見出し画像

童話 みにくいアヒルの子〈改〉

 ある小さな村に、元気いっぱいの男の子がいました。
男の子のお父さんは科学者で、たくさんの研究をしていました。
男の子はそんな科学者のお父さんに憧れていて、お父さんに度々実験の
手伝いをさせてもらっていました。
お父さんとはたくさん実験をしましたが、男の子は特に、いろいろな薬品を
調合するのが大好きでした。

 ある日の夜、男の子は布団の中で、すごい薬を作る案を
思いつきました。
でも今は夜。お父さんは寝ているし、研究室には勝手に入ってはいけないと言われていました。
男の子は悩みました。
  すぐに作ってみたいけれど、
        勝手に入ったら怒られたしまう。
男の子はしばらくの間布団の中で悩んでいましたが、ついに決心して
研究室に向かうことにしました。
研究室には鍵がかかっていて、鍵がないと入れません。
でも男の子は鍵を持っていないので研究室に入ることはできませんでした。
男の子はどうするか悩みました。今度はとっても長い時間悩みました。
そこで、男の子は思いつきました。
  そうだ!
   お父さんの部屋から借りてこよう!

 男の子はお父さんの部屋の前まで来ました。
お父さんは寝ているので、入っても見つからないはずです。
  よし!行こう!
男の子は静かにドアノブに手をかけます。
そしてゆっくりドアを開けると、中の様子を確認しました。
男の子は、お父さんが寝ていることを確認して部屋の中に入りました。
そろりそろりと何かに向かって歩いていきます。
男の子が向かった先は引き出しでした。
男の子は静かに引き出しを開けると、整理された引き出しの中の
鍵を探し始めました。
まるで泥棒になっているような気分でした。
しばらく探していると、男の子は、引き出しの奥の方に鍵があるのを
見つけました。
男の子は静かに鍵を取ると、またそろりそろりと半開きのドアに向かって
歩き、静かに部屋を出てドアを閉めました。
男の子は無事、お父さんの部屋から鍵を借りることができました。

男の子は鍵を持って、再び研究室の前に来ました。
男の子は持っていた鍵を研究室の鍵穴に入れて、鍵をくるりと回しました。
 〈ガチャン〉
男の子はドアノブに手をかけてドアををそっと開けました。
そしてどきどきしながら研究室の中に入りました。
研究室の明かりをつけると、研究室が明るくなりました。
男の子は研究室の棚から、試験管に入った4つの薬品を取り出しました。
男の子はビーカーに1つずつ薬品を入れていきます。

1つ目は赤い薬品。

2つ目は青い薬品。

3つ目は黄色い薬品。

4つ目は白い薬品。

男の子は慎重に4つの薬品が入ったビーカーの中身を混ぜ始めました。
やがて4つの薬品を混ぜたビーカーの中身の薬品は光り輝き初めました。
男の子は思わず目をつぶってしまいました。
男の子は恐る恐る目を開けると、ビーカーの中の薬品は、
ミルクを入れたコーヒーのような色になりました。
男の子は、
  成功だ!
と喜びました。
男の子は薬品の入ったビーカーを持ち、全て飲み干してしまいました。
すると男の子の体は光り輝きました。
研究室は強い光に包まれて何も見えなくなってしまいました。
光がだんだん弱くなっていって、やがてそこに現れたのは…

1羽のアヒルでした。

アヒルはのんきな顔で首をかしげました。

アヒルは開いていた研究室の窓からパタパタと

飛び立って行きました。

いいなと思ったら応援しよう!