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院試のはなし


院試が終わった。結果は合格だった。ので、来年度からも同じ専攻で、同じ研究室でのんびり暮らすつもりだ。(厳密には、東京大学工学部応用化学科から、東京大学工学系研究科応用化学専攻に名前が変わるけど、実質同じ。)

このnoteは、院試期間の過ごし方とか、院試期間で考えたことについてまとめようと思う。よくある院試noteだと、勉強の仕方とかそういう系のが多い気がするけど、僕のnoteは読者を想定していないので、例によって日記みたいな感じになると思う。

院試休みのはじまり

僕の所属しているラボでは、7月の頭にB4がそれまでの卒研の進捗を発表して、それが終わったら院試休みに入る。院試は8月末なので、およそ2ヶ月ある。まわりのラボと比べても院試休みが長い方だが、外部から志願してくる人も少なくないので、いくら準備してもしすぎるということはない。

院試休みが始まってやることは、勉強である。当たり前だ。勉強のために休みをもらっているのだから。

ということで、アフリカに1年旅立つ友を見送ったり、Lab-Cafeの4周年パーティーに参加したり、さつまいも博でさつまいもを無限に食べたりしていた。果たしてこれは勉強なのだろうか。

勉強とは

そもそも、改めて勉強とはなんなんだろうか。ネットで辞書を引いてみた。

学問や技芸などを学ぶこと。「徹夜で勉強する」「音楽を勉強する」
物事に精を出すこと。努力すること。
「何時までもこんな事に―するでもなし」〈福沢・福翁自伝〉
経験を積むこと。「今度の仕事はいい勉強になった」
商人が商品を値引きして安く売ること。「思い切って勉強しておきます」

デジタル大辞泉より

なるほど、院試勉強はたぶん1に該当するのだろう。とはいえ2でもあるし、3でもある。4はちょっと違うか。合格点は値引きして欲しいところではある。

3の「経験を積む」という定義はとても便利だ。人間は生きている限り経験を積み続けている。生きてるだけで勉強しているということだ。

ということで、院試休み期間は、生きていればいいということなのかもしれない。

真面目に勉強する

屁理屈はこの辺にしておこう。

弊学科の院試は、「有機化学」「無機化学」「物理化学」の3教科から2教科を選ぶ形式になっている。あと、TOEFLとか面接とかもあるけれど点数配分で行けばほとんど筆記試験で決まるようなものだ。

有機化学の授業はあまり出席した記憶がないので、消去法で無機化学と物理化学を勉強することにした。積極的な理由としては、無機と物理は結構似ている分野を扱っていて重なり積分が大きそうだと思ったところもある。

最初の1-2週間くらいは教科書を読んでいた。無機化学は割と自信があったので、アトキンス物理化学をしっかり読めばなんとかなるかと思った。

・・・ムズい

こんなの授業でやったっけ??みたいなところもあるし、全然読み進まない。(本来授業で扱ったはずであるが)新しいことを勉強するのにはどうやら体力を使うらしい。ちょっとページをめくって、爆睡して、ちょっと進んでの繰り返しである。7月中旬くらいに、まあなんとか一周は終わりそうな目処が立ってきた。

ヤバくね??

実は、僕は院試休み期間に大きめの旅行を2つ挟もうとしていた。行き先はオーストラリアと小笠原である。どちらもどう考えても行くタイミングが今だったので行くしかなかった。それで院試落ちたとしても後悔ないくらいには、行くしかなかった。

それを差し引くと、意外と勉強の時間が残っていないことに気づいた。ちょっと焦り始めてきた。そこで、院試勉強の勉強をしてみることにした。

問題集を手に入れる

どうやら、院試勉強は、問題集を使って勉強するのが一般的らしい。それはそうだ。あんな分厚い教科書を読んでも身につかないしすぐに忘れるのが席の山である。さっさと手を動かして理解するほうが早い。僕は多分効率の悪い勉強法をしていたのかもしれない。

とは言っても今更遅いので、とりあえず問題集を手に入れることにした。

この2冊を中心にやった。お金をあんまり使いたくなかったので図書館で借りることにした。夏休み期間なので2ヶ月くらいホールドできる。ラッキー。

ワーケーション

そうこうしてるとオーストラリアに行くことになった。オーストラリアはめっちゃ楽しかったので、それはそれでまたまとめておきたい。小笠原も楽しかった。

一応、これらの渡航は「ワーケーション」という口実を用意していた。ワーケーションとは、普段と異なる環境で作業することによりクリエイティビティが生まれたり、より集中できたりするみたいな感じのノリのあれだ。

つまり、渡航先で1分でも勉強すれば、それは旅行ではなくワーケーションになり、ワーケーションだと主張すれば罪悪感なく現地での生活をエンジョイできるというわけだ。

まあわりと詭弁であると思いつつ、意外と勉強は捗った。特に飛行機の中と船の中である。小笠原に向かう船は片道24時間かかる。24時間は結構暇であるともっぱらの噂であったが、勉強していたら意外とすぐ時間はたつものだ。おがさわら丸の中で試験勉強するの、おすすめです。おかげさまで、ボルツマン分布を見ると船内が想起されて、なんかゆらゆら揺れる気分になるという後遺症?に悩まされている。

