で、「この和歌は何が言いたいのか」をおさえることができるため、和歌の意味をまず大雑把に理解するのに役立ちます。

授業で使うとしたら

 各首見開き1~2ページでまとまっているので、授業で触れる際に該当する和歌のページだけコピーして使用することが可能です。
 マンガでは歌の詠まれた状況も描かれているので、『百人一首』の単元でのみならず、その和歌の詠歌状況を描いた『蜻蛉日記』の「嘆きつつ」(「移ろいたる菊」として載っている教科書もある)、『十訓抄』の「大江山」といった文章の読解時にも参考資料として用いることができます。
 読解段階であれば見出しやマンガ部分を、解釈などの発展段階では解説や一行コラムなどを用いるとよいでしょう。

 また、「久方の~」は「桜」、「めぐりあひて~」は「月」などといったように、各歌についてのキーワードが記されており、後ろに索引もついています。そのため、教材研究の際にキーワードで和歌を探すこともでき、資料集としても価値の高い一冊です。

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