男性器の機種変更 【第4章】僕は女子大生?
そして遂に大学入試の願書受付が始まった。
僕は予備校の進路指導の職員に相談し、最終的に5つの大学を受験することとした。
まず選んだのが、A・B・Cの3大学。
この3つは同レベルで、超名門と言う訳ではないが、どの大学も都心にあるのでレベルもそこそこ高く、人気の大学だ。
中でも本命はA大学だが、この3つなら正直どこでも良いと思っていた。
直近の模試で3大学とも合格圏内となったし、自信もある。
4つ目はD大学で、ここは二浪防止の滑り止め。
5つ目は、今回受験する5つの中では最難関の名門・Z大学。
ここに受かる可能性は低いけど、万が一を狙った記念受験みたいなものだ。
以上のように冒険はZ大学のみなので、普通に考えたら結果は4勝1敗、運が良ければ5戦全勝も夢ではない。
僕は春から大学生活を楽しむ自分を想像しながら、各大学の入学試験を受けた。
そして3月になり、全ての受験結果が出揃った。
結果は予想を大幅に裏切り、2勝4敗という成績だった。
とりあえず二浪は避けられたものの、本命のA大学を始め、B・Cの2大学と難関のZ大学も落ちていた。
受かったのは、滑り止めのD大学とZ女子大学の2つだったのだ。
あれ?受験したのは5校なのに、なぜ結果は2勝4敗なの?
それにZ女子大学って何?
そう思いますよね?
実は僕って本番に弱いタイプで、受験当日はめちゃくちゃ緊張してしまう。
だから本命のA・B・Cの大学を受験する前にどこか受験して、雰囲気に慣れておきたかった。
しかし運が悪いことに、選んだ5校の中ではA大学の受験が一番最初ではないか。
慌てた僕は、急遽A大学の前にどこか受験しようと考えた。
ところがA大学の受験日はかなり早く、それ以前が受験日の大学は中々見つからない。
そんな中やっと見つけたのが、Z女子大学だった。
僕は男だから、本来であれば女子大なんて受験できる訳がない。
でもその時僕は、女性の身分証明書の存在を思い出した。
そうだ、あれを使って見ようか。
そう思って身分証明書のコピーと共に願書を送信したら、受験票が届いたのである。
このZ女子大、今回落ちたZ大学と名前が同じなので、一見すると同一大学のように見えるが、実は全くの無関係とのこと。
これは校名に地名のついた大学に良くある関係で、両校の所在地は共にZ区にあることから、たまたま同じ校名になっただけのようだ。
しかし無関係とは言えZ大学と同じ名前であるからか、Z女子大学も非常にレベルが高く、巷では名門女子大と呼ばれていた。
そんな大学に僕が受かる訳ないけど、この受験の目的はあくまでもA大学受験のウォーミングアップだから、合否は関係ない。
それに堂々と女子大の中に入れるし、こんなチャンス二度と無いよね。
そんな下心ありありの軽い気持ちで受けたのが良かったのか、合格してしまったのである。
と言っても本命のA大学どころかB・Cにも落ちてしまったので、僕はひどく落ち込んでいた。
しかしいつまでも、落ち込んでいる訳にはいかない。
男性器を女性器に変更までして勉強に打ち込んで来たのだから、二浪を避けられただけでも良しとしなきゃ。
進学先だけど、流石に女子大には行けないから、D大学しかない。
D大学に行って、憧れの大学生活を楽しもう!
そう思って心を切り替えた僕であったが、実はD大学への進学を、本心では望んでいなかった。
D大学は滑り止めだったので、受験したのは希望する学部ではなく、一番合格しそうな学部だったからだ。
でも仕方ない、そう思いながら僕は、D大学の入学案内を読みながら、準備を進めたのである。
そして入学金を振り込もうとした時、僕はふとしたことに気づいた。
それは、僕は果たしてD大学で、男子大学生としてやっていけるかどうかと言うことだ。
あれから僕の身体は更に女性化が進み、胸はDカップになっていた。
つまりこの胸のまま、あと1年半過ごさなければならない。
入学当初はまだ肌寒いから厚着して胸を隠せるが、夏になったらどうするの?