おがさわら丸の船内で勉強していると、小学生らしき子と、そのお母さんっぽい人がいて、お母さんであろう方が、「あそこのお兄ちゃんもちゃんと勉強頑張ってるんだから、xxくんもちゃんと夏休みの宿題やりなさいよ」みたいなことを言ってた。どうやら僕は小学生の模範になってしまったらしい。誇らしい。

息抜き

勉強には、息抜きも必要である。基本的に図書館にこもっていたのだが、つい目に入った「科学と宗教」という本をたまに読んでいた。これが面白かった。

『チ。-地球の運動について-』という漫画をご存知だろうか。まさにあの世界観のような話で、ガリレオやダーウィンなど、宗教観に多大な影響を与えた科学者を例にとって、宗教と科学の関わりについて論じられていた。

なかなか面白かったので、これもいつかまとめたいところではある。僕が解釈した結論的なものは、「宗教も科学も同じくらいに人間の行動を決定するのに寄与していて、同じくらいに信頼できるがゆえに同じくらいに信頼できないものだ」みたいなことである。なんか自分で書いててもよくわかんないや。

KOMAD

ここでも出てきます。KOMAD。KOMADそのものについては、以下の記事を参考にしてください。いい場所なんです。

院試直前1週間くらいは、図書館で勉強して、図書館が閉まったらKOMADに行って、夜まで勉強して、たまに人と喋って、たまに夜ご飯一緒に食べて、みたいな生活をしていた。KOMADにはとてもお世話になりました。いい場所や。

院試当日

さて、そうこうしていたら院試当日になってた。面接はスーツで行くのが一般的らしいけど、スーツは実家に置いてきてる。仕方がないので、それっぽいシャツをユニクロで買ってきた。友達からは高校生みたいって言われた。まだ若いってことかな。

面接官が自分の研究室の先生だった。そんなことあるんやと思いつつ、そんなにピリッとした雰囲気にもならず面接は終了。

翌日が筆記で、ある意味こっちが本番である。

翌日の筆記は、とりあえず寝坊しないという一次予選に突破したので一安心。寝坊してたら笑えなすぎて大爆笑してるところだった。

いざ問題を開く。

・・・簡単じゃね??

さすがに簡単すぎる。去年の過去問の凶悪さはどこにいったのか。するする解ける。なんだこれ。とりあえず簡単な問題を解いて、次のページに向かい、どんなむずい問題が来るのかと待ち構える。

・・・簡単じゃね??

難しい問題が、、、ない。そして問題数も圧倒的に少ない。なんだこの院試。誰が作ったんだ。この院試のために僕はここまで勉強してきたのか。なんでだ。

いろいろ考えながら、院試が終わった。

院試が終わって、昼ごはんを同期と食べた。変な問題だったなーと愚痴を言い合って帰った。問題数が少なかったので、少しのミスで点数が大きく下がってしまうことが危惧される。もしそのせいで院試に落ちたらどうしたらいいんだ。みたいなことをつらつら考える。

とにかく院試は終わった。解放である。

合格発表

発表前日に同期とご飯を食べてて、「受かったら用心棒、落ちたら東尋坊」という迷言?が飛び出たりしつつ、合格発表を待つ。

受かってた

院試に落ちたらアフリカに飛んで、パン屋を開業して、うどん屋を開業することにしていたが、これらは延期になった。まあ、大学院いきながらでもパン屋とかうどん屋は開業できるんかね。乞うご期待。

晴れて大学院生に

今所属しているラボと所属は変わらず、おそらく大きな環境の変化はない。しかし、刻一刻と社会に近づきつつある。就活するのか、博士課程に行って仙人になるのか、起業して大富豪になるのか、そろそろ不可逆的な選択を迫られる時が来た。

修士の2年間は、自分自身と向き合いつつ、自分自身が社会に向けてどのような役割を期待されていて、どのような価値を創出することができるのかを見定める2年にしたい。

具体的には、研究を頑張るのはもちろんのこと、「化学」「素材」といった領域が、社会のどの場で必要とされているのか、それらの領域で価値を創出するために自分に足りない要素は何なのかを考えたい。まだ抽象的か。

もっと具体的には、たくさんの人と喋って、たくさん実験して、たくさん書物を読んで、たくさん遊ぶ、みたいなことかな。

いずれにせよ、ある種の区切りとなることは間違いない。まあまだ半年は学部生だが、高三の0学期理論みたいなやつで、M0みたいな気持ちでがんばりたい。(エムゼロっていう漫画があって、途中まで読んだことあるけど途中になってたのを思い出した。蛇足すぎる。)

引き続きよろしくお願いします。

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