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予告編妄想かわら版『劇場』(『週刊ポスト』4月13日発売号掲載予定だった原稿)

 芸人・又吉直樹の小説を行定勲監督が映像化した『劇場』(4月17日)。演劇の世界で夢を掴もうとする永田(山崎賢人)と彼の夢を信じる沙希(松岡茉優)を巡る恋愛映画のようです。
「ここが一番安全な場所だよ」「ほんとに今までよく生きてこれたね」と優しい言葉を永田にかける沙希。しかし、知人たちからは「沙希ちゃんと別れてあげるべきだと思う」「お前さ、自分のこと才能あるって思う?」
と告げられている永田の姿も予告編で見ることができます。
 ここからは妄想です。書きかけた原稿用紙の文字を乱暴に消し、町をびしょびしょに濡れたままで疾走する永田の姿も予告編にあり、この作品は青春映画でもあるのでしょう。また、「一番会いたい人に会いにいく、こんな当たり前のことがなんでできなかったんだろうね」という永田の台詞からも、沙希は彼の元からいなくなるのではないでしょうか。そして、数年後に夢を叶えた永田の舞台を黙って沙希が観に来ます。舞台が終わり、彼女の姿を見かけた永田は追いかけるものの、見失ってしまう。そして、かつて二人で桜の下を自転車で走り抜けた光景を思い出す、そんなラストシーンではないでしょうか。夢を叶えることが彼女を幸せにすることだと思っていた永田は、彼女を失うことで夢を叶えることになるのかもしれません。


4月13日発売『週刊ポスト』4/24号掲載予定だった連載「予告編妄想かわら版」に書いていた行定勲監督『劇場』の原稿です。コロナの余波で新作映画が公開が延期されており、また劇場も営業休止になっているため、映画を観に行こうと言える状況でもなく、名画座のスケジュールと作品紹介をしているのむみちさんと僕の新作に関する連載はしばらく休載という形になりました。この『劇場』も公開延期になったので、その判断は間違ってなかったんだなと思います。とりあえず、また映画館で新作を観ることができるように生き延びましょう。

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