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男性器の機種変更2 〜ヒカルの場合〜 【第1章】絶望の人生

前書き

近未来、そこは携帯電話の機種変更のような感覚で、おちんちんの機種変更ができる世界だった。
やむを得ず機種変更した主人公のヒカルだが、それがきっかけで女性化をして行く。

本作品は、feminin.netの「機種変更」と言う小説のスピンオフです。
設定はそちらから引き継いでおりますので、本小説を読む前に是非ともfeminin.net「機種変更」をご一読下さい。
http://www.femine.net/b2g/kishuhenko/kishuhenko.htm

Special Thanks to Eriko Kawaguchi feminin.net


【第1章】絶望の人生

(もう終わりにしよう、疲れた・・・)
そう思いながら、俺は街中を歩いていた。
何でこんな目にあわなければならないのか?
俺は自問自答してみる。

一週間前にアパートを追い出された俺は、毎日漫画喫茶をハシゴして寝床を確保していた。
しかしもう所持金が底をつき、今晩は漫画喫茶に行くこともできない。
つまり、今日の寝床はないと言うことだ。
おまけに毎日一日一食で過ごしてきたから、お腹が減りすぎて今にも倒れそう。
いっそあのビルから飛び降りようか、そしたら楽になれるのに。
あまりに辛すぎて、俺はそんなことを考えるようになっていた。

そもそも何でこんなことになったのだろう?
進学のために上京してきた直後は、まだ夢も希望もあったはずだ。
大学でたくさんの友達を作り、可愛い女の子を彼女にする。
そんな夢を、抱いていた。
でも人間の性格なんて、急に変われるものではない。
高校まで内気だった俺は、大学生になっても自分に自信を持てず、ふと気付けばまた一人ぼっち。

そんな俺を救ってくれたのが、パチンコだった。
何気なしに入ったパチンコ屋で、いきなり大勝ちしてしまう。
いわゆるビギナーズラックと言われるものだが、たった一回の経験で俺はパチンコにのめり込んでしまった。

パチンコは俺の心の隙間を埋めてくれ、気付けば朝から晩まで毎日入り浸る日々。
こんな生活をしていたら、もちろん手持ちの金は全てパチンコに消えてしまう。
気付けば何ヵ月もアパートの家賃を滞納しており、不動産屋から一括支払いを迫られていた。

これで目が覚めた俺はパチンコから足を洗うことができたが、全てパチンコに捧げていたこの俺に、家賃を一括で支払う金などあるはずもない。
そして先週、遂にアパートを追い出されてしまったという訳だ。

当然実家の両親へも連絡が行き、ついでに大学へほとんど行っていないこともバレてしまった。
激怒して電話をかけてきた親父は、俺が電話に出るなりこう言った。
「この親不孝者、お前は勘当だ!」
実家へ帰ろうと考えていた俺にとって、この親父の一言は死刑判決を意味する。
そう、帰る場所が無くなってしまったからだ。

仕方なく俺は僅かな所持金で漫画喫茶をはしごして寝床を確保してきたが、遂には資金が底をつき、冒頭のように街中を彷徨っているという訳だ。
まぁ全ては自業自得であるが、そもそも俺の18年間の人生とは何だったのだろう?
幼少の頃から病弱だった俺は、同級生と比べると人一倍華奢で、小さな体だった。

おまけに顔は二つ上の姉貴とそっくりだったので、初対面の相手は必ずと言って良いほど、俺を女の子と間違えた。
それが嫌だった俺は髪を刈り上げて、男らしく振る舞うようにしていたが、そんな俺についたあだ名は、ナベオという物だった。
これはFTMの別称である、オナベが由来だ。

普通女子っぽい男子は、オカマと言われることが多い。
でも何で俺の場合は、オナベなのか?
それは当時の俺は、男装した女子が無理矢理男を演じているように見えたからみたい。
おまけに俺のヒカルと言う名前も、一見すると女子っぽくて余計にそう感じたらしい。

でもそんなあだ名をつけられて、嬉しい男がいるはずもない。
いつしか俺は自分の殻に閉じこもる、内向的な少年になっていた。
小学校の担任からは、「ヒカルくんは中学生になったらきっと大きくなるよー!」と言われていた。

しかし実際に中学生になり、二次成長期になっても、俺は華奢なままだった。
それどころか声変わりもせず、女子のような声のまま。
つまり全然男らしくなれないのだ。
このままじゃいけないと筋トレを始め、食事の量を人並み以上に増やしてみたが、全く効果は現れない。

