富裕国での難民の受け入れ

今日の学び

難民が富裕国(「北」)へ行くと、それで難民としての旅路が終わりだと思われているけど、実際にはさまざまな問題に直面している。

資金援助が与える難民の子どもへの影響

Adapted from: Bronfenbrenner’s ecological theory of development (1999); Anderson et al., (2004).

元々、その表はBronfenbrennerの人間の発達における経済モデル(ecological model of human development)として考えられた。
ただ、これは難民の子どもでも十分応用できて、どのような経済的(政治的)な網に引っ掛かるかで、子どもたちの成長が左右すると言える。

Microsystem:学習への資金援助
Mesosystem:家族やコミュニティへの資金援助
Exosystem:社会福祉への資金分配
Macrosystem:難民政策への資金分配

これは、避難した富裕国でのみ活用できるというわけではなく、第一避難国でも、その移動した先々の国でも同じことが言える。

受け入れ国としてのイギリス
イングランド・スコットランド・ウェールズ・北アイルランドで、政策の方針は多少異なることを踏まえた上で、主にイングランドについて。

難民申請が受理されたら、難民として仕事、教育、福祉などに触れることができる。裏を返せば、難民申請中はどれも認められない。食・住などは国から保証されているけど、家の空き状況に応じて移動が強制される。

イギリスとしては、「who don’t play by the rules’」の人には受け入れ環境はないとしており、口座開設・賃貸契約・学校申請など社会的に必要な手続きをする際には、身分証提示を徹底しており、一つ一つの組織が移民局的役割を担っている。イギリスとしては、UNからの正規ルートでの難民のみを受け入れしたいと思っており、非正規で入国した人へのペナルティ的なものとして捉えている。
➡︎表立っては言わないけど、難民の人数を減らすために、できるだけ劣悪環境にして、イギリスに行きたいと思わないようにしたい。

最近ニュースで話題になっているのが、イギリスに密入国した移民をルワンダに移送する計画。

高額をルワンダに資金援助する代わりに、ルワンダに受け入れをお願いするというイギリスの政策。このことからも、イギリス政府の難民に対する姿勢が窺える。

イギリスにおける、難民の子どもの受け入れ状況
まず、子どもたちは、Unaccompanied child, trafficked child, undocumented childに分けられる。

Unaccompanied child: 18歳未満で、自分自身の権利のために難民申請をしている子(親などはいない)
Trafficked child: 何かしらの搾取を目的として連れてこられた子。強制的に母国に送還される可能性がある。
Undocumented: 法的書類がない中で、生活している子


これらの子たちは、まず、Kent、East  Croydon、Hillingdonなどの空港や海が近い場所に辿り着く。その後、National Transfer Schemeに従って、地方自治に飛ばされる。

16歳未満はfoster careに預けられなければいけない。
※foster careについては以前書いたnoteを参照。

16〜17歳は準一人暮らしも可能だけど、多くはHome Officeが準備したホテルに住むことになる(詳しくは後ほど)
18歳〜難民申請をする。
18歳以下は、難民というより、まずは子どもとして扱うことが前提になっている。


ホテル暮らしの子どもたち
4600人の子どもたちがイギリス国内にある6カ所のホテルに滞在している。
ただ、ホテルといっても経営不振でHome Officeからの支援が必要な状況のホテル。
6ヶ月間は、学校に行くことも仕事をすることもできないし、ホテルなので料理もできない(食事は提供されるが食文化も違うし、バラエティも少ない)。お金もないので遊ぶこともできない。

この15〜17歳っていうのは、イギリスの教育制度上難しい時期で、15歳までにGCSEのテストに受からないと、その2年後のAレベルの試験が受けられない。さらに、Aレベルに合格しないと大学に進めない。
学校のランキングを落としたくないがために、学校側もGCSEのテストに合格できないであろう難民の子どもたちを受け入れたくない。

このような状況下で、難民の子どもたちが街中で集まって座り込んでいたら、メディアに取り上げられて、難民批判にされる。

さらに、そのような状況に漬け込んで、現在は440人の子どもたちが行方不明になっている。自分から逃げている場合もあるかもしれないが、主に犯罪組織に誘拐されたり、麻薬の運び屋/売り屋にされたりしている。
(私の住んでいる地域でも、100人以上の子どもたちが行方不明になっている。参加しているボランティアの団体からも、支援者さんへの注意喚起、デモの参加、請願書のサインを求める連絡が入っている。)


難民の子どもの教育の状況
主な課題
・言語
→言語サポーターなどを雇う学校もあるけど、それは学校側が費用を負担しないといけないので、入れるのは難しい。
・学習についていくこと
・教育システムの違いについていくこと
・進路、試験のシステムの違い
・試験への合格
・学習へのモチベーション(メンタルヘルス、ヤングケアラーの場合その責任)

そもそもの課題
・子どもの年齢、これまでの教育状況、親の教育背景に応じて、状況が異なる
・地域や学校に応じて、支援格差がある。
・どのようにサポートが受けられるのかの情報不足。
・差別
・家庭環境:経済的、家庭内の状況・価値観

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自分の中での不明点

・難民と移民、一時的に引っ越してきた子(後の帰国子女)で、どのように支援やその後の状況が違うのか。

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個人的見解

言語の壁って、さらっと言っているけど、これ、本当に大きいから。
私も帰国子女だけど、渡航して言語が伝わらない環境に一人放り込まれて、1日中生活しないといけないことの精神的苦痛は、正直半端ない。授業中お腹痛くなっても先生に言えないし、友達が一生懸命話しかけてくれても返答できないし(ありがたいことに、私はそれでもめげずにジェスチャーで会話をしようとしてくれる最高の友達に巡り会えたけど)。宿題も紙切れ1枚なのに、毎日3時間ぐらいかけて、親と呪文を解読しながら行なっていた。

私の場合は、親のサポートも、友達のサポートもあったし、何より日本語が話せるイギリスとのハーフの先生がいてくれたから、学校で大号泣しても助けてくれる存在がいたけど、難民として一人で来た子どもたちには、そんな手厚いサポートもなければ、イギリスにたどり着くまでの苦難を考えたら、その精神的負荷が想像つかない。

イギリス政府側の、予算が限られていて、できるだけ自国の人間(それでいて投票権を持っている人間)に分配したいという気持ちも分かるし、定住して雇用などが奪われたら困るっていうのも分かる。だけど、裏を返して、難民を活用してやるぐらいの勢いで、社会に統合して、きちんとした雇用で経済を回す担い手という役割にした方が、国としてもメリットがあるように個人的には思ってしまう。

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