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『無人島のふたり―120日以上生きなくちゃ日記―』 書籍ミニ感想#2

前日に『いのちの車窓から2』と一緒に購入していた山本文緒著『無人島のふたり―120日以上生きなくちゃ日記―』(新潮文庫)を朝起きてから読み始める。
タイトルの通り、膵臓癌で余命四ヶ月と告知されてからの日記。手書きで書いていたものをご自身でパソコンに打ち込んだり、それが難しくなると音声入力や夫の助けを借りて紡いでいったものとなっている。
ご本人も日記で書かれているが、いきなりの余命宣告によって彼女と旦那さんの日常はまったく違うものとなっていき、最後を自宅で迎えるための準備に入ることになってしまった。
売れっ子作家でちゃんと収入があった。将来のために貯蓄もされていたこともあって、緩和ケアなどにお金を使えたことが死に向かっていく中でもお金の心配をしなくてよかった。これは読んでいて本当に大きな要因だなと感じた。
日記を読むと読者にも負担にならないような配慮がなされているのがわかる。その優しさのおかげで読者である僕たちは残りわずかな日々を二人で過ごしていく夫婦を他人事のように見るのではなく、そこに居るような、見守りたいという気持ちになっていく。
物語のラストは決まっている。彼女が亡くなったという事実は覆らない。もちろん、死ぬ瞬間に書くことはできないから、亡くなる九日前が最後の日記になっていた。ページが進んでいく、めくっていくと減っていく紙の感触、山本さんの死が近づいてくる。自然と涙がこぼれる。コロナパンデミックの最中、都会から離れた二人だけの島で最後の時を過ごした作家の残りの日々と書くことだけはやめないという意志を強く感じた。

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