そしてそれは高校生になっても変わらなかった為、俺の睾丸からは男性ホルモンが分泌されていないのではないかと心配になり、病院で精密検査を受けてみた。
その結果、俺の体内の男性ホルモン量は、同世代の男子の平均と変わらないとのこと。
しかし男性ホルモンレセプターが、体質的に非常に少ないと言うことらしい。
男性ホルモンに反応して男らしい体を作り上げるレセプターが無ければ、いくら体内に男性ホルモンがあっても、男らしくなれるはずもない。
そのレセプターが少ないと言うことは、俺はもうこれ以上男らしい体になることは、叶わないと言うことだ。

しかしこんな俺の体でも、男性器は全くの正常で、子供を設けることはできるとのこと。
それが唯一の救いであったが、いつか男らしくなれると思っていた俺にとって、この診断はショックであった。

この俺が、どれだけ華奢なのかって?
俺にとってメンズの服はSでも大きく、ピッタリしたサイズの服を買おうとすると、男児用の子供服になってしまうのだ。
でももう子供でもないのに、そんな服など着られる訳がない。
だからダブダブでも仕方なく、俺はメンズのSを着ている。

俺にとってこの体はコンプレックスの塊で、その結果俺の内気な性格は、高校を卒業するまで治らなかった。
そんな思いがあるからこそ、俺は大学生になったら自分を変えて明るくなり、たくさん友達を作り、可愛い彼女を作ろうと思ったのだ。

でも結局それは、夢のまた夢。
もう何もかもが、嫌になった。
いっそのことあのビルから飛び降りて、楽になろう・・・
その時俺は、本気でそう考えていたのだ。

フラフラだった俺は、公園のベンチで時間を潰し、ひたすら夜になるのを待っていた。
何故ならビルから飛び降りるにも、明るいうちは怖いから。
こうして日が暮れるのを待っていると、頭の中に色んな思いが込み上げてくる。
でも俺なんかこの世からいなくなっても、心配する人間なんていやしないんだ。
そう思ったら、涙が止まらない。

溢れる涙を拭っていると、スマホからLINEの着信音が聞こえた。
確認すると、そのメッセージはユウキからだった。
ユウキとは大学の同級生で、俺の唯一の友達と言っいい。
友達と言っても、女友達だが。

なぜ内気な俺に、女子の友達がいるのかって?
それは俺と彼女、実は同じ高校出身の同級生だったから。
高校時代は同じクラスになったことがなかったから、お互いあまり良く知らなかった。
しかし大学の入学式の日、俺達は共にビックリ仰天!
知り合いなんているはずもないと思っていた大学に、知った顔があったからね。
偶然にも同じ大学・同じ学部に進学していた俺達は、これを機に友達になったのだ。

俺達は入学した直後しばらくは良く一緒にいたが、次第にユウキには友達ができて行き、その結果俺との関係は疎遠になって行った。
だからこの数ヶ月、お互い顔も見ていない。
そんなユウキから、久しぶりのLINEが来たのだ。

「ヒカル、最近顔見てないけど元気か?今晩空いているなら、一緒にメシでも食べようぜ!」
そのメッセージを見て、俺はホッとした。
何故なら、俺を気にかけてくれた人がいたから。

それにしてもユウキは、相変わらず女らしさのカケラもないな。
女ならもっと女子らしいメッセージ送って来いよ。
そう思うと思わず笑みが溢れる。
俺が笑うだなんて、いつ以来だろう?
ありがとう、ユウキ。

そう言えば入学当初、俺達はいつも一緒にいたから、周りから恋人同士と思われていたなぁ。
でも実際は、そうではない。
俺は可愛らしい女の子が好きで、女らしさのカケラもないユウキは恋愛の対象外なのだ。
髪型もショートカットだし、いつも着ている服はTシャツとジーンズばかり。
彼女のスカート姿など高校の制服で見たきりで、大学に入ってからは一度も見たことがない。
そして性格も男のようで、彼女といると男同士でいるような錯覚にさえ陥ることがある。

一方のユウキも俺みたいな男は全く眼中にないらしく、だから俺達は男女の垣根を越えて友達になれたのだ。
そんなボーイッシュなユウキだけれど、よく見るととても可愛らしい顔立ちをしている。
だから以前俺は忠告したんだ、髪を伸ばしてもっとフェミニンな格好すれば、彼氏なんてすぐできるのにってね。
でも彼女は、今さらそんな格好できないよと言った。
何故なら彼女は子供の頃からお転婆で、いつも男子とばかり遊んでいたらしい。
そのイメージが強すぎて、逆に女子らしい格好すると、周りから冷やかされてしまうとのこと。
それなら上京して知り合いのいない今こそが、女の子らしく変われるチャンスなんじゃないの?と思ったが、それ以前にユウキ自身がフェミニンな格好には全く興味がなく、だからこのままで良いそうなのだ。

ここまでボーイッシュだと、もしかしてレズではないかとも思ったが、特にそのような噂も聞かないので、違うのだろう。
ユウキはそんな変わった女子なのだ。


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