『よこがお』試写
カンヌ国際映画祭ある視点部門で審査員賞を受賞した「淵に立つ」の深田晃司監督が、同作でもタッグを組んだ筒井真理子を再び主演に迎え、不条理な現実に巻き込まれたひとりの善良な女性の絶望と希望を描いたサスペンス。周囲からの信頼も厚い訪問看護師の市子は、1年ほど前から看護に通っている大石家の長女・基子に、介護福祉士になるための勉強を見てやっていた。ニートだった基子は気の許せる唯一無二の存在として市子を密かに慕っていたが、基子から市子への思いは憧れ以上の感情へと変化していった。ある日、基子の妹・サキが失踪する。1週間後にサキは無事に保護されるが、誘拐犯として逮捕されたのは意外な人物だった。この誘拐事件への関与を疑われたことを契機に市子の日常は一変。これまで築きあげてきた生活が崩壊した市子は、理不尽な状況へと追い込まれていく。主人公・市子役を筒井が演じるほか、市川実日子、池松壮亮、吹越満らが脇を固める。(映画.comより)
深田晃司監督『よこがお』試写鑑賞。試写でしか角川に行く用事がない。
二次被害、誰にでも起こりうる加害者側になってしまうことを、ちいさな感情や想いがある出来事を境に大きく入り交じり、そして、予期せぬ方向に巻き込まれてしまう怖さを描いていた。
今だったらSNSでよく起こる身近な人間がやらかしたことで、近しい人が加害者になるような出来事or事件。最近だとムロツヨシさんとかのSNSでの炎上なんかが近いかもしれない。
近しい人間が起こしたことで、そのことについて発言したり関わりがあったことで加害者のような立場になってしまう。この部分はセンシティブな問題が関わっているので、一概には言えないし、その時々の当事者や関係者の距離や関係性や想いなどがどこに向かわせるのかはまったく予想ができない。
そして、さまざまな感情を観客に投げかける筒井真理子さんのよこがおの魅惑さ。このよこがおを撮りたくて始動した映画みたい。
舞台の中心となる看護師である市子が訪問する家は男性が見当たらず女系家族、市子と付き合っている男は父子家庭で、その女系家族と関わる二人の男。筒井さんのよこがおと未知なるものを撮りたいという監督の気持ちがあるからか、物語の多くは女性たちのパート、アクシデントやスパイスのような男性たち。対比というかわりとはっきりしている。深田さんが劇団青年団にいたこともあるのか、その空間の配置感とかは訪問先とヘルパーステーション、自宅マンションなどが演劇的なものを感じさせなくもない。その意味で前作の『海を馳ける』は空間的な広がりをもつために海を舞台にしたのかしら。
物語は、ちいさな渦が加速度的におおきくなっていき、みんなを巻き込んでいく。そして、市子はそれにより崩壊していく、大切だったものが奪われていく。しかし、それでも生きていく、日々は通りすぎていく。
視点は一人称よりは三人称ぐらいの距離で市子を見ていたらゆっくりと近づいていくがある程度の距離感を保ったまま、そして、彼女のよこがおが、生きるってどんなことかと、問う。
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