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20歳が0歳 2
その日からは「おはよう」と来る日もあれば来ない日もあって、私も「おやすみ」と送る日もあれば送らない日もあってが続き、なんとなく2週間が過ぎた。
6月最後の週末に大学の友人と新宿三丁目のイタリアンでご飯を食べた帰り、カルロから「財布を失くしちゃった」とLINEがきた。正直どうでも良かったけど、彼は外国人。大切なものを遠く離れた異国の地で失くすのはなんだかかわいそうで、珍しく「大丈夫?どこでなくしたの?」と即レスした。
話をまとめると、昨日新宿で飲んだ帰りに財布を失くして今も新宿で探してるらしい。しかもわたしが今いる場所から歩いて1分くらいの場所だったから、とりあえず合流することにした。
探してあげたい気持ち2割、なんか会いたくなったが8割くらい。
合流後、財布を無くした割には表情が明るかった。なんかすぐ来て損した気分。そもそも新宿で財布失くしたら見つかるわけなくない?とも思ったけど、ぐるぐる回って行ったり来たりしながら財布がないか探してみる。探すというよりは行き場もなくただ歩いておしゃべりしてるだけの感じだった。
金曜の夜、もうすぐ23時なのに街はたくさんの人で溢れてる。いろんな目的の人が行き交っているだろうけど、見つかりもしない財布を探しているのは私たちだけだと思う。しかも1人は異邦人。
急にカルロが「クラブ行かない?そこに友達がいるんだ」と言った。は?なんで?おまえ財布探してんじゃねーのかよ。金あんのかよ。てか何でクラブなんだよ。
どうやら新宿のクラブには外国人が多く集まっていて、彼のように日本語が不十分な場合、似たような言語の人や英語が話せる人、日本に住む外国人という同じ境遇である人が多くいるクラブで友達を作るらしい。
「え、クラブ?いや、なんで?…てかお金あるの?」
彼はすぐに明るく「うん!大丈夫!前の財布もクラブ行く時のためだから10,000円しか入れてなかったし、帰りだから3千円も残ってなかったよ」
いやふざけんなよ。先に言えよ。なんでヒール履いた女を3千円の財布のために歩かせるんだよ。おかしいだろ。でもお金あって良かったね。意外とちゃんとしてる。
でもよく見たらタイトなシャツで、靴も少し高そうなものを履いてるし、初めからクラブ行く気だっただろ。
クラブってどんなところなんだろ?躍ったり、レーザーが出てたり、横揺れしてる福岡人みたいな人がいるっていうのがわたしのクラブのイメージ。
正直行きたくなかった。彼の友達ばっかりってことは日本人の私はアウェーかもしれないし、そんな明るい性格でもないから、ノリが合わないかも。それに今の服装は夏っぽいミュールにスリムフィットのデニム、上はシャツをインしてるだけ…もう少し華やかな服を着て行くもんじゃない?…
でもそれと同時に、たぶんここで行かなかったら今後の大学生活で行くことはないだろうとも思った。
6月最後の週末の0歳はクラブにしよう。
「いいよ、行こ。でも酒奢ってね」