それに僕の鞄の中には、いつ生理が来てもいいように、ナプキンが入っている。
先日予備校で鞄の中のナプキンを見られてしまい、とっさに女性のふりをしてその場をごまかしたが、大学ではそう言う訳にも行かないだろう。
それに生理が来ちゃったら、男子トイレの個室では困るし。
だったら元に戻るまでの1年半は、女性として生活した方が生きやすいよね。
じゃあ進学先は、Z女子大にする?
Z女子大は、希望する学部に合格したし。
でも女子大なんかに行ったら、1年半どころか卒業まで元に戻れない。
大学の4年間、僕は女性としてやっていけるだろうか?
そんなことを考えていた僕だったが、ふと鏡を見てみると、そこには若い女性がいた。
ハッとしたが、その女性は紛れもなく僕だ。
今まで受験に精一杯で、鏡などまともに見ていなかったな。
そう思って僕は、改めて鏡に全身を写してみる。
服装は男性のままだったが、その印象はかなり変わってしまったことが、自分でもはっきりと分かった。
3ヶ月前の僕は一見女性に見えるが、良く見れば男性とわかった。
しかし今の僕は、どうみても女性にしか見えない。
僕は鏡の中の女の子に、話し掛けてみる。
「男の服装なのに、女にしか見えないんだよ。そんな身体で本当に男としてやって行けるの?」
(やっぱり無理だよね)
鏡の中自分は、そう答えていた。
仕方ない、進学先はZ女子大にしよう。
4年間戻れないけれど、座ってするトイレにも慣れたし、今の生活に何の不便もない。
そう思った僕はスマホを取り、親に電話をした。
「進学先はZ大にしたよ。」
そう話すと、両親はとても喜んでくれた。
我が子が有名なZ大生になるのだから、両親も嬉しいのだろう。
まぁ本当の進学先はZ女子大だけど、略せばZ大だから嘘をついた訳ではない。
電話を切った後、僕は気が変わらないうちにZ女子大へ入学金を振り込んだ。
もうこれで後には引けない、そう腹をくくったら、気持ちがすっと楽になった。
一度決めたからには、これから僕は女として頑張らなければならない。
僕は男性用の洋服を数枚残して全て処分し、機種変更の時にもらった100万円を元に、女性用の洋服を揃えた。
と言ってもやっぱりスカートは恥ずかしく、ボトムはレディース用のパンツが中心だ。
男はスカートが履けないのに、女は堂々とズボンが履ける。
こんな時はやっぱり、女は特だなと思う。
トップスもレディース用を揃えたが、着てみると着心地の良さに驚いた。
とても体にフィットするのだ。
これはそれだけ僕の身体が女らしくなっていたと言う証拠でもあるが、こんなことならもっと早くレディースを着ていれば良かった。
その後僕は、美容院へ行った。
僕はゲン担ぎにずっと髪を伸ばしていたので、とても長かった。
それをセミロングにカットしてもらい、女の子らしく整えてもらう。
これだけで印象は、かなり変わった。
その足で僕はデパートへ行き、販売員のお姉さんに選んでもらった化粧品を全部購入した。
そして入学式までの約二週間の間、僕はアパートにこもって動画サイトを見ながら、メイクの練習に励んだ。
その結果、入学式には何とか普通の女子大生のように見えるまで上達したのである。
4月になって迎えた入学式、僕はこの日に為に買ったスーツに袖を通した。
このスーツは僕が揃えたレディースの中で、唯一のスカートだ。
鏡に写してみると、どこから見ても女性に見える。
良し、完璧だ。
そう思って外出したが、やっぱりスカートだとめちゃくちゃ緊張する。
しかもこのスカートはタイトミニだし、それに靴はパンプスだから、とても歩きにくい。
おかげで大学に着く頃には、喉がカラカラになっていた。
大学に着いて自販機でペットボトルのお茶を買い、一息に飲む。
これでかなり落ち着いた。
改めて回りを見渡すと、視界に入るのは全員女性だ。
そしてやっぱり名門女子大と言われているだけあって、育ちの良さそうなお嬢様ばかりだ。
そのハーレムのような光景に、僕の鼻の下は伸びっぱなしだった。
これは楽しい4年間になりそうだ!
女だらけの入学式を終えた僕は、そんなことを考えながら帰路についた。