社会は児童労働の「子ども」をどう捉えているのか

今日の学び

まず、「子ども」とは何かを理論的に捉えるためには、5つのコンセプトが大事になる。
①Contingency 
②Interdisciplinary
③Governance
④Measurement
⑤Imagination
一つ一つのコンセプトについて深掘りしたものは、これまでのnoteに書いてきたので、
今回は総括として、このコンセプトを使いながら、どう社会が児童労働の児童を捉えているのかを書いていく。

「児童労働」の捉え方の歴史的変遷
〜産業革命期〜
社会的に子どもたちは「安くて、便利な労働者」として認識されていた。
労働時間10〜16時間できるが、賃金は成人男性給料の10〜20%分ですむ。
女性労働者はそれ以上に給料が低く、子どもたちが家計の第二の働き手。
狭い場所での仕事が可能→炭鉱や煙突などで使える存在。

子どもたちが働かされていた理由としては、救貧法も関わっている。
エリザベス1世の時に制定された。
・教区ごと(教会を中心とした自治体のようなもの)で、救貧税を徴収→貧困層への支給。
・貧困層で働く労働力がある場合は、ワークハウスで働かせる。
➡︎子どもたちも「働く能力がある存在」であったため、児童労働が促された。

〜児童労働の転機〜
小さい身体で何十時間も重労働すると・・・
地方都市の平均寿命は1820年では35歳→10年後には29歳と大幅に下がった。
富裕層に比べて貧困層の子どもの平均身長は6cmも低かった。
➡︎子どもの成長に悪影響だという認識が広がる。
➡︎「児童労働は悪」「子どもたちは守られるべき」という認識へ。

〜児童労働撤廃の動き〜
1802年 徒弟の健康・道徳法 The Health and Morals of Apprentice Act 
1819年 綿工場法 Cotton Mills and Factories Act
1825年 綿工場規制法 Cotton Mills Regulation Act
➡︎制定されたものの、実効性伴わず。いかに、子どもの労働力を必要とされていたかが分かる。

1833年 綿工場における労働法 Labour in Cotton Mills Act 
ようやく実効性を持つ。
・9歳以下の労働禁止
・9〜13歳は最大9時間労働、14〜18歳は最大12時間労働
・18歳以下は夜間労働禁止とされた。

1847年 工場法 Factories Act 
・13〜18歳以下は10時間以内

〜児童労働撤廃により、子どもを通学させる方向へ〜
それまでも教区で教育を受けていた。ただ、倫理・宗教などの授業のみ。
そもそも通っていない子も多数。
➡︎勉強習慣もなかったために、児童労働撤廃後すぐに学校に通えたわけではない。

教区がより社会福祉的側面を持って、教育支援。
日曜学校とか、教科書の配布とか。

〜小括〜
これらの変遷を経て、「児童労働は悪」「子どもは守られるべき」「学校に通うのが子どもの幸せ」という社会の子どもに対する認識が強まった。

社会の中で「児童労働」をどう線引きしているのか
〜国際基準〜
ILO(国際労働機関)は2つの条約で児童労働を禁止。

「就業の最低年齢に関する条約(138号条)」
・最低年齢は義務教育終了した15歳。
・軽労働(新聞配達など)は13以上〜15歳未満なら可能。
・危険有害業務は18歳未満禁止。

「最悪の形態の児童労働に関する条約(182号条約)」
・人身売買・徴兵などの強制労働・債務労働などの奴隷労働
・売春・ポルノ製造・わいせつな演技に使用・斡旋・提供
・薬物の生産・取引などの不正な活動に使用・斡旋・提供
・児童の健康・安全・道徳を害する恐れのある労働

138条は174カ国が批准、182条は187カ国が批准
➡︎これだけの数の国が、「児童労働は悪」「子どもは守られるべき」という認識がされているという表れ。

〜社会の中での線引き〜
「児童労働は悪」と言いながら、なぜ大人は「お手伝い」を推奨し、子役に対しては悪い印象を持ちにくいのか。

日本の子どもの68.4%は週に一回以上お手伝いをしている。
週に一回以上お手伝いをしている子どもたちは、自己肯定感が上がるともされている。
ILOでも教育に支障がなければ、お手伝いを許可している。

子役に関しては、各国で法的に定められている。
日本では、
・15歳未満は、教育時間を含めて週40時間、1日7時間の労働のみ。
・収入は子ども名義
etc
アメリカでは、
エンタメ業界が強いカリフォルニア州とかでは独自の規定を持っている
例)Coogan Law:
子役Cooganの収入を親が全部使っていた事件をもとに、この法律で子どもの収入を守るようになった。

〜小括〜
2つの共通項を見ると、社会は「法的に守られていたら、子どもを守っていることになる」と認識していると考えられる。

「法的保護」のない、子どもYoutuberはどう捉えられているのか
YouTuberとして収入を得ている子どもたちを「子どもYouTuber」とする。
・学業との両立
・親の子育ての方針
・再生数を稼ぐための手法
・子どもの誹謗中傷
などの面から、社会的批判を受けやすい。

大人は「子どもは判断能力が未熟」という考えが前提として存在している。

UNCRCでは、12条で「子どもの意見を聞き、尊重すること」と記載。
➡︎自己決定権ではないものの、UNCRCは子どもには考える能力はあると認識しているとも捉えられる。
たとえ視聴者が、子どもたちに判断能力があると認識していたとしても、YouTube上では誰が判断したのかを見ることは難しい。

〜小括〜
・社会は「子どもは判断能力が未熟」と認識。
(たとえ判断能力があると認識していても、画面上では分かりにくい。)
・さらに、法的保護もない。
➡︎YouTuberの子どもたちは必然的に、児童労働という認識に陥りやすく、批判されやすいと考えられる。

もし、フランスみたいに子どもYouTuberに関する法的保護があれば、社会の子どもYouTuberに対する見方も変わっていくかもしれない。

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自分の中での不明点

・自分の分析と、社会の認識があってるか不安。

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個人的見解

「子ども」に対する認識は、時代・場所によって違う。
その違いは、社会のうねりによって生まれるなとつくづく。
ここに書いている内容は、あくまでさまざまな文献を読んで、「社会の認識としてこうなんじゃないかな〜」という分析で。そういう意味で、全て個人的見解だったかも。
実際には、子どものYouTuberを見て児童労働だ!!って思っている人は少ないかもしれないし。

まあ、ただ一つ言えるのは、子どもの意思の尊重が何より大事かな。
オーストリアでは幼少期の娘の写真をSNSに載せた親が、肖像権侵害で、大人になった娘に訴えられているケースもあったし。
子どもがYouTuberでもなんでも、働きたいと言った時に、「児童労働は悪!!」「あなたには判断能力ないから!!」って社会的価値観を全面に押し出すのではなく、まずその話を真摯に受け止めることが大事かな。

参考文献
https://president.jp/articles/-/64728?page=1 
https://social-studies33.com/歴史/産業革命期の労働者%E3%80%80~-the-white-slaves-of-england-~/
http://oisr-org.ws.hosei.ac.jp/images/oz/contents/748_03.pdf
https://www.y-history.net/appendix/wh0904-065_1.html
https://www.ilo.org/tokyo/areas-of-work/WCMS_239915/lang--ja/index.htm

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