ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破、観了

前作、序に続いて破を観了した。

序破急と言うように破は物語の転換部分を指すわけだ。序はテレビアニメシリーズのヤシマ作戦までのストーリーを概ね忠実になぞるものだったが、今作はそこから改変・分岐するという点で"破"であった。

物語としてもエヴァvs使徒に焦点が当てられていた前作と比較して、より世界観の裏側に迫る描写が見られ、ゲンドウと冬月の意味深な会話が多くファンの考察欲を煽るシーンが所々に織り交ぜられていた。

ロマンを重視した「一般人には意味不明だけどなんだか格好いい男心をくすぐる専門用語の応酬」といった演出も控えめとなり、各登場人物の人となりや心理描写が圧倒的に増えていた。今作では全く登場しないエヴァシリーズのキーワード「人類補完計画」への足がかり的な人間の心の弱さを描いている印象を受けた。

とは言っても、鑑賞後少し時間をかけて内容を咀嚼して自分の中で整理を付けた結果の印象だ。

庵野秀明監督の頭の中に世界観と描きたい物語は想像されているのだろうが、そのアウトプットがこの脚本なのであればいささか散らかっているのではないだろうか。観ているそのものをそのまま理解しようとするのではなくこれは抽象表現だと認識すれば曖昧にも納得できることはあった。抽象的だからこそ自分の中で独自の解釈が形成されて納得したのだろうから、そこが意図して制作されたものなら私は驚嘆するし、そうでなければ酷評されて仕方がない。

何れにせよ多くの人が興味を示し感心して高評価するのは作品の善し悪しではなく、前作"序"での感想でも述べたことだが、テレビシリーズから長い年月を経て熟成されたエヴァファン心理を揺さぶる「エヴァの新しい可能性」を見せたからだろう。あるいは読書家が難解且つ長大な小説(トルストイの『戦争と平和』のような)を読破してその作品の真理を理解した気になって悦に浸っているかのように、エヴァという難解なストーリーに共感できる自分を褒めるためにエヴァを評価しているかだ。

序破急の"破"とは転換を意味し、文字通り"序"を破る段階だ。連作関わらず、終わり良ければ全て良しとの言葉が示すとおり、中途散らかっていても問題はないと思う。であればこそ"破"を観了した今それを評価するのは早いのかもしれない。ならば今作が"Q(急)"の展開を期待させる映画なのは間違いない。

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