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パリのトラムってドラマ

パリのトラムに乗っていると、いろいろな人と人とのあいだが見える。

一般的な傾向として、お年寄りには席を譲る。あと、子供連れにも譲ることが多い。お年寄りは基本断らない、だいたい「merci, c’est gentil」と言って座る。時にはあと二駅だからいいのよ、と遠慮する方もいる。

今日も、例に漏れず、女性がお年寄りに席を譲ろうとした。そこまでは普段通りだった。そこで、なんと、お年寄りのほうが「大丈夫よ〜わたしはまだ若いのよ〜がははは」、そして「二駅しか乗らないの」と続けたのであった。2人は笑っていた。

なんということだ!わたしはこの驚きを誰かに伝えたくてたまらなかった。10年以上東京の電車に乗っていて、こんな光景見たことなかった。むしろ、席を譲ろうとはするが、断られたらどうしようとか、逆に「わたしは年寄りじゃない」と怒られないかとか色々考えてしまって結局うごけないことも少なくない。なのになんだろう、この後味の悪くなさは!断るのにこんなにも後味の悪くないこと、あって良いのだろうか?とさえ思った。

パリは東京のように大都市だけれど、もっとずっと人間的だ。そもそも、なぜ日本のお年寄りはお年寄りでしかないのにそれを認めようとしないのか?それは自分が年寄りであることを認めたくないからなのか?お年寄りであることを恥じることなんて全くないはずなのに。なぜそう頑なになるのか?いや、素直になろうぜ。譲る側も、自分の良心に従ったほうがいいって素直に。

パリにいると簡単にこういうことが言えるけれど、日本にいると、やっぱりためらってしまうようになるんだろうなぁと思う。そしてそれは残念だと思う。日本には日本なりのやり方がある、それはそうだろう。だけれども、より皆が生きやすくなる余地があるのならば、是非とも変わってほしいと思ってしまうのである。30年後の日本は、もっと人間的な国になっていてほしい。

そして最後に、このおばあさんはわたしの祖母を思い起こしたのだった。いつも笑顔で若々しい、自慢の祖母だ。彼女は元気にやっているだろうか。